著者 : レベッカ・ウインターズ
「幻覚かと思ったが、やっぱりきみだ。髪を切ったんだね」アレッサンドラは実家の玄関で、見知らぬ来客に声をかけられた。ギリシア神話の絶世の美青年アドニスを彷彿とさせるその男性リニは、華やかで愛嬌のある双子の姉と彼女を勘違いしているようだ。姉は探し求めていた理想の王子様をとうとう見つけたのかしら?人違いだと言ってアレッサンドラはその場を去ったが、ほどなくして、リニは名門一族の生まれで、才覚、財力、容貌と三拍子そろった独身貴族だと耳にし、彼女は密かに胸を高鳴らせた。しかし、アレッサンドラはその恋心を抑えこむのに必死だった。男性は魅力的な姉のほうを好むから。もう傷つきたくないから…。
生まれたての赤ん坊が、なぜ白一色の吹雪のなかに!?その夜、病院の当直をしていた看護師メグは、筋肉質の魅力的な男性ゼインが必死に運んできた小さな命に驚いた。懸命な看病の甲斐あって、赤ん坊は一命を取りとめた。メグはもともと人一倍子供好きだったが、数年前に病のため手術を受け、子を望めない体になったこともあり、目の前の小さな患者にこの上ない愛着を抱くようになる。ゼインもまた、幼い頃に死に別れた双子の弟の面影を重ね、赤ん坊に弟の名をつけて、自ら里親になる決心を密かにしていたーそのために偽装結婚を持ちかけられるとは、メグはまだ知らなかった…。
その日、17歳のフルリーヌは名家出身のラウルに会いに出かけた。横暴な父親が許さないので服は不格好な白いワンピースしかなく、リボンも買えないために長い髪はとかすのが精いっぱいだったけれど。だがラウルは気にせず、「君が18歳になったら結婚しよう」と言って熱烈なキスをしてくれ、フルリーヌは最高に幸せだった。父親が現れ、猟銃を突きつけて彼女を連れ去るまでは。10年後、パリで再会したラウルはあの日の約束を忘れてしまったのか、華やかな女性とデートをしては世間を騒がせる億万長者となっていた。そんな彼に、意気地なしのフルリーヌはすっかり自信をなくしてしまう。そもそも二人は住む世界が違う。結婚を夢見た私がばかだったのね…。
若くして重い病におかされたゾーイにとって、治療の支援基金を創設したギリシア大富豪ヴァッソは命の恩人だった。火事で両親と住む家を失い、退院後の行くあてがない彼女に、ギリシアにあるヴァッソの基金で働かないかと誘いがかかる。実業家として有能で、思いやり深いうえにハンサムなヴァッソに、ゾーイは胸の高鳴りをおぼえずにはいられなかった。でも、またいつ病が再発するかもわからない私が、同じ病で父親を亡くした彼を愛していいはずがない。もしものことがあったら、お互いつらい思いをすることになるから。厳しい現実に打ちのめされ、ゾーイは身を引く決心をするが…。
幼いときに親と死に別れたレイナは、若くして結婚と離婚を経験し、二度と不実で傲慢な男性にはかかわらないと心に誓っていた。あるとき、親友の結婚披露宴のためにギリシアを訪れ、街で美神を彷彿とさせる黒髪の男性とぶつかりそうになった。ほんの一瞬だったのに、彼の顔はレイナのまぶたの裏に焼きついた。翌日、披露宴で花婿付添人を見た彼女は思わず息をのんだー昨日の彼!その正体は、ギリシア屈指の大富豪アキス・ジアノポウロスだった。宴の後、ホテルまでリムジンで送ってくれた彼に胸を高鳴らせる一方、レイナの心は沈んだ。また恋に落ちて傷つくのは、耐えられない…。恋心を戒めると、レイナは名も告げずに彼のもとから逃げ出した!
