2017年6月2日発売
エバはため息をついた。亡き両親から譲り受けたホテルは破産寸前。加えて、妊娠していることがわかったのだ。もちろんうれしいけれど、ただでさえ生活が苦しいのに、ひとりでちゃんと育てられるかしら?悩むエバの前に、かつて情熱の一夜をともにした男性が現れる。魅惑的な声と黒い瞳を持つ大富豪キャル。彼は冷たくエバに言った。「結婚しよう。きみは金、ぼくは花嫁を手に入れる」どうしても妻が必要な事情のあるキャルは、さらにエバの足下を見るような交換条件を提示してきた。ホテルへの高額の融資だ。ああ、彼に愛されないことを承知で結婚しなければならないなんて…。
児童養護施設で育ったグレイスは、18歳でイギリスからイタリアへ渡り、名家の御曹司ドナート・ヴィトーリアに見そめられ、19の時に結婚した。財力、名声、容貌、知力、すべてに最高のものを備えたドナートが、どうしてわたしのような何もないおずおずした少女を妻に?それでも彼は熱愛してくれた。夢のような1年が過ぎ、グレイスは身ごもった。玉のような男の子パオロに恵まれたころは、幸せの絶頂だった。しかし、その大切な赤ちゃんに突然の死が襲いかかる。悲しみのどん底に落ちたグレイスの心の傷が癒える間もなく、夫ドナートの裏切りが発覚して…。
フランコが瀕死の重傷ですって!?レクシーは別居中の夫の父親から連絡を受け、凍りついた。フランコの家を出てから3年半。離婚を考えていた矢先だった。すぐにイタリアの病院へ向かったレクシーは、変わり果てた姿の夫と対面し、しばらく付きそうことを約束する。だが翌日、フランコが彼の親友の妹といるところを目撃し、レクシーの胸にかつての苦い記憶が甦った。彼女とフランコが親密にしている1枚の写真ーそれこそが、別居に至った原因だったのだ。レクシーは、立ち去ろうとするが、怒りに燃えたフランコが、点滴を引き抜き追ってきて…。
ギリシアの孤島で古い城に閉じ込められ、父の暴力に耐えながらも、自立する日を夢見ていたセレーネ。17歳のとき、あるパーティで彼女は生まれて初めての恋をした。父のビジネスの仇敵、億万長者ステファン・ジアカスに。セレーネの語る夢に真剣に耳を傾け、彼はこう言ってくれた。「5年後に会おう、セレーネ」彼女はその言葉だけを心の支えに、島から出る計画を進めてきた。そして決行の日。美しく成長したセレーネは、まだ知らなかった。ステファンがじつは悪名高きプレイボーイであるうえに、彼と父との間には、ビジネス以上に深い因縁があるということを。
「手切れ金は払う。だから父とは別れてくれ」社長の御曹司ライルから蔑むような目で見られ、そう一方的に告げられて、ケルサは思わず彼の頬を叩いていた。私を社長の愛人だと決めつけるなんて、酷いわ!だがじつはケルサ自身、なぜ入社早々に気に入られ、社長秘書に抜擢されたのか不可解に思ってもいたのだ。ほどなくして社長が亡くなり、遺産の半分をケルサに遺したことがわかると、ライルの疑念はますます深まったようだった。今度は私を金目当ての女だと罵倒するのかしら?意外にも彼は切なげな表情で、驚くべき真相を口にした。