2023年4月11日発売
東京の片隅、小さな二階建ての一軒家。庭に季節のハーブが植えられているここは、精神科医の夫・旬とカウンセラーの妻・さおりが営む「椎木(しいのき)メンタルクリニック」。キラキラした同級生に馴染めず学校に行けなくなってしまった女子大生、忘れっぽくて約束や締め切りを守れず苦しむサラリーマン、いつも重たい恋愛しかできない女性会社員、不妊治療を経て授かった娘をかわいいと思えない母親……。夫妻はさまざまな悩みを持つ患者にそっと寄り添い、支えていく。だが、夫妻にもある悲しい過去があって……。 目次 キャンベルのスープ缶 パイプを持つ少年 アリスの眠り エデンの園のエヴァ 夜のカフェテラス ゆりかご エピローグ
1936年、ロンドン。高名な心理学者リーズ博士が、自宅の書斎で何者かに殺されているのが発見された。現場は密室状態。凶器も見つからず、死の直前に博士を訪れた謎の男の正体もわからなかった。この不可能犯罪に、元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが挑む。
人生に疲れた40歳のファウストは、長年暮らしたミラノを離れてイタリアンアルプス近くのレストランで働き始める。山に囲まれ次第に人間らしさをとりもどしていたとき、狼たちが山からおりてきていたーー。ストレーガ賞受賞作家が描く、人生やり直し山岳小説。
小島に一人住む元医師の家が火事に 男はすべてを失ったうえ、放火の疑いをかけられる だがその後、周囲の島でも放火らしき家事が連続して発生・・・・・・ 〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉で人気の北欧ミステリの帝王最後の作品 一人孤島に住む、元医師のフレドリックは、就寝中の火事で住む家も家財道具もすべてを失う。その後警察の調べで火事の原因が放火であったことが判明、さらに自分の家に火を付けたと疑いをかけられてしまう。そんなとき、離れて住む娘のルイースから、パリで警察に捕まっているので助けて欲しいという電話が入る。フレドリックは単身パリに向かうが……。CWAインターナショナルダガー賞を受賞した、北欧ミステリの帝王最後の作品。
姉が弟の遺体を浄める。本来これは同性の仕事なのだが、姉は自分がやると主張したー。亡き弟の思い出を情感豊かに紡ぐ「浄め(グスル)」。アメリカの女の子として成長してきたアラブ系移民2世の“わたし”と、波乱の人生をおくった伯母の物語に、窓から飛び降りた女が女神と邂逅する幻想的な光景を織り込んだ「マナートの娘たち」。#MeToo運動以前の映画産業で、あるインターンの女性が受けたハラスメントを描き、問題提起する「懸命に努力するものだけが成功する」。新聞記事や手紙、メールの文章、リアリティー番組の台本やSNS投稿など虚実取り交ぜた多彩な媒体のコラージュで、フロリダで実際に起こったシリア・レバノン系移民夫婦のリンチ事件を核に、アメリカという国家に潜む暴力性や異質なものを排除しようとする人間の本質を浮かび上がらせる野心的な傑作「アリゲーター」。過酷な現実を生きる人々に寄り添い、多様な声を届けようとする全9篇。現代アメリカ文学の新鋭による鮮烈なデビュー短篇集!
【新連載】 名探偵の有害性 第1回 桜庭一樹 ●一世を風靡したかつての名探偵。わたしは彼の、助手だったーー直木賞作家が贈る最新長編! 【特集 舞台(ステージ)!】 ここにいるぼくら 近藤史恵 ●「キャス変」が、いかに大きな波紋を呼ぶか、ぼくはまったく気づいていなかった 宝石さがし 笹原千波 ●夢を諦めたデザイナーと、挫折を経験したバレエダンサー。ふたりが挑む新たなステージはーー おかえり牛魔王 白尾 悠 ●正しく目立つ、美しい同僚。空気を読まず、定時で颯爽と職場から消える彼女が、何より優先するものとは ダンス・デッサン 雛倉さりえ ●劇団に所属し、日々ミュージカルの舞台に立つ瀬木。心にはいつも亡くなった友人、理人の姿があった モコさんというひと 乾 ルカ ●二・五次元の観劇を生きがいにする真美。あるフォロワーの呟きに目が止まって…… 『007/カジノ・ロワイヤル』宝塚歌劇にて舞台化記念 特別インタビュー 宝塚歌劇団 宙組トップスター 真風涼帆 【小特集 読む、味わう、絶対ハマる!〈猟区管理官ジョー・ピケット〉の世界】 発砲あり C・J・ボックス 野口百合子 訳 ●広大な丘陵地帯でハンターの車が撃たれた。猟区管理官のジョー・ピケットが現場に向かうと……。大人気シリーズが短編で登場! 〈猟区管理官ジョー・ピケット〉シリーズの魅力 西部の大自然と心優しき正義の男 三橋 曉 ここだけの訳者あとがき 野口百合子 2023年6月刊行! 新刊 『Off the Grid』紹介 【小説】 明治殺人法廷 第4回 芦辺 拓 きみのかたち 第7回 坂木 司 特撮なんて見ない 第7回 澤村伊智 記憶の対位法 第4回 高田大介 ときときチャンネル#4【近所の異世界散歩してみた】 宮澤伊織 【特別企画】 第23回本格ミステリ大賞候補作決定! 第23回本格ミステリ大賞予選会選評・選考経過 日本推理作家協会賞の新部門「翻訳小説賞」スタート 【ESSAY】 私の小さな地図帖 その一 海へつづく道 山崎佳代子 装幀の森 第6回 アルビレオ 翻訳のはなし 第8回 仕事と締め切り 杉田七重 乱視読者の読んだり見たり 第6回 『ロリータ』と映画 若島 正 ホームズ書録 蔵書の価値に十年以上気づかなかった『怪人魔人』 北原尚彦 【COLUMN】 ひみつのおやつ*取引先からいただくお土産 なみあと 私の必需品*ブックカバー 砂村かいり 【INTERVIEW 期待の新人】 真紀涼介 【INTERVIEW 注目の新刊】 『赤い月の香り』 千早 茜 『花に埋もれる』 彩瀬まる 【BOOKREVIEW】
疎外された者の絶望と孤独を優しく照らし、 現代社会に問いかける小品集 私たちは生きるのに精一杯で、誰かの痛みに関心を持つことは難しい。でもその痛みはいつか自分に降りかかるかも知れない。困難な時代に痛みが弱者に集中せずに、分散して和らぎ健やかな社会へと向かうには、「他者」の痛みに寄り添う営みが必要だ。無関心は残酷さにも気付けないが、誰かに救われた記憶は、また誰かを救う。傷ついた記憶すべき人々を忘却から引き戻し共感へと引き寄せる、優しくも力強いこの短編たちが誰かの希望となり、強者に押し込められた孤独から、救う者と救われる者を護り照らす一筋の光になることだろう。 光の護衛 翻訳のはじまり モノとの別れ 東の伯の林 散策者の幸福 じゃあね、お姉ちゃん 時間の拒絶 ムンジュ 小さき者たちの歌 解説 彷徨う存在の記憶と光(文学評論家・韓基イク) 作家のことば 訳者あとがき