2016年3月4日発売
東北の港町に生きる人々の姿を通して描く、再生の物語全9編。3年前の秋、早坂希は勤めていた東京の会社を辞めて仙河海市に戻ってきた。病弱な母親の代わりに、スナック「リオ」を切り盛りしている。過去に陸上選手として活躍していた希は、走ることで日々の鬱憤や悩みを解消していたが、ある日大きな震災が起きて、いつも見る街並みが180度変わってしまう。(「リアスのランナー」「希望のランナー」)。高校生の翔平は、津波により両親と家を奪われ、妹の瑞希とともに仮設住宅で暮らしていた。震災の影響で心が荒む翔平だったが、瑞希の提案で「ラッツォク」を焚くことになり、あの日以降止まっていた“時”と向き合う。(「ラッツォクの灯」)。東北に生まれ東北に暮らす直木賞作家の、「あの日」を描かない連作短編集。
2026年東京。放射能汚染によって隔離された被災地「島」からやってきた、天才的騎手・喜多村ヤソウ。東京オリンピック後、スラム化した“鷺ノ宮”を偵察する「島」生まれの喜多村サイコ。先天性の心臓病を患う少女・谷崎ウラン。17歳と19歳と18歳の3人が出会うとき、東京を揺るがす事態が巻き起こるー。日本、フランス、メキシコ、そして「島」。遙かな未来になけなしの希望を託す、近未来長編。
細野新司は、金沢の女子大生竹内綾と遠距離恋愛中。ふたりは、3月14日北陸新幹線開業日に東京駅から「かがやき」で金沢へいく計画をたてる。だが、綾は現れず、細野は独りで新幹線に乗車し、彼女のマンションを訪ねるが留守だった。彼は手がかりを求め、綾の両親の住む宇奈月温泉へ向かう。そこへ警察から、江戸川で綾らしい女性の溺死体が発見されたと連絡が入る。捜査にあたる十津川警部は、細野に疑惑の目を…。東京、金沢を結ぶ連続殺人に挑む推理行。話題の新幹線を舞台に描く長編旅情ミステリー。
紺野洋一と芳子は車で新婚旅行へ。猛吹雪に遭遇した二人は、偶然あったロッジへ逃げ込んだ。オーナーは優しく迎え入れてくれ、六名の宿泊者たちとも話が弾む。お互いの連絡先を交換し、記念撮影までして夜を楽しんだ。ところが翌朝、紺野夫妻が目覚めると、誰もいない。それは奇妙な事件の幕開けだった!宿泊者たちの隠された素顔が見えてくる、ジェットコースターミステリ小説。傑作初期長篇!作家生活40周年記念特別インタビュー収録。
徳川家に凶事をもたらす禁断の妖刀村正が相次いで盗まれた。被害にあった研ぎ師は遊女と心中し、家宝を失った老侍は愛娘を身売りした。悲劇の舞台となった吉原に動揺が拡がる。何者かが村正を集めている。その目的とは。織江緋之介は水戸藩主徳川光圀の密命を帯びて真犯人を探る。浮上したのは幕府の重鎮。背景には将軍位継承をめぐる争いが。危機の及ぶ将軍家綱のもとに緋之介が疾る!
元妻の依頼で、不破勝彦は故郷・棚尾市へ久々に戻った。不倫の証拠写真を撮った者を調べてほしいという。不破はかつて義父のホテル業を手伝うために地元紙・信央日報を退職した。しかし食中毒事件で義父は失脚、妻との不仲もあって、彼は故郷から逃げ出したのだ。七年ぶりに戻った不破は、ホテルが古巣の信央グループに買収されていたことを知る。そして、何者かが彼を襲撃する!「正義」の真の意味を問いける、渾身の長篇ミステリー!
「江戸っちゅうのは、どないなとこなん?」お伊勢参りをする犬のシロは道中、江戸から来た老犬・雪と出会い旅することに。ところが化け物と遭遇しー(「件の夢」小松エメル)。佐々木小次郎との仕合、逃げてしまおうか、迷った宮本武蔵。そんな折、身に覚えのない子に名をつけるようせがまれたりー刻限に間に合うのか?(「異聞巌流島決闘」天野純希)。今読んでおきたい時代小説作家が集結!
直木賞受賞作『流』の原点。傑作青春小説! どうしてひとりぼっちじゃ駄目なのだろう? もと引きこもりの19歳。ゆるーいヒーローが中国大陸を疾駆する。水洩れしている心を抱えて…。直木賞作家が描く切ない恋と、何処までも続く沙漠をひた走る旅の行方に…。弁当工場でバイトしながら、三流大学に通う高良伸晃は教室で陸安?という中国人女子学生に惹かれる。引きこもり後、初の恋心をずたずたにされ、中国に短期留学する。
武田晴信(信玄)と道鬼坊こと山本勘助を通じて結びついた真田幸綱。戦乱の信濃で滋野一党を糾合し悲願の旧領回復を果たした。関東管領山内上杉家が衰退する一方、上杉景虎が勢力を伸張。真田は武田の部将として、越後上杉家と対峙し川中島合戦などで大きな役割を果たしてゆく。後に大坂方の知将として知られる真田幸村の祖父・真田幸綱の活躍。武田・真田の興亡を描く戦国大河第四弾!書下し。
戦も収まり秀忠の治世。元忍者で今は江戸で、よろず請負人となっている橘清十郎。稼いだ金を菓子作りにつぎ込み、心の拠り所としている。ところが彼の娘と名乗る少女が現れ、様々な事件が身に起こる! 2016年3月刊。
幕末。黒船の来航にざわめく江戸の町に一人の女俳諧師がいた。齢三十にして嫁にも行かず、酒を飲んでは世情を映した狂句ばかりを詠む、自称「小林一茶最後の弟子」-その名は紅林水無月。跳ねっ返りではあるものの、類まれなる語学の才を持つ彼女に目を付けた幕臣たちは、日ノ本の未来を左右するある賭けに出ようとしていた…。文庫書き下ろし。