2016年8月9日発売
薄井正明、59歳。元大手銀行勤務で、出向先ではプチ・エリート生活を謳歌している。近く都内に二世帯住宅を建築予定で、十年来の愛人・美優樹との関係も良好。一方、最近は会長秘書の朝川真奈のことが気になって仕方ない。目下の悩みは社内での生き残りだが、そんな時、会長から社長のセクハラ問題を相談される。どちらにつくか、ここが人生の分かれ道ー。帰宅した薄井を待っていたのは、妻が呼び寄せたという謎の占い師・長峰。この女が指し示すのは栄達の道か、それとも破滅の一歩か…
新年度が始まり、部員が増えた「うた部」では「今年こそ短歌甲子園出場!」とみんなの目標がひとつになる。クラスが落ち着いた五月、転校生がやってきて、業平に中学時代の記憶が蘇る。それは仲がよかったのに急に話をしなくなった「トキ」だった。野間児童文芸賞受賞作『うたうとは小さないのちひろいあげ』の続編!
猟奇殺人鬼一家の長女として育った、17歳の亜李亜。一家は秘密を共有しながらひっそりと暮らしていたが、ある日、兄の惨殺死体を発見してしまう。直後に母も姿を消し、亜李亜は父と取り残される。何が起こったのか探るうちに、亜李亜は自身の周りに違和感を覚え始めー。第62回江戸川乱歩賞受賞作。
女は小さな声で、マリモ、と言ったー。家具ショップで働き、妊娠中の妻と何不自由のない生活を送る悠太郎。ある日店に訪れた女性客と二度目に会った時、彼は関係を持ち、その名を知る。妻の出産が迫るほど、現実から逃げるように、マリモとの情事に溺れていくが…。(「雨のなまえ」)答えのない「現代」を生きることの困難と希望。降りそそぐ雨のように心を穿つ五編の短編集。
妹の結婚式のため平安神宮にやって来た野島高志は、二十年前に婚約破棄をした早希のことを思い浮かべた。以来、会うこともなかったが、ふと近況が気にかかり、今も京都に暮らす早希の妹・真希を訪ねる。そこで彼は思いも寄らぬ真実を知り…。(「戻り橋」)恋や情念が盛り上がった後に漂うそこはかとない寂寞感。欲望の向こう側に広がる儚い人間模様が描き込まれた連作短編集。
王都エクバターナの街で、アルスラーンとエラムが魔物に襲われる。蛇王ザッハークの魔の手は確実に忍び寄っていた。一方、ミスル国で玉座を狙い雌伏するヒルメスは、美しき孔雀姫・フィトナと運命的に出会う。彼女の腕には謎の銀の腕環が…。そして魔の山デマヴァントに閉じこめられたクバードたちの運命は!?パルスの新たな歴史が動きだすシリーズ第十一弾!
失踪した恋人を追うカメラマンの田村と、写真家殺害事件を捜査する十津川警部。二つの事件を結ぶのは、三年前に撮影された「おわら風の盆」の写真だった。祭りの行われる富山県八尾を訪れた二人だったが、町の人々はなぜか、かたくなに口を閉ざす。そして祭りの最中、三年前に死んだ男の唄声が響きわたった…。十津川の執念が解き明かす、驚くべき真相とは?
ヴァイオリン・コンクールの決勝に残った七人は、東京近郊の別荘に集められ、課題曲にとりくむことになった。脅迫電話、襲撃事件…出場者の一人である桜井マリが何者かに狙われ、片山義太郎が彼女の警護にあたることになった。地震、盗聴、殺人、自殺未遂、放火ーコンクール関係者に次々起こる怪事件。華やかな音楽の舞台に潜む「暗部」をホームズが暴く!
取調室で、警部は老人に子ども時代の思い出を語り始めた。夜店の花火屋で少年が目にした、夢のように美しく不思議な光景とは?(表題作)僕の彼女が飼っていたスピッツのベルは、よく行方不明になっていた。それは、実は僕たちの人生にとても大切な意味があったのだ。(「ベル」)著者が紡いできた千編以上のショートショート作品から厳選した、珠玉の傑作集第一弾!
縁切り寺の慶光寺に、白粉屋「紅屋」のおかみ、お新がやってきた。夫の先妻の幽霊が出ることに悩んでの駆け込みだったが、不審を抱いた慶光寺御用宿「橘屋」の雇われ人・塙十四郎が紅屋を調べると、浮き上がってきたのは完全に崩壊した家族の姿だったー。慶光寺の寺役人で十四郎の幼馴染みでもある近藤金五のちょっとせつない恋物語も入った充実のシリーズ第四弾。
芝の伊皿子坂にある料理屋・夢屋のおかみ、おたね。ひとり娘を大地震で亡くした悲しみはまだ癒えないが、ある日、浜辺に置き捨てられていた幼い男の子を夢屋に連れて帰る。母親を懸命に探すおたねと夢屋の面々だったが…。やがて夢屋の料理が、母と息子の再びの絆を作っていく。辛い境遇を乗り越えて歩き出す市井の人々を温かく描く、感動の好評シリーズ第三弾。
多くの昔話や稲荷信仰にたとえられるように、狐は古くから人に親しくも、とても神秘的な動物だった。そんな超自然の力を持つ狐に守護された若き武士が、激動の乱世を生き抜いていく不思議な物語「狐武者」をはじめ、深窓の女子学生失踪事件をめぐる男女の愛憎劇をサスペンス溢れる筆致で綴った中編「うす雪」など、七編すべてが文庫初収録となる幻の傑作集!
読売屋を営む水月天一郎たちの元へ、南町奉行所の同心が読売の種をもってきた。吉原の遣手で「鬼婆あ」と恐れられるお稲が病に倒れ、武家に里子に出した息子に会いたがっているという話だった。「鬼の目にも涙」という読売種を調べ出したが、とんでもない悪事が発覚。天一郎たちは、吉原に巣くう闇と対峙する。江戸情緒と爽やかさ満点の人気シリーズ第六弾!
不動産会社の営業で訪れた家の主人が、小学生の頃の自分を知っているという。驚いた自分にその元教師が語ったのは、なぜか二十年前に起きた拉致事件の真相を巡る推理だった。当時の記憶が鮮やかに蘇る…(「沙羅の実」)。長い日々を経て分かる、あの出来事の意味。記憶を遡れば、過去の罪と後悔と、感動が訪れる。謎が仕組まれた、極上の「記憶」を五つ届けます。