2022年4月14日発売
昭和10年代から戦後までの文壇の舞台裏を描く。-個々の作品が独立した短篇であることはいうまでもないが、連続性を意図して執筆したことも事実であった。いわゆる連作であるが、変則的な長篇といえるかもしれない。文芸雑誌「行動」の編集者だった時代を描いた「浮きつつ遠く」、二・二六事件前後の作家たちとの交流を扱った「その日私は」、戦時中の文人たちの姿を活写した「暗い夜の私」、戦後の雑誌界や日本文藝家協会について触れる「真暗な朝」など、年代ごとの文壇の様子や作家の生の姿が垣間見える秀作短篇集。他に「ほとりの私」「深い海の底で」「彼と」の計7篇を収録。
アメリカ最北端の町で繰り広げられる人間ドラマ。-彼等はみんなその祖先に流れ者の血を持っているので、流れ者に対して寛容であり、理解もあった。-命からがらの逃避行でロシアから逃れ、中国、そしてアメリカ最北端へと流れ着いたマリヤ。マリヤの飼う4頭のシベリア犬に飼い猫を殺されたにもかかわらず、友人づきあいをするアヤ。そのアヤは、前夫との子を連れ日本に一時帰国するが、元夫とはやはり心を通わせることができず、親子ともどもさみしい思いを抱いてアメリカに戻る。アヤとも知り合いのカルロスはスペイン、中米から自作のヨットで漂着し、そのまま居着いてしまった印刷屋の主人。ある日フェリーでやってきた東洋系の女性と知り合うが、彼女もまた、韓国系の母親と日本人の父親を持つ“漂流者”の一人だったー。第14回女流文学賞を受賞した名作長編。
今日は子供たちの研修遠足。子供たちが年に一度、人間界に行ける特別な日。大人にならなければ勝手に行くことができない人間界に行けることで子供たちの顔はみな、興奮して上気していた。ミエミエ草を食べると、妖精たちの体は倍くらいの大きさになって人間にも見えるようになり、言葉も交わせるようになる。けれど、そのためにはいくつもの注意事項があって、子供たちに重々言って聞かせるのだが、それを聞いていない子供たちがいて、大変なことが起きた…