2018年3月2日発売
人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学一年の春、僕は秋好寿乃に出会った。空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。
世界的なグルメガイドの元「格付け人」、牧村紗英。「絶対味覚」を持つ彼女は、独立して会社を立ち上げ、人気店を覆面調査し、「星をつける」仕事をしている。彼女の判断は、企業による対象店への投資を左右する重要なものだ。今回、彼女が調査するのは、カリスマ料理研究家、須賀ユウコが手がけるカジュアルフレンチ、「ユウコの厨房」。プレミア価格がついている幻の日本酒の蔵元、「酒蔵烏鵲」。高級鮨を手軽な値段で味わえると人気の大箱鮨店、「すし海将」。華やかな成功の陰にある嘘、そしてそこには常にある男の存在が…?
司書として図書館で働く諒子は、一度だけ無自覚に娘を手を上げてしまい離婚、その後悔を引きずったまま孤独な毎日を過ごしていた。図書館へ頻繁に通ってくる中学生の女の子に自分の娘を重ね合わせていたが、少女は突然失踪してしまう。一方、専業主婦の美咲は、3歳の娘の育児に苦労し、夫ともうまく行かず疲弊していた。ある日、娘が幼稚園から何者かに連れ去られてしまい…。接点のないふたりの女性が交錯するとき、胸に秘めていたそれぞれの本音があふれ出していくー。ふたりの行く末は絶望か、希望かー切なき母娘物語。
創立十五周年記念公演を目前とした名門バレエ団に公演中止を要求する脅迫状が届いた。海外の要人が鑑賞を予定していることが判明し、海埜警部補が専従班として警護に当たることに。芸術知識と推理力で数々の事件を解決してきた甥の“芸術探偵”瞬一郎と通し稽古に向かうと、演目の『ドン・キホーテ』は危険なシーンばかり。万全の警備態勢を整えるが、海埜はある絶対的な不安の原因に気づいてしまったー。緊張の中、幕があがる!(「ドンキホーテ・アラベスク」)舞台で渦巻く疑念があなたを幻惑する書き下ろしミステリ中篇集。
ニック・ロッシは写真が掲載されるだけで女性誌を売り切れにするセクシーセレブ。フェイス・マーフィにとっても、親友の兄というだけでなく憧れの人だった。そんな彼と夢の一夜を過ごし、不運続きの人生は終わったと思った彼女だったが、出張先のイタリア・シエナで大事件に巻き込まれる。一方フェイスを追って、自分のルーツでもあるシエナへやって来たニックは、街をあげての祝祭の中、帰属意識を実感し、新たな人生を考え始める。大人気作家のイタリアへの愛着にあふれたラブ・サスペンス!