2019年9月6日発売
妹が駆け落ちしたうえ、自分についてもあらぬ噂を立てられ、社交界に出られなくなったクロエ。家にも居づらく、今は祖母の親友である公爵夫人の家に身を寄せていた。ある日、公爵夫人が孫のベリック伯爵を家に呼び、祖父の元気なうちに身を固めるよう説き伏せる。偶然居合わせたクロエは、伯爵が結婚に乗り気でないことを知る。伯爵はかつて、ナポレオン戦争に友人を誘って出征した。しかし友人は戦士し、自分だけが大きな怪我を負いながらも生き残ってしまったことに負い目を感じており、幸せになることなどできないと考えていた。彼の影が気になりながらも、クロエは自分との便宜結婚をもちかける。愛など求めていないからと…。魂の癒しと再生を描く“サバイバーズ・クラブ”シリーズ第5弾!
江戸へ戻るや否や、将軍家斎の命により、神君家康公の「拝領猿」を取り戻し、二百年前の罠を見事に解決した正義の浪人若殿・松平竜之介。やっと平穏な生活に戻れると思いきや、信じ難い事件が江戸を震撼させる。「羅切魔」と呼ばれる集団が、なぜか“立派なもの”をもつ男を次々に斬殺しているというのだ。しかもこの悪党は、富商も襲い、「赤地蔵」を奪っているという。果たして目的の異なる二つの事件の共通点とは?そこには、邪教団の恐るべき野望が…。日の本一の艶福家・竜之介は、ついに自らが的となって、最凶の外道に相見える!
幕府を私物化する田ノ倉恒行を老中の座から引きずり下ろすため、四人の配下とともにその悪政の証を立てようとする隠居大名・朧月寒山。寒山は十年前、田ノ倉の謀略によって改易されるという遺恨を持っていた。だが、彼らの仕掛けは田ノ倉を追い詰めるものの、いつもすんでのことで逃げられてしまう。ある日、奇しくも、大川で何者かに襲われようとしていた田ノ倉を救う結果となった寒山たち。事件は寒山に、田ノ倉憎しは自分たちだけではないと知らしめることになったのだ。寒山は、田ノ倉を襲ったのが誰の手のものか調べはじめるが、その背後には思いもかけない大物の名が…。書下ろし長編時代小説、第二弾。
着流しに三つ紋つきの黒羽織を重ねた八丁堀の定廻り同心、暁蘭之介は、今日も韋駄天走りで江戸の町を守り抜くー。ひと房の松葉で頬を撫でながら冴える推理を閃かせ、時に心形刀流の剣で悪を裁く。人情家でありながら、目こぼしは一切許さない蘭之介は、北町奉行の信任が厚い同心であった。ある夜、奇妙な死骸が見つかった。何ひとつまとっていない若い女で、首がないのだ。謎めいた死体を検分し、身分ある武家の女と推察。探りを入れて、ある旗本の名を浮かび上がらせるが、蘭之介の太刀はすでに真の黒幕を捉えていた!成敗の一閃が、事件の驚きの全貌を見事に解き明かす。