2017年6月11日発売
蝶の羽ばたき、彼方の梢のそよぎ、草むらを這うトカゲの気配。カールは、そのすべてが聞こえるほど鋭敏な聴覚を持って生まれた。あらゆる音は耳に突き刺さる騒音になり、赤ん坊のカールを苦しめる。息子の特異さに気づいた両親は、彼を地下室で育てることにした。やがて9歳になった彼に、決定的な変化が訪れる。母親の入水をきっかけに、彼は死という「静寂」こそが安らぎであると確信する。そして、自分の手で、誰かに死を贈ることもできるのだと。-この世界にとってあまりにも異質な存在になってしまった、純粋で奇妙な殺人者の生涯を描く研ぎ澄まされた傑作!
■特集 新訳版シリーズ完結記念!インタビュー、名編「赤毛組合」掲載などで贈る、深町眞理子訳版〈シャーロック・ホームズ全集〉のすべて■新連載〈ほしがり探偵〉の新たな活躍を描く、青柳碧人「馬のない落馬 ほしがり探偵ユリオ」スタート■読切 人気シリーズのスピンオフ、バリー・ライガ「シリアルキラーの休日」。『本能寺遊戯』の著者が贈るお仕事ミステリ、高井忍「美術館と夜のアート」■選評 第8回創元SF短編賞ほか。
トレッキング中の女性が偶然見つけたのは、山中に埋められた六人の遺体。ずいぶん前に埋められたらしく白骨化していたが、頭蓋骨には弾痕が。早速トルケル率いる殺人捜査特別班に捜査要請が出された。トルケルは迷った挙げ句、有能だがトラブルメーカーのセバスチャンにも声をかける。家に居座ってしまったストーカー女にうんざりしていたセバスチャンは、渡りに舟とばかりに発見現場に同行する。史上最強の迷惑男セバスチャン再び。
妻子を残して移民の男性が失踪した。警察は強制送還を恐れて自ら姿を消したと結論づけたが、妻は納得しなかった。夫が自分たちを残して逃げるはずがない。TV番組の記者が妻の訴えに興味を持ち、事件の調査をはじめる。一方山中の白骨事件を調べているトルケルたちは同じ頃、近くで運車の墜落炎上事故があったことをつきとめる。車に乗っていたのは偽の身分証明書を持った身元不明の女だった。人気脚本家コンビが放つ人気シリーズ。訳者あとがき=ヘレンハルメ美穂
梅雨の夜、太鼓長屋に養い親の千弥と住む弥助のもとに、客が訪ねてきた。化けいたちの宗鉄と名乗る男は、妖怪の子預かり屋の弥助に娘を預けたいという。山奥で暮らしていたのだが、母親が亡くなり、男手ひとつではどうにもならなくなったのだ。女の子の名はみお、白い仮面をつけ、父親だけでなくひたすら周囲を拒絶していた。だが、弥助のもとに預けられる子妖怪達と接するうちに、みおに変化が……。お江戸妖怪ファンタジイ第四弾。
過去への時間旅行が可能となった未来、時間局が設立された。部局はふたつ。過去の歴史の監視と復旧を任務とする時間警察と、観光客を歴史的な場面へ案内する観光部だ。観光部員となった青年ジャドは、時間線をビザンティウムへのぼり、そこで絶世の美女に出会い、恋に落ちるが……。タイム・パラドックスSFの金字塔。星雲賞受賞作。解説=高橋良平