2019年5月11日発売
「華はねえが、味がある……なんともおめえらしいぜ、こうの字よ」 光太郎と孝次郎の兄弟が営む菓子屋「二幸堂」。 如才なく得意先を開拓する美男の兄と、不器用だが才ある弟の作る菓子は、 江戸深川にしっかりと根を下ろしはじめた──。 王子のせせらぎのような水羊羹「壬」(みずのえ)、生姜の風味爽やかな「夕凪」(ゆうなぎ)、 香ばしさと舌触りが絶妙な粟饅頭「日向」(ひなた)、瑞兆を映す祝い菓子「冬虹」(とうこう)…… ──孝次郎の作るとびきりの菓子が、縁(えにし)を言祝(ことほ)ぎ、幸いを呼ぶ── 江戸の菓子屋を舞台に描かれる、極上の甘味と人情と、ままならぬ恋。 兄弟の絆と人々の温かさに涙零れる珠玉の時代小説、待望の第二弾!
愛妻を亡くし、ケンブリッジの図書館を定年退職したばかりのわたしのもとへ、ある日一通の奇妙なメールが届く。添付されていたフォルダには、突然失踪した姉をさがす男の手記と、その女性に飼われていた猫に関する信じがたい情報がおさめられていた。猫は人間の言葉をしゃべり、血も凍るような過去を語っていたー。わたしは好奇心に駆られて、真偽を確かめようと調査にのりだす。予測不可能な恐ろしい事態に巻きこまれるとも知らずに…。ミステリ、ホラー、文学への愛がたっぷり詰めこまれた、不死の猫をめぐる不思議でブラックな物語!
人間の記憶をレコーディングし、他人にもわかるよう翻訳する技術を生みだした会社・九龍。創業者の不二が病に倒れてからも事業を拡大し続けていたが、記憶データをめぐって起きたいくつかの事件により、世間から非難と疑いの目が向けられていた。九龍に所属する記憶翻訳者の珊瑚は、恩師の不二と大切な居場所である九龍を守るため、事件の真相を探ろうとするが…。デビュー作『風牙』に連なる中編集。
私立探偵エルヴィス・コールは、ある母親から、最近妙に金回りがいい息子タイソンのことを調査してほしいという依頼を受ける。どうやら少年は仲間とともに裕福な家からの窃盗を繰り返しているらしい。警察より先に身柄を確保し、自首させたいという母親。だが、コールの先をいくように、何者かが少年の仲間を殺していた。そして少年の身にも…。『容疑者』『約束』に続く第3弾。
夢の不思議さを綴る夜の語り手、初期短篇集 わたしは駅の古いベンチに横になっていた。わたしにはわかっている、カッコウがそっと三度鳴きさえすれば、すぐにも彼に逢えるのだ。「カッコウはもうじき鳴く」とひとりの老人がわたしに告げた……。姿を消した“彼”を探して彷徨い歩く女の心象風景を超現実的な手法で描いた表題作。毎夜、部屋に飛び込んできて乱暴狼藉をはたらく老婆の目的は、昔、女山師に巻き上げられた魔法の靴を探すことだった……「刺繡靴および袁四ばあさんの煩悩」ほか、全九篇を収録。『黄泥街』(Uブックス既刊)が大きな話題を呼んだ現代中国作家、残雪の独特の文学世界が最も特徴的にあらわれた初期短篇を精選。夢の不思議さにも似た鮮烈なイメージと特異な言語感覚で、残雪ファンにとりわけ人気の高い一冊。付録として、訳者による作品精読の試み「残雪ー夜の語り手」を併録した。
ミッドウェー攻略と米空母撃滅を託された南雲機動部隊と、その侵攻阻止を目論む米太平洋艦隊が激突。南雲部隊はヨークタウンを撃破するも空母三隻を失い、壊滅の危機が迫る。しかし、ドイツから購入した3隻の護衛艦がその危機を救った…。米豪連絡線の死守を図る米軍は対日反攻計画「望楼作戦」を発動。ソロモン諸島で本格的な滑走路が建設できる唯一の場所、ガダルカナル島の確保を目指す。原住民の協力も得て滑走路を建設した日本軍は、陸海軍の奮闘で米軍の侵攻を阻止するが、今また連合軍の反撃が開始されようとしていた…。