2015年1月26日発売
岩瀬修は六十三歳、今は文具会社の経営陣に収まっている。彼には、昔夢中になった任侠映画にまつわる忘れられない思い出があった。初めて観たのは中二のとき。たちまち高倉健の虜になった。映画を観たいがために家業の飲み屋を手伝うようになり、周囲からはヤクザと煙たがられている中間のおっちゃんと仲良くなる。そして、心臓が悪い従姉妹の弥生が、近くの県立病院に入院してきた。学校に通えない弥生のために、修はプリントなどを届けに行くようになった。弥生は、優秀で本好き、しかも絵を描くのが抜群に上手い。ケンカもしながら、親しくなっていく。任侠映画と、二人との出会いを経て、修は人生の荒波に漕ぎ出し始めた…。忘れ得ぬ人たちと映画への想いを綴った落涙必至の書き下ろしハートウォーム小説。
BBCのラジオドラマのオンエア中に、被害者として殺される役の男が、まさにドラマと同じタイミングで絞殺される。現場はドラマ関係者による衆人環視の状況、まったく犯人の足取りもつかめない。関係者たちはそれぞれが「何か」を抱えているようなのだが…。J・D・カーの盟友が贈る、本格推理の王道!
少女ローラはオーストリアで、父と人里離れた城でしずかに暮らしている。ある日、突然暴走した馬車が城の前にやってきて横転し、中から気絶した美しい少女が運び出される。少女の母は、急ぎの旅の途中だからと、ローラを父に託し、自分たちの素性を探らないよう念を押して去ってゆく。 その日から少女と共に生活するようになったローラは少女に夢中になるが、いくつかの不思議な点があった。寝る時は部屋に鍵をかけ、部屋に他人が居ることを拒絶する。素性は家柄が良いことと名をカーミラということしか明かさない。たびたびローラを愛撫しながら愛を語るが、そのことばは生死に関わる謎めいた内容。起きてくるのは毎日正午過ぎで、食事はチョコレート1杯だけ。賛美歌に異常な嫌悪感を表す。 やがて、城周辺の村で異変が起きるようになる。何人かの女性が相次ぎ死亡し、熱病の流行が噂される。そして、いつしか、ローラ自身も体調の不良を訴えるようになる…