2015年発売
家出した父、家庭を顧みない母。ずっと欠落感を抱えて生きてきた“私"だったが、ふとしたきっかけで出会った額装屋の仕事に惹かれ、次第に心を開くようになる──。等身大の成長小説。(解説/植田真)
ダントン、デムーランらの処刑後、公安委員会が分裂。逮捕されたロベスピエールが、ついに断頭台に──。革命は、この国を変えられたのか。歴史巨編、ついに完結! 毎日出版文化賞特別賞受賞作。(解説/中条省平)
僕はヒデユキ。八王子市立第六小学校に通う小学四年生だ。近所に住むカッチャンと一緒に今日も大自然を駆け回る! 1970年代後半の東京郊外を舞台に少年たちが大活躍する青春小説。(解説/北上次郎)
No.1ホストのジョン太は店を休みがちで、いまいち歯車のかみ合わないインディゴ。そんな中オーナーの晶に出版社から社員の誘いが…。人気漫画家コースケ描き下ろしの巻末付録も大充実の、シリーズ第6弾!
夏空の下、家を飛び出し一人旅を続ける直次郎が、人とのコミュニケーションが苦手な塊太と出会う。お互いを補完し合い、成長していく正反対の高校生二人の“バディ”を描く青春小説。(解説/長岡弘樹)
第152回芥川賞を受賞した著者のいきなり文庫! 尻野浦という限界集落の代用教員の安奈。ただ一人の生徒と、英語を多用する自称・校長先生。そこへ、謎の少年が迷い込んできて…。(解説/西加奈子)
シアトル郊外の高級住宅街で起きた一家惨殺事件。やがて容疑者として浮かぶキャメロンは、彼の弁護人と被害者とともに悲惨な過去を共有していた…。女性刑事マディスンはキャメロンを追うが、捜査は難航を極める。
犯人はキャメロンではない! マディスンは捜査方針の変更を願い出るが、逆に捜査から外される。単身、真相究明を決意する彼女だが…。意外な方向から浮かび上がる事件の全容、衝撃の結末! 震撼のデビュー作。(解説/穂井田直美)
中上健次が故郷・紀州に描く“母の物語” 「秋幸もの三部作」よりも以前の時代を描く、秋幸の母・フサの波乱の半生を描いた物語。 海光る3月。私生児としての生い立ちに昏い痛みを覚えながらも、美しく利発な娘に成長したフサは、十五になった春、生まれ育った南紀の町をあとにした。 若々しい肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。しかし、貧しくも幸福な日々は、夫・勝一郎の死によって突然に断ち切られた。 子供を抱え、戦時下を生き延びる過酷な暮らしの中で、後に賭博師の龍造と子を為し、秋幸と名付ける。しかし龍造が賭博で刑務所に入っている間、他の二人の女を孕ませていたことを知り、フサは秋幸には龍造を父と呼ばせぬと宣言する……。 中上健次が実母をモデルに、その波瀾の半生を雄大な物語へと昇華させた傑作長編。
直木賞受賞作含む、立原正秋の代表的短編集 日本と朝鮮の血を引く家系に生まれた兄弟が、戦争という得体の知れないものに翻弄されながらも、自分たちの存在を確かめようと、”血”とは何かを追求した「剣ケ崎」。 金貸業者を踏み倒す事を仕事にしている奇妙な男にひかれて、その不可解な魅力と付き合っているうちに、自らも破滅してゆく中年の教師を描いた「白い罌粟」。 没落寸前の旧家・壬生家。その終焉を闇夜に輝く篝火に象徴させ、従弟との愛を”死”で締め括った人妻を描いた「薪能」。 義弟との束の間の愛に燃えた若妻を描く「流鏑馬」、麻薬窟に出入りし、女と薬に溺れる男を描く「薔薇屋敷」。 直木賞受賞作、芥川賞候補作など立原正秋の代表短編5編を納めている。
浄土真宗の創始者・親鸞。苦難の生涯を描く 弾圧、非難と闘いながら、浄土真宗を創始し、あくまでも人間として生き抜いた親鸞の苦難の生涯を描く大作。 人心は乱れ、荒廃しきった平安末期、時の権力と結託した宗教界の腐敗、形式化は止まることを知らなかった……。 皇太后宮大進・日野有範の長男として京都日野に生まれた松若麿(親鸞)は、やがて比叡山に上り、出家して範宴(はんねん)と名乗る。 やがて民衆を救う真の仏の道は南都北嶺の諸大寺にはなく、俗聖の中にこそあると考えるようになった範宴は、苦悩の末、山を下りる決意を固める。 親鸞の苦難な生涯を壮大なスケールで描く4部作の第1巻。
青春=戦時下だった吉行の半自伝的小説 昭和19年8月ーー、僕に召集令状が届いた。その後の入営は意外な顛末を迎えるが、戦時下という抑圧された時代、生と死が表裏一体となった不安を内包し、鬱屈した日々を重ねていく。まさしく「焔の中」の青春であった。 狂おしいほどの閉塞感の中にあっても、10代から20代の青年らしい友人との、他愛のない会話、性への欲望、反面、母への慕情など巧緻な筆致で描かれる。また、戦争とは一線を引いたかのような、主人公の透徹した眼差しと、確固たる自尊心は一貫しており、吉行自身のメンタリティが垣間見える、意欲作である。
北斎の生涯を描いた時代ロマン小説の傑作 人々の生活を見つめ、大いなる自然を見つめ、その感動を絵にした男・葛飾北斎。妻・お砂との運命的な出会い、写楽、馬琴、蔦屋重三郎らとの交流を通じて画家として人間として成長していく姿を瑞々しいタッチで描く。 上巻では青年期の北斎の画家としての模索期間に、“異才”写楽との友情、そして絵画表現をめぐる議論が展開されていく。 写楽の個性的な言動に対比されて、北斎の青年期の人物像とその成長ぶりが浮かび上がってくる仕掛けが絶妙。 延々と続く絵画表現をめぐる議論が、不思議と退屈しないで読める。物語展開の軸になる人物視点が、北斎と写楽の二人に交互して効果をあげている。 また、北斎や写楽をとりまく女性達の人物造形にふくらみがあり、華やかで生き生きとしていて、江戸の女性の色っぽさも織り交ぜている。 北斎の伝記評伝ではなく、一人の絵描きを主人公にした、時代ロマン小説の傑作。
北斎の生涯を描いた時代ロマン小説の傑作 人々の生活を見つめ、大いなる自然を見つめ、その感動を絵にした男・葛飾北斎。妻・お砂との運命的な出会い、写楽、馬琴、蔦屋重三郎らとの交流を通じて画家として人間として成長していく姿を瑞々しいタッチで描く。 下巻では、画家として驚異的なほど活躍期間が長く、長命だった北斎の老年期の課題、晩年の老化との飽くなき戦いが展開される。 東洲斎写楽、お砂との死別により、悲嘆にくれる晩年の北斎だが、さらに、歌川広重の登場で、人気に翳りが出て、人気作家の晩年の悲哀を情感豊かに綴る。北斎を喝采と共に受け入れた時代が、やがて北斎を残して先へ進んで行ってしまうが……。