2020年8月1日発売
「聞いてくれたまえ。これは、全斗煥将軍が国を統べていた時代の話だ」 ノワール映画の我らが主人公[独裁者]と、その兄に怯える〈舎弟たち〉--。 時代の狂気のなかで破壊されたタクシー運転手ナ・ボンマンの人生を、軽妙洒脱、ユーモラスな文体で、悲喜劇的に描ききった話題作。 1980年に全斗煥が大統領に就任すると、大々的なアカ狩りが開始され、でっち上げによる逮捕も数多く発生した。 そんな時代のなか、身に覚えのない国家保安法がらみの事件に巻き込まれたタクシー運転手ナ・ボンマンは、政治犯に仕立て上げられてしまい、小さな夢も人生もめちゃくちゃになっていく。 軍事政権下における「国家と個人」「罪と罰」という重たいテーマを扱いつつも、スピード感ある絶妙な語り口、人生に対する鋭い洞察、魅力的なキャラクター設定で、不条理な時代に翻弄される平凡な一市民の人生を描いた悲喜劇的な秀作。 韓国でロングセラー。 渾身の本格長篇、待望の邦訳! 〈イ・ギホの小説は、大いに笑わせてくれるが、そのぶん心を痛めさせられる。喜劇さえもがすでに悲劇の一部なのだ。読みやすく一気に読み進められるが、読後にはなかなか本を閉じることができない、深い傷を負った人間の哀しいジョークのような小説だ。〉--申亨テツ(「解説」より) 第I部 第II部 第III部 作家のことば 解説……申亨テツ 訳者あとがき
[商品について] 九死に一生を得て捕虜となり、マニラで終戦を迎えた青年。 ソ連軍の侵攻により家族と離れハルピンから引き揚げてきた少年。 急速に変わりゆく戦後社会の中で、政治や裏社会に足を踏み入れながら、彼らは何を思い、どの様に生きたのか。 「家族」とは、「生きる」とは、「やさしさ」とはーー。 戦争という現実を背負った二つの人生を、人生の四季の中で丁寧に描く二つの小説を収めた作品集。 [目次] 第一話 消えなかった炎 忌まわしき青春 再出発の始まり 思いもせぬ出来事 煩悩 苦悩 病と決意 第二話 人生浮き沈み 一 願いとは 二 茨の道 三 不思議な出会い 四 正義の道程 五 日中間への思い 六 私の身の上話し 七 計報 八 生まれ故郷へ 九 朗報 著者略歴 [出版社からのコメント] 人間に限らず、生きるものは長く生きれば生きるほど、多くの傷を負っていきます。それでも立って前に歩き続けなければならない私たちにとって、本当に大切なものとは何でしょうか。本書に収められた二つの人生の行方から、様々な思いを感じ取っていただければ嬉しく思います。 [著者プロフィール] 上杉 辰(うえすぎ・しん)(本名 穐山和壽) 人様に語るほどの経歴はございませんので、ご容赦ねがいます。
フランス各誌が驚愕! 「大事件」とまで評された、鮮烈なデビュー作。 こ の 距 離 が、 私 を 自 由 に し た。 あらたな「越境」小説集。 出身地である韓国を離れ、渡仏した若き鋭才、グカ・ハン。 選びとったフランス語でこの小説を書くことが、自分のための、独立運動だった。 ー - - そこは幻想都市、ルオエス(LUOES)。人々は表情も言葉も失い、亡霊のように漂う。 「私」はそれらを遠巻きに眺め、流れに抗うように、移動している。 「逃亡」「反抗」「家出」、その先にある「出会い」と「発見」。 居場所も手がかりも与えてはくれない世界で、ルールを知らないゲームの中を歩く、8人の「私」の物語。 ー - - 登場人物は誰もがみな移動している。 ある街から別の街に向かう者もいれば、ある国から別の国に向かう者も、あるいはただ川を渡り、向こう側に行くだけの者もいる。 彼らは現実の世界と夢や幻想の世界を、生と死の間を行き来する。 そもそもこれらの短編は、作者である私が二つの言語の間を絶えず往復した成果だった。 (邦訳版書き下ろし「作者あとがき」より) ◇ ◇ ◇ 彼ら彼女らはちっぽけな個人では太刀打ちできない大きな力に直面し、しばしばそれに押しつぶされてしまっているように見える。 だが、グカ・ハンによれば、必ずしもそういうことではない。 登場人物たちは、しばしば世界から身を閉ざし、縮こまっているだけのように見えるが、それは理不尽な世界に対する反抗のひとつのあり方である。 (「訳者あとがき」より) ◆ 温又柔氏、斎藤真理子氏より推薦コメントが届いています! ◆ 静かでありながら、とてつもなくけたたましい。 母語の檻の中でまどろんでいた意識が生き生きと粒立ってくる。 ーー 温又柔 誰かの困惑の中に、すべての答がある。 後を追いかけていきたい、グカ・ハンの迷路。 ーー 斎藤真理子