2022年10月31日発売
父親の介護のため地元・奄美大島にUターンした昇雄太。 長年過疎と人口減少に悩まされていた町は、巨大クルーズ船寄港地を中心としたIR誘致計画により、活気を取り戻しつつあった。 この事業は、圧倒的巨大資本の力で雇用創出とインフラ整備を実現し、町の、そして日本の救世主となるーー多くの島民がそう思っていた。 ところが計画が着々と進むある時、昇はクルーズ船〈エデン号〉の前代未聞の事業内容を突きつけられる。 門戸開放か排斥か。様々な思惑が渦巻く計画を前に、島民たちの決断は?
1994年に、日本人として初めてアメリカのスケートカンパニーから世界デビューを果たしたプロスケートボーダー岡田 晋(おかだ・しん)。 この『眼鏡とオタクとスケートボード』は、その岡田 晋がスケートボードに出会った幼少期から世界デビューを果たすまでに起こった出来事や、青春ならではの心の葛藤を回想する自伝小説です。
あなたは正しく生まれたのに、歪んでしまった。 目撃者、看守、前科者、密入国者の親戚・・・・・・。 犯罪に関わりを持ってしまった 人々の孤独と一筋の光。 CWA賞最優秀短編賞受賞作を含む忘れがたい10編。 ギャングの少年の殺人を目撃した女性は、報復を恐れて通報するか苦悩する(「ベイビー・キラー」)。1988年フランスで、8人の子供を殺した囚人と看守の奇妙な交流を描く(「ボルドーの狼」)。メキシコから密入国する親戚を救うため、少年は父と山火事が広がる国境地帯に踏み入る(「灰になるまで」)。犯罪に関わった人々の孤独と希望を、美しく切なく真摯に描く。CWA賞最優秀短編賞受賞作を含む傑作短編集! ■目次 「悪いときばかりじゃない」 「ベイビー・キラー」 「ボルドーの狼」 「万馬券クラブ」 「夕闇が迫る頃」 「本能的溺水反応」 「聖書外典」 「すべてのあとに」 「甘いささやき」 「灰になるまで」
猫をソファに上げないこと、床を汚さないこと・・・・・・。 完璧主義の友人宅の留守番を引き受けた ぼくの悪夢のような八日間 恐ろしくもおかしいカフカ的不条理! ベティ・トラスク受賞作 神経質で完璧主義の友人の留守宅をまかされた男。フローリングを汚さないことと、ストラヴィンスキーにちなんだストラヴィとショスタコービッチにちなんだショシイという二匹の猫の世話をすることだけを約束させられて。なんということもなさそうな、気楽な留守番のはずが、悪夢のような展開を見せることに……。そこここに、置かれる友人の細かい注意書き。カフカ的怖さとおかしさが同居する奇妙で独創的な傑作小説。
輪郭は強烈な輝きを放っているのに、 彼の中心は闇に沈み、謎めいたままーー ひったくりの犯人を突きとめた。 事件はそれで終わらなかった。 私たちは、ある男が歩んだ道を 辿り直すことになる。 〈犯罪と私たち〉を真摯に描く、実力派作家、渾身の新境地。 知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人捜しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだったがーー。《本の雑誌》が選ぶ2020年度文庫ベスト10第1位『パラ・スター』の著者が贈る、〈犯罪と私たち〉を描いた壮大なミステリ。
日本にもたらされた中国の漢詩文、それを承けて平安朝の文人たちがつくりあげた日本の漢詩文、一方で万葉以来展開してきた和歌、これらが享受されていく歴史の交差点に成立したのが『和漢朗詠集』である。 本書は『和漢朗詠集』の成立と享受を論じることにより、和の世界が有していた流れと漢の世界からもたらされた流れが交錯し、新しい流れが生み出されていく我が国の文化の創造の過程で現れた、一つの典型的な現象を明らかにしていく。 増補・改訂により待望の復刊。 序文 伊藤正義 増訂版の刊行にあたって 序 『和漢朗詠集』研究史の沿革と本書 第1篇 『和漢朗詠集』の構成 一 『和漢朗詠集』全般の構成ー『古今集』をはじめとする勅撰和歌集との関連においてー 二 『和漢朗詠集』上巻四季部の構成ー先行詞華集との関連においてー 三 『和漢朗詠集』下巻雑部の構成ー先行詞華集との関連においてー 四 『和漢朗詠集』八月十五夜・月部の構成ー都の月・他郷の月ー 五 『和漢朗詠集』の部立「白」に関する考察ー『朗詠集』の構成と周辺の資料からー 六 『和漢朗詠集』帝王・親王・丞相部の所収和歌をめぐってー『古今集』序、同序古注(公任注)とのかかわりを視野においてー 第2篇 『和漢朗詠集』の本文 一 『和漢朗詠集』の享受と諸写本の本文形態の相違 二 『和漢朗詠集』古写本における佳句本文の改変をめぐって 三 『和漢朗詠集』古写本における和歌本文の異同と部立の配列ー春部末の「藤」「躑躅」「款冬」の部立を中心にー 