2014年9月9日発売
幕府と朝廷の公武合体を模索する勝海舟は、半兵衛に一人の密使の護衛を依頼する。朝廷に密書を届ける役目を託されたのは、茜という美しい娘だった。しかし、茜は道中で、謎の一団にさらわれてしまう。茜を救うべく、半兵衛は信州山岳剣法・大文字流開祖である大文字康介を捜して、信州の山奥に向かった。その秘剣谺返しを破った者は、一人としていない。果たして半兵衛は、この秘剣に打ち勝つことができるのか?
明治になって衰退する柔術界に、新星のごとく「講道館流」が誕生した。提唱者は文武二道の達人、嘉納治五郎である。技のたゆまざる追究と人間教育への情熱によって、「姿三四郎」のモデルとされる志田(西郷)四郎ら「四天王」がめきめきと頭角を現す。若き気概に充ちた、闘う漢たちの壮大な物語が、いま幕を開ける。
柔術王国たる九州では、古流柔術の猛者たちが激突し、全国一の規模を誇る関東の揚心流戸塚派は、新興の講道館に激しく対抗心を燃やす。新しい時代、この国で覇をとなえるのは誰なのか?運命の「警視庁武術試合」を前に、闘いはいよいよ激しさを増す。
抗いがたい力によって掏摸を続ける男が掏摸集団にスカウトされる。そこで出会う個性豊かな人間たちとは…「指」。失業中かつ恋人の部屋に居候中の男が、刑務所前にある定食屋で働かないかと誘われる。出所者を見張るのがその仕事なのだが、男は恋人の助言もあって料理に手を加え定食屋を大繁盛させる…「飯」。そして文庫化にあわせて新たに書かれた物語…「嘘」。3編を繋ぐ妙技も見事な作品集。都会の片隅に生息する“放浪者”を鋭く活写した第33回吉川英治文学新人賞候補作。
警視庁捜査二課。殺人などの凶悪事件を担当する捜査一課とは違い、横領や詐欺といった狡猾な知能犯と対峙する。その二課に所轄署から配属された西澤警部補は、独特の捜査方法や同僚をライバル視する捜査員に戸惑いながらも眼前の犯罪に立ち向かっていく。人はどんな時に人を騙し、裏切り、真実を隠蔽するのか。細かく作り上げられた事件と、人間の奥深い心理を圧倒的なリアリティーで描くこれまでにない警察小説。待望の文庫化!
音吉と名乗る年端もいかない男の子が、岡っ引の弥平次が営む船宿『笹舟』に父親を捜しにやってきた。見知らぬ男たちに音吉の母親が連れ去られたと聞いた弥平次は、その行方を追おうとするが、音吉の捜す父親が、かつて弥平次の手先で、探索の最中に命を落とした飴売りの直助だと知り…。江戸の岡っ引たちに一目置かれる弥平次と個性豊かな手先たちの活躍を描く人情捕物の決定版。シリーズ第二弾。
武家女の物の怪が旗本を色香で惑わせ次々と取り殺しているー江戸を騒がす不気味な噂に、暗殺奉行の依田は謀略の匂いを嗅ぎつけ、闇裁きの配下に探索を命じる。一刀流の早見、手裏剣遣いの神谷ら軍団の面々が仕掛仕置に闘志を燃やすなか、ひとり浮かぬ顔の与七。実は三人目の旗本が殺められた川開きの夜、血刀を手に必死で逃げる美しい女を深川で助けたのだった。大反響の新シリーズ第三弾!書き下ろし長編時代小説。
腕のいい蝋燭職人の父との確執から家を飛び出した照介は、十年に亘る放蕩無頼の生活の末、実家である蝋燭問屋に舞い戻る。すでに父は亡くなっており、家業は弟の次郎が継いでいたのだが、往時の繁盛ぶりは見る影もなく…。(「あかり」)-家族の愛憎を扱った表題作をはじめ、米つき屋、廻り髪結いなど、江戸の市井で懸命に生きる人々の、日々の暮らしぶりや人間模様を描いた、傑作人情絵巻シリーズ第一弾。書き下ろし時代小説。