2023年3月9日発売
早世した天才作家の珠玉の作品集。ミステリアスなショートショートから哲学的な匂いのする短中篇まで、精力的に作品を発表し高い評価を得ていたものの、34歳の若さで亡くなった山川方夫の短篇集。地方勤務から4年ぶりに本社に戻った妻帯者で事なかれ主義の男が、同期の女性に翻弄される「帰任」。憧れだった団地に入居したものの、その画一性に疲れ果て、極端な行動を取ろうとする「お守り」。相手の顔をまともに見ることができない内気な女性の大胆な行動を描く「箱の中のあなた」。下宿の外から聞こえてくる女性の軍歌に二人の男が惑わされてしまう「軍国歌謡集」など11作品を収録。
「植物学の父」とその糟糠の妻を描く。小学校中退ながら、ほぼ独学で植物の研究に生涯を捧げ、輝かしい業績を残した牧野富太郎と、想像を絶する生活苦にもめげず夫を支えた妻・寿衛子の生涯を、富太郎と同郷の著者が丹念に描く。裕福な商家に生まれた富太郎は、父母を亡くしたにもかかわらず、研究と趣味のため湯水のように金を使ったので、たちまち困窮。なおも高利貸しから借金を重ね、借金取りに追い回されるのが常態となる。そんななかでも、寿衛子は13人の子ども(成長したのは7人)を育て上げ、待合の女将として働き、富太郎の夢を叶えようとした。夫婦の手紙を紐解きながら、「植物学の父」とその糟糠の妻の素顔に迫った名作。
栃木県立那珂川水産高等学校は、内陸県にある日本唯一の水産高校。“脱普通”をもくろむ鈴木さくらは、淡水魚専門の水産高校“ナカスイ”に入学。青春を謳歌するはずが、鮎に恋する担任、魚ファーストの小百合、アニオタの地元ギャルかさね、釣りバカの渡辺ら、くせ者ぞろいで大打撃。水産実習では溺れかけ、おまけに少子化で学校は存続の危機。水没寸前、あるポスターが目に入り…。ナカスイの未来と青春をかけて、さくらは大勝負に挑む!
明治期に日本橋で創業の老舗マルトミ百貨店は、コロナ禍でメインバンクから追加融資を止められ、倒産の危機に瀕していた。憔悴しきった社長の富島栄二郎は、偶然にも四井商事の専務・徳田創と再会する。富島は若い頃四井で修業したことがあり、二人は同期だった。富島の窮状を聞いた徳田は同じく同期でプラチナタウンを作った山崎鉄郎を紹介する。藁にもすがる思いで山崎を頼る富島。同様の相談を複数受けていた山崎の中でそれらは化学反応を示し、再建案は思わぬ方向に向かい始めー苦況の日本を救う、目から鱗の再生構想とは!
とっとと嫁に行ってもらって、静かな余生を送りたいー万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介は、齢十一にして悩みが尽きない。かしましい三人の姉ーお瀬己・お日和・お喜路のお喋りや買い物、芝居、物見遊山に常日頃付き合わされるからだ。遠慮なし、気遣いなし、毒舌大いにあり。三拍子そろった三姉妹の近くにいるだけで、身がふたまわりはすり減った心地がするうえに、姉たちに付き合うと、なぜかいつもその先々で事件が発生し…。そんな三人の姉に、鷺之介は振り回されてばかりいた。ある日、母親の月命日に墓参りに出かけた鷺之介は、墓に置き忘れられていた櫛を発見する。その櫛は亡き母が三姉妹のためにそれぞれ一つずつ誂えたものと瓜二つだったー。
それからの『水滸伝』。民衆の英雄『水滸伝』の生き残りたちが、運命の糸にあやつられて再び大同団結し、戦いに斃れ、あるいは讒言によって殺された不運な兄弟たちの無念を晴らそうと、大陸と海を舞台に痛快極まりない縦横無尽の大活躍を繰り広げる。民衆の願望の中に今もなお生きつづけるこれら英雄たちの復活劇を、快テンポの筆で見事に活写した『水滸伝』の続篇。