2015年5月1日発売
アクセルとベアトリスの老夫婦は、遠い地で暮らす息子に会うため長年暮らした村を後にする。若い戦士、鬼に襲われた少年、老騎士…さまざまな人々に出会いながら雨が降る荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅するふたりを待つものとはー。失われた記憶や愛、戦いと復讐のこだまを静謐に描くブッカー賞作家の傑作。
悪漢に屋敷を荒らされた深室家は目付に不始末を厳しく追及される。将軍家綱のお髷番にして寵臣深室賢治郎は窮地に陥るが、老中阿部忠秋の計らいで難を逃れた。これに業を煮やしたのは賢治郎失墜を謀る異母兄松平主馬。冷酷無比な刺客を差し向け、魔手は許婚の三弥にも伸びる。進退窮まった賢治郎。そのとき家綱がついに動いた。権益を巡る傑物たちの攻防。大好評シリーズ、圧巻の完結!
愛知県犬山市の明治村にある品川灯台で、大京物産の社長・高桑雅文の遺体が発見された。死因は刃物で刺された失血死。遺留品の中に血のついた京王電鉄の回数券が見つかる。その血液は被害者とは別のものだった。美濃和紙の取材をしていた浅見光彦は、ニュースで事件を知る。見覚えのある高桑の顔ー。好奇心がとめられずに現場へ!凶器が包まれていた和紙が語る、旅情ミステリー。
悪評高い焼き物問屋の彦市郎と、町中で一触即発の状態にあった明珠。彼は大寺の医僧を務めていたが、看病していた高僧が死んだため、更に蘭方をもって接していたという理不尽な理由で寺を追い出されたというのだ。「尾張屋」の主・宗因らの勧めで町医となったが、彦市郎に薬草の煎じ薬を飲ませたことから事態は思わぬ展開を…。高瀬川に集う人々の歓びと哀しみを綴る傑作シリーズ!
表沙汰にできない揉め事の内済を生業にする九十九九十郎。元御小人目付で剣の達人でもある。若い旗本、大城鏡之助が御家人の女房を寝取り、訴えられていた。交渉は難航したが、九十郎の誠意あるとりなしで和解が成立した。だが鏡之助は九十郎への手間賃を払おうとしない。数日後、牛込の薮下で鏡之助の死体が発見された。御家人とともに九十郎にも嫌疑がかかった…。書下し長篇剣戟小説。
菅原徳介・里子夫婦は、思い出の地・津和野を訪れた。一人息子が借金を苦に東尋坊で自殺、絶望の果て老夫婦は死出の旅に出たのだ。秋芳洞を見物中、夫婦は何者かに襲われ、妻が死体で発見された!自殺をほのめかして失踪する老夫婦が増えていることに不審を覚えていた十津川警部が捜査に乗り出した。やがて、謎の組織が事件の背後に浮かび上がる…。長篇旅情推理。
「無いものはない」貸し物屋・湊屋を切り盛りするお庸。男勝りな言葉づかいが玉に疵だが、人情と行動力で、持ち込まれる無理難題を解決する。大店の若旦那が借りに来た三味線の銘器を巡る大騒動「紙三味線」。幼い頃に自分を捨てた母親の代わりを貸して欲しい。そんな頼みにお庸が機転をきかす「貸し母」など、不思議だがほろりとなる書き下ろし四編。
江戸日本橋の小児医者・宇田川三哲は、いつも昼過ぎまで寝ているので「ねぼけ医者」と呼ばれ、身分違いの恋に悩む男。また、無眼流の遣い手であり、夜になると御庭番の助っ人として非情の剣を振るう。御庭番と、幕政の混乱を狙う尾張藩が江戸に送り込んだ御土居下同心との壮絶な闘いの行方は!?無眼流の奥義に潜む妖魔とは!?
植木奉行同心とは幕府ゆかりの地や寺社領の植木を見廻るのが務めだが、直心影流の達人・斎藤作左衛門は、その垣根を越えて江戸の悪と戦う。不器用な性格ゆえ、上役の姪・初音に好意を打ち明けられずにいたが、僚友・駿馬も恋心を抱いていた。彼ら三人に迫る波乱の予感!恋・友情・勇気!耐える男の切なくも愛に満ちた物語。
代三郎は、日がな一日好きな三味線ばかり弾いているぐうたら大家。しかし、その一方で、江戸に蔓延る魔物を退治できる特殊能力を持っていた。ある日、江戸で流行りの断食療法について、妙な噂を聞いた彼は、そこに“座敷わらし”が絡んでいることを突き止める。その裏にある真相を探るべく、飼い猫・栗坊と奔走するのだが…。