2018年3月7日発売
若き妻と夫の機微を描いた著者初期の意欲作3編。「ソクラテスの妻」は1963年度の芥川賞候補になった秀作。著者自身がモデルとされた作品で、浮世離れした夫の行状に手を焼く妻の苦労が描かれる。「二人の女」もまた芥川賞候補となり、親友をモデルにした「加納大尉夫人」は1964年度の直木賞候補となった。いずれもユーモアと深いペーソスに彩られた、色あせることのない珠玉の一冊である。
戦に生きた男、焦がれる女ー。二人の小さな恋のつぼみ激動の時代に大輪の花は咲かせられるのかー。時代の転換点ともなる戊辰戦争の一連の戦いの中で明治2年3月25日に盛岡藩宮古村で新政府軍と旧幕府軍の戦闘が繰り広げられた。志ある若者と時代に翻弄される女の感涙必至の人間ドラマ。最後に待ち受ける二人の運命が、ただただ眩しく神々しい。
群馬県高崎市で中学生の飛び降り自殺があった数カ月後、女性介護施設職員の水死体が発見された。さらに国道では故意の追突事故が。死亡した加害者は自殺した中学生の父親、重傷の被害者は当時の担任教諭だった。同じ頃、東京では弁護士が地下鉄駅で老人に突き飛ばされ、高級バー経営の女性が失踪した。一見脈絡のない事件だが全てが過去のある出来事に繋がっていた。書下し長篇推理。
わけあって町方役人に追われ、私塾“雅や”を閉めた京ノ介。花売りに扮し、幕府の密偵だった母麻衣の行方を探っていた。ある日、京から下向してきた二人の公家が、京ノ介の父である桜町帝は、幕府の手によって暗殺された可能性があると伝えてきた。討幕を画策する勢力が京ノ介を取り込もうとする中、討幕に賛同する諸藩の連判状の存在が明らかとなる。思惑が入り乱れるシリーズ第三弾!
“どんな穴でも開けます 開けぬのは財布の底の穴だけ”という珍商売「穴屋」佐平次。ある日、高橋荘右衛門と名乗る武士が訪ねてきた。吉原の花魁に入れあげた信州上田藩主・松平忠学を諌めるため、相合傘に穴を開けてほしいという。依頼は無事成功したが、再び荘右衛門がやってくる。幕府大目付の早坂主水之介が、先祖が真田家に打ち負かされたことを逆恨みしているという…。
名人と言われる四代目松井源水を父にもつ曲独楽師「ひらがなげんすい」ことお駒は、おきゃんで一本気な十五歳。前髪を垂らし、茶筅形に束ねた総髪の男装で舞台に立つ。ある日お駒は、怪しい二人連れに後を尾けられる。折しも江戸では香具師殺しが立て続けに起きていた。狙いは母の形見の鬼の根付らしい。生前掏摸の名人だった母親譲りの鮮やかな手口で男から巾着を盗んだが…。
実和子(37)は大手不動産会社に勤めるキャリアウーマン。あるとき、海外赴任中の夫の浮気の証拠を、妹の古都子(32)に突きつけられる。Fカップの三十路妻は、夫に復讐とばかり、ジムのインストラクター・杉本にアバンチュールを仕掛けた。刺激的な交歓は実和子を官能の虜にしてゆく。だが杉本の狙いは実は妹の古都子のほうだった…。人妻たちの奔放な性愛を描くエロティック長篇。
今、京都にいる。僕は、間違いなく、ここで、あいつに殺されるー十津川班の西本刑事の友人・本田悟から手紙を受け取った恋人の白井みずえが西本に助けを求めてきた。しかし、西本が京都に着いたとたん、不可思議な殺人事件が起きた。被害者は本田のコートを着て、本田のキャッシュカードを所持していたのだ。そしてさらに、第二の殺人事件が…。十津川警部の活躍を描いた傑作集!
桑名藩から飛び地・越後柏崎へ赴任してきた若い夫婦。二人を待っていたのは、厳しい陣屋の暮らし、海鳴り止まぬ過酷な環境だった。勘定や検見の仕事に忙殺される夫、渡部鉄之助。そして古着の着物さえ買う余裕のない妻、紀久。桑名に長男を残してきた夫婦は、故郷から持ち込んで番神堂に植えた梅の苗木に望郷の念を募らせていく。子を想いながら、日々を懸命に生きた女の一生が胸を衝く!
鞍馬民雄は東京大空襲で母親、弟と生き別れた。父親も戦争で行方知れずとなっており、奇跡的に残った自宅の防空壕でひとり、家族を待ち続けることを決意。しかし、民雄のもとには、家を奪おうとする孤児、人さらい、狡い大人などがいつしか集うようになり…。まだ幼い民雄は、戦争の爪痕が残る東京で生き残ることはできるのか。GHQが日本を占領する過酷な時代を描く戦争孤児文学。
警察のあきれた怠慢のせいでストーカー被害者は殺された!? 警察不祥事のスクープ記事。新聞記者である親友に裏切られた……口止めした森口泉は愕然とする。情報漏洩の犯人探しで県警内部が揺れる中、親友が遺体となって発見された。警察広報職員の泉は、警察学校の同期・磯川刑事と独自に調査を始める。次第に核心に迫る二人の前にちらつく新たな不審の影。事件の裏には思いも寄らぬ醜い闇が潜んでいた……。(解説:村上貴史)
事件を科学的に解明すべく設けられた警視庁行動科学課。所属する一柳清香は、己の知力を武器に数々の難事件を解決してきた検屍官だ。この度、新しい相棒として、犯罪心理学と3D捜査を得意とする浦島孝太郎が配属されてきた。その初日、スーパー銭湯で変死体が発見されたとの一報が入る。さっそく、孝太郎がジオラマを作ると…。大注目作家による新シリーズが堂々の開幕!
安曇野のホテルで、東京在住のイラストレーター・早見有希世の他殺体が発見された。彼女を支援する地元企業の笛木社長は、彼女の死亡推定時には京都の出張所にいたはずだというのだが、出張所を訪れた様子はなく、行方不明となっていた。道原らの捜査によって、笛木は、京都の愛人・長尾松美の故郷である高野山に行った可能性が…。事件は予想外の展開を見せ始めた!?傑作長篇推理。