著者 : えとう乱星
殺生方は斬り捨て御免の殺生勝手。いつ、いかなる時、何を斬ろうとお咎めなしー。時は元禄、人々は五代将軍綱吉が下知した生類憐れみの令に困惑していた。将軍家の狩猟全般を取り仕切ってきた殺生方のお役目も、犬や猫などを殺生した者の取締りへと変節を余儀なくされた。父の跡を継ぎ、殺生方与力になった若宮隼人。その行く手に殺生方ゆえの苦難が待ち受けていようとは、心踊る隼人には思いもよらぬ話であった。
いつ、いかなる時、何を殺生しようがお咎めを受けるいわれはござらぬ。殺生お構いなし斬り捨て勝手の殺生方に新たな奉行がお目見えした。織部多聞、人呼んで“かぶきの多聞”。徳川の世も三代目にあたり盤石に見えたが、現世を憂える軍学者・由比正雪一党の企みによって、不穏な事件が相次いでいた。多聞もいつしか事件に巻き込まれていく。反骨のかぶき奉行が揮う剛剣ー柳生流兜割りが悪を断つ。
江戸市中に奇矯な行動をとる女たちが増えた。しかも、次々とその股間から子蜘蛛を産み落とすのだ。旗本子弟からなる尚義組と、美剣士、乾蓬莱之亮は、女を襲う蜘蛛の仕業と看破。童女のような謎の少女おねむと共に、理性を失った民と戦うが、その背後には恐ろしき物の怪の策謀があった。艶然たる風水師と化し戦うおねむも、ついにその罠に落ち、自失状態に陥る…。傑作伝奇時代小説の決定版。書下し。
土の龍と書いても所詮はもぐら。だがいつの日か雲を呼び風を起こして真の龍とならん。武士の世を終わらせ、技能者の世に-信玄の遺志を継ぎ、土龍組の旗印に結集した金掘り衆が、雇われて城を陥してゆく。
捕縛された隠れ切支丹が囁いた“ガラシア・オラショ”とは何を意味するのか。天童・天草四郎との関係は?細川藩が放った男女の密偵が切支丹一揆の真っ只中に潜入するが…。島原の乱を斬新な発想で描く、書下し長編時代小説。
時は徳川三代将軍・家光の治世-。現世を憂える軍学者・由井正雪の一党は、幕府転覆を企んでいた。江戸の町には不穏な事件が相次ぎ、殺生奉行の織部多聞も、その渦中に巻き込まれていくが…。時代小説界の新星が放つ傑作長編。