2024年2月7日発売
はか なく移りゆく濃密な生の営み。人生の三つの〈時間〉を川の流れる三つの〈場所〉から描く、生きとし生けるものを温かく包みこむ慈愛の物語。 * * *ひとが暮らすところには、いつも川が流れている。両親の離婚によって母親の実家近くに暮らしはじめた望子。そのマンションの部屋からは郊外を流れる大きな川が見える。父親との面会、新しくできた友達。望子の目に映る景色と彼女の成長を活写した「川のある街」。河口近くの市街地を根城とするカラスたち、結婚相手の家族に会うため北陸の地方都市にやってきた麻美、出産を控える三人の妊婦……。閑散とした街に住まうひとびとの地縁と鳥たちの生態を同じ地平で描く「川のある街 2」。四十年以上も前に運河の張りめぐらされたヨーロッパの街に移住した芙美子。認知症が進行するなか鮮やかに思い出されるのは、今は亡き愛する希子との生活だ。水の都を舞台に、薄れ、霞み、消えゆく記憶のありようをとらえた「川のある街 3」。〈場所〉と〈時間〉と〈生〉を描いた三編を収録。
俳優・長井短、初の小説集! 私たちは何度も同じ夜をなぞり続ける──。変わりたくないというピュアな願いが行き着く生への恐怖を描いた表題作に加え、アップグレードする時代についていけない女子高生を描く「万引きの国」、短編「犬山くん」を収録。
平成末期の2019年、神奈川県警の元公安刑事・吾妻仁志が爆殺された。吾妻が生前追い続けていた過激派組織“日反”の関与が濃厚だという。爆弾闘争を繰り広げた日反は幹部らの中東逃亡や内部分裂を経て、事実上の休眠状態だった。なぜ今になって?平成元年の1989年、横総大の学生・沢木了輔は吾妻の命を受ける形で、同大の日反組織を監視していた。接近したのが日反幹部の娘とされる月原文目だ。沢木は文目とともに警視庁と合同で立案されたプロジェクトに深入りしていくも、悲劇とともに計画は頓挫した。改元前夜、血塗られた30年前の計画に、公安刑事となった沢木が分け入ると官邸、警察、過激派、それぞれの思惑が絡まった国家の陰謀が見えてきた。相次ぐ関係者の死、行方をくらました日反幹部の出現、そして裏切り…ノンストップで展開する新時代のハードボイルド、ここに完成!
「彼は希望を育む術と地の果てまで絶望する術を同時に鍛えなければならなかった」 脱北者の青年ロ・ギワンの足跡を辿るなかで、失意と後悔から再生していく人びとの物語。 英語版・ロシア語版も刊行された話題作 映画原作のロングセラー、日本上陸 申東曄文学賞受賞作 「命がけで国境を越え、最愛の人を失い、生きるためだけに見知らぬ国へと流れ着いたここまでの道のり。 それが何の意味もなかったことを受けいれなければならない、氷のように冷たい時間。 彼は、懐かしさだけで故郷を思い出す甘い時間は、自分には今後いっさい訪れないだろうと悟った。」 単身ブリュッセルに流れ着いた20歳の脱北者ロ・ギワン。 希望を見いだせず、自分を否定する日々を送っていた放送作家の「わたし」は、雑誌で出会ったギワンの言葉がきっかけで、彼の足跡を辿る旅に出る。 オンライン配信映画、2024年公開! 「なにものにも置き換えることのできない感情は、一度も会ったことのない他者の人生を通じてよみがえることもある。 ブリュッセルに来て、ギワンの供述書と日記を読み、彼が滞在した場所や歩いた街を辿っている間、ギワンはすでにわたしの人生に入り込んでいた。 だからこそ、今度は彼にもわたしのことを、彼自身が介入しているわたしの人生を知ってもらおう。 ギワンがわたしの人生へと歩んできた距離と同じ分、わたしもまた彼に向かって歩んでいくべきなのだ。」 日本の読者の皆様へ ロ・ギワンに会った 原註 作家のことば 推薦のことば……キム・ヨンス 訳者あとがき