四 『和漢朗詠集』博士家写本の解読ー学的情報としての注記の「読み取り」- 第3篇 『和漢朗詠集』の享受と古注釈 一 院政期における和漢朗詠集注釈の展開ー『朗詠江注』から『和漢朗詠集私注』へー 二 『和漢朗詠集私注』の方法 三 『和漢朗詠集私注』の変貌ー平安末期から室町期にかけての『和漢朗詠集』写本の動向と関連してー 四 鎌倉前期における和漢朗詠集注釈の展開ー『和漢朗詠集私注』から『和漢朗詠集永済注』『和漢朗詠註抄』へー 五 朗詠注における説話 附篇 一 『千載佳句』の部門の構成に関する考察ー冒頭の四時部を対象としてー 二 『和漢朗詠集』所引唐人賦句雑考ー出処と享受の問題を中心にー 索引 事項・書名・人名・題目・詩句・和歌
不朽の名作『魔法医師ニコラ』が明治の初翻訳で甦える。 実話怪談やら心霊やらが羞恥なく跋扈する偽りの無神世界に、この謎の医師の物語は、真の幽明と神秘に支えられた時代の愉しさを現代の読者に伝えてくれるだろう。 菊地秀行氏 列強が割拠する19世紀末中国に展開する大伝奇ロマンを、のちにシャーロック・ホームズを手がける南陽外史が主人公を日本人に変えて翻案した『魔法医者』が、読みやすい表記で復刊! 上海で孤独をかこつ日本人・三芳野文吾(みよしの・ぶんご)は、魔法医者としておそれられるドイツ人博士ニコラに招かれ、西蔵(チベット)を目指す旅に同行することになる。 狙いは、総本山に眠る大秘密。しかし、博士の妖術に、同行する中国人集団の暗躍が三芳野を惑わす。果たして、一行を待つものは……? 菊地秀行氏推薦の伝奇冒険小説の歴史的傑作! 原作を超える大冒険を語りつくす明治の名調子をそのままに、かな遣い等をあらため、現代でも読みやすい形で復刻。【電子・PODオリジナル版】
文学で読む、戦後女性の労働史 女中という仕事は、大正後期から昭和線前期にかけて最盛期をむかえ、1970年以降、高度経済成長期に姿をけした。 本書は、一般家庭に住み込みで働いていた「ねえや」、若い独身女性たちが登場する小説作品をあつめた、「女中文学」アンソロジーである。 小説に描かれた女中像に、戦後の女性の労働のあり方や、高度経済成長をささえた若い女性たちの姿を読むことができる。 由起しげ子「女中ッ子」 志賀直哉 「佐々木の場合 亡き夏目先生に捧ぐ」 太宰治「黄金風景」 李泰俊「ねえやさん」 大岡昇平「女中の子」 三島由紀夫「離宮の松」 林房雄「女中の青春」 深沢七郎「女中ボンジョン」 水上勉「ボコイの浜なす」 小島政二郎「焼鳥屋」 解説 阪本博志「小説に描かれた女中像を読み解く」
アウグスト賞受賞のスウェーデンの巨匠がおくる、北欧版『森の生活』。 リス、ミツバチ、キツネ、ワタリドリ、アナグマ… 詩人のコテージには、さまざまな動物たちとの出会いがあふれています。 著者はその出会いに触発され、その生き物たちの「言葉」を、 詩人の感性で受け取り、自然と生命への思索を広げてゆきます。 抒情豊かな文体で紡がれる、文学とサイエンスの新たな交差点。 「スウェーデン語で『アルファベット』を意味するbokstavは、 ブナ(bok)材に文字を刻んだことに由来する…… 書くことの目的は、未来へ向けて生命の本質を伝えることではないだろうか」(本文より)
●発売前重版決定!! めくるめく出会いの中で、「性」と「生」を赤裸々に描く、力強くも繊細な短編集。 恋、仕事、友人、家族……。淡々と生きてきたつもりが、導かれるように出会い、巻き込まれていくーー。ほのかに揺れる心と理不尽で理解の追いつかない状況を、冷静にも芳醇に切り取る女性「コスモ・オナン」の18の物語。 Web連載で大反響の作品に加え、書き下ろし一篇を収録。 16万部突破の『読みたいことを、書けばいい。』の著者・田中泰延がSNSで発掘した小説家、稲田万里のデビュー作! ●はじめから、この物語にはファンがいる。 「この小説を世に出すために、出版社をひとつ、つくりました。」田中泰延 株式投資型クラウドファンディングにてわずか27分で目標満額の4千万円を達成。個人投資家と合わせて358名から1億8千万円の出資を受けた出版社「ひろのぶと株式会社」からの、創業1冊目! プロローグ:新年一発 第一章 性欲 パイパン事件 坂道 下味 予習復習 第二章 恋心 夜のコール 前髪 立場 保険 忘年会 第三章 流転 サンドウィッチ 福袋 影響 金 第四章 上京 揺れ 誕生日おめでとう ずっと先まで歩こう 第五章 幼少 じゃがいも 第六章 一周 一周 エピローグ:だから書くことにした
美とおののきの短編アンソロジー。怖れと闇と懐かしさ。ムラタワールドの「短編愛」。短編はコロコロと手の上で転がしながら考える。うまく芽がでてすくすく伸びるとやがてひとつの「話」がひらく。