2014年11月5日発売
夫の無実を信じる妻、弟の死に陰謀の気配を感じ取った兄…。敵を追って二人が向かった先は、天保の改革で開拓が進む印旛沼。そこには「化土」が渦巻いていたー。男と女の秘めた想いが交錯する。構想20年、著者が遺した渾身の長編小説。
江戸の町には、猫の数だけ物語がある。ある日の貨物屋で「借りたい」と依頼があったのは、白くて尻尾の曲がった子猫。怪しげな連中を追う途中で、ふところに飛び込んできた黒い猫。突然、恋のキューピッド役を買ってでた猫。奉公先の奥方にかけられた猫の化身疑惑ー。江戸の町を闊達に猫と人とが駆け巡る。五人の作家が描きだす、文庫書き下ろし作品集。
平安時代末期。栄華を極めた平家一門の陰で、過酷な運命に翻弄された女たちがいた。平清盛をめぐる祇王と仏御前の葛藤、安徳天皇の母として国母となった建礼門院徳子の悲劇、二人の天皇に愛され后となった藤原多子、宮廷一の美女と謳われ夫に殉じ、海に消えた小宰相…。一門の興亡を女性たちの視点で描く、新たな「平家物語」。文庫書き下ろし。
虎吉は、読本をしょって商う貸本屋で、派手な着物とつづらがトレードマーク。目端が利くので、戯作者・九玲彬に人気作を書かせるなど、版元の手伝いもしている。そんな二人は、読本に夢中になった大店のお嬢様の恋を助ける羽目に…。ちょっとせつなく、ちょっと不可思議。江戸の季節をめぐるほっこりあたたかい連作短編登場!文庫書き下ろし。
代三郎は「猫手長屋」のぐうたら大家。仕事もせず、三味線を鳴らすばかりで、店子からも頼りにされていない。しかし、彼には故郷の氏神・大猫様から授かりし使命があった。それは、江戸の町に跋扈する魔物を退治することー。今日も飼い猫の栗坊と、三味線片手に不穏な空気漂う屋敷へ向かうのだった。新感覚・江戸長屋ファンタジー!文庫書き下ろし。
江戸初期、幕府の基礎を築いた名老中と言われた阿部忠秋。彼が育てた数多くの孤児の中の二人ー柳之介と秋太。二人は反発しあいながらも力を合わせ、柳之介は鍛え上げた剣術、秋太は明晰な頭脳で、様々な困難に立ち向かう。「誇り高き心」と「幽玄なる智」-異なる才を持ち、強き絆で結ばれた二人の若き男達の物語。文庫書き下ろし。