2014年5月19日発売
眠る魚眠る魚
2011年3月11日。日本から遠く離れた南太平洋のバヌアツにも、地震による津波警報が出されていた。旅行ガイドや通訳をしながらこの島に暮らす伊都部彩実は、そのしばらく後、実父の訃報を受けて一時帰国する。放射線被害について海外メディアが報じる危機感に反比例するかのような日本の実像、また、相変わらず保守的な家族たちの思考と言動に噛み合わない思いを抱きながら日々を送るうち、「アオイロコ」という奇妙な風土病の噂を耳にする。父の遺言で、母が亡くなった後に父が交際していた女性に、代々の土地家屋を明け渡すことになり、思いのほか動揺する彩実。国に縛られない自由な生き方を望んで海外に飛び出したはずなのに、戻る場所を求めている自分に気づく。そんな折、口中の腫瘍が悪性と診断され、即刻入院となり、期せずして日本に留まることになるのだったー。
北帰行新装版北帰行新装版
暗闇から抜け出ようとするその列車のように、私もまた暗い二十歳から抜け出ようとしていた。北海道の炭鉱町から東京に集団就職した私。だが工場の同僚との諍いで、職を失ってしまう。やがて私は石川啄木の足跡をたどり、ふるさとへ向かうー1976年度文藝賞受賞の文学史に輝く伝説的名作。
沈黙を破る者沈黙を破る者
大農場の陽気な赤毛の娘アルヴィーネ、その思慮深き兄ヤーコプ、がっしりした実業家タイプのヴィルヘルム、大きな水色の目をしたきまじめなハンナ、文学を愛するレオナルト、活動的で美しく聡明なテレーゼ…。1939年夏、共に過ごした幸福な時間は終わり、戦争が始まろうとしていた。不可解な殺人事件を追うひとりの巡査、50年の時をこえてよみがえる戦時下の出来事。ドイツ・ミステリ大賞第一位。気鋭の女性作家による静かな傑作。
PREV1NEXT