幼い頃から護衛隊長の父と宮殿で暮らし始めたアビー。ヴィンチェンツォ皇太子を慕っていたが、身分差は明らかだった。やがて彼が近隣国の王女と結婚したのを機に、密かな恋心を封印した。しかし28歳になった今、子宝に恵まれぬ皇太子夫妻のために、アビーは代理母として皇太子の子を身ごもっていた。不幸なことに妃は先日、不慮の事故で亡くなってしまった。彼を励ますためにも、元気な赤ちゃんを産まないと!だがアビーが宮殿にいられるのは出産までという契約。愛する皇太子との別れが、刻一刻と近づいていた…。『殿下に捧げる初恋』義姉を亡くしたアイビーは、勇気を出して義姉の婚約者だったデミアン・アリステデスを訪ねた。プリンスの称号を持つイギリス人の彼は、ハンサムだがどこか非情な雰囲気を漂わせている。彼の婚約者の義妹だとアイビーが自己紹介しても信じず、金目当ての女と決めつけようとした。「わたしのお腹には、あなたの赤ちゃんがいるのよ!」そう告げた彼女に、デミアンは言った。「ばかばかしい。君とは初対面なんだぞ!」この人は本当に義姉から聞いていないの?わたしが義姉の代理母として、プリンスの子を宿していることを。『愛に怯える花嫁』
私が養子だと、両親はなぜ亡くなる前に教えてくれなかったのだろう?それ以来、フランソワーズは本当の両親を必死にさがしてきた。だが探偵によると、情報は厳重に封印されていて調べようがないという。そんな彼女に手を差し伸べてくれたのが、ジャン・ルイだった。三つ子の億万長者の一人である彼は、女性たちの憧れの結婚相手であり、慈善活動にとても熱心な、高潔で思いやり深い男性でもある。ジャン・ルイになぐさめられ、両親をさがす力になってもらううち、フランソワーズの心はいつしか彼でいっぱいになっていた。でも、ジャン・ルイは誰にでも親切だ。私はそれを愛と勘違いしただけ。親の顔も知らない私を、彼はただ哀れんでいるにすぎないのに…。
不慮の事故で夫とお腹の子を一度に失い、悲しみのどん底で涙に暮れていたアビー。心の傷も癒えぬまま、独り身で海辺のリゾートに移り、店を開いて6年が経った。ある日、最近雇い入れた学生の父親で富豪のリックが現れ、娘の採用を取り消すようにと圧力をかけてきた。彼の不機嫌な態度に戸惑う一方、忘れていた恋の疼きが…。『さよなら涙』。エイミーが幼い息子をギリシアに連れてきたのは、父の顔を知らぬわが子にルーツを感じてもらうため。恋人だった外科医ニコに子供は欲しくないと言われ、別れて独りで産み育ててきたが、流産したと思っているニコはその存在さえ知らない。なのに、ニコと偶然再会するとは!皮肉にも、ニコと息子はあまりにも生き写しでー『命のかぎりの愛を』。ベリンダは双子の子供たちを連れて訪れたミラノで不運にも事故に巻き込まれ、救助に現れた救命救急医を見て息をのんだーああ、マリオ!4年前に純潔を捧げた相手。そして双子の父親。電話番号も名字もわからない彼に、妊娠を伝えられなかったのだ。幸か不幸か、彼は子供たちをベリンダの親友の子と勘違いしており…。『秘密の双子』。
アネリーズはパリにある会社に就職し、忙しい日々を送っていた。1度しか会っていないCEOのニコラと彼女が交際中だという、根も葉もない新聞記事のせいでパパラッチが押し寄せてくるまでは。彼はヨーロッパじゅうの王族が結婚相手に望むほどの大富豪だ。このままでは私の存在が迷惑になる。会社を辞めて田舎に引っこもう。ところがニコラはアネリーズを呼び出し、驚くべき提案をしてきた。記事を書かせた者をさがすため、彼の婚約者を演じてほしいというのだ。もちろん自分では分不相応だからと、アネリーズは断ろうとした。けれどニコラに手を握られ、黒い瞳で情熱的に見つめられるうち、唇はいつの間にか「はい」と言っていて…。
ベッラは8歳のころから、ずっと2歳年上のルーカに片想いをしていた。しかし、無謀なスキーで雪崩に遭った彼女を助けたせいで、ルーカが重傷を負って以来、10年間彼とは音信不通になってしまう。たとえ憎まれていると知るだけになっても、一度顔を見て話がしたい。兄の結婚式に現れたルーカに、ベッラは勇気を振り絞って声をかけた。そして涙を流しながら、過去の自分の軽率な行動を謝った。ルーカはそんな彼女に、不可解な表情で自分の脚に問題はないと告げた。彼はいつもそうだ。私を友人の妹で、幼なじみとしか見てくれない。それを運命の恋だなんて勘違いをして。ばかね、ベッラ。だが失意の彼女が立ち去ろうとしたとき、ルーカに唇を奪われて…。
獣医師のフランチェスカは愛犬とともに現れたヴィンチェンツォ王子をひと目見るなり、激しい恋に落ちた。しかし王子には婚約者がいたうえ、フランチェスカには秘密があった。実は私はあなたの婚約者のいとこだと、どうしたら言えるだろう?事情があって違う姓を使っているから、気づかなくても当然だけれど。それでも愛する男性に嘘はつけず、彼女は正直に告白した。ヴィンチェンツオはその勇気に感動し、婚約は先日破棄されたので問題はないと言って、それからも二人は会いつづけた。魅力的な彼と過ごせて、フランチェスカは天にものぼる心地だった。まさか、王子の元婚約者が妊娠したと言ってくるとは夢にも思わず…。
ギリシア、イタリア、スペインが生んだ美形ヒーローとの、もどかしい恋物語3選!美しきギリシア人のアレックスと仕事をして2年。美人の恋人がいると噂の世慣れた彼を愛してしまったリースは、大きな決断をしなければならなかった。職を辞し、彼にさよならを告げるのだ。振り向いてくれないのにそばにいるのはつらすぎるから。夜ごと涙で枕を濡らし、いよいよ決心したリースは、最後の仕事へと向かうが…(「愛のシナリオ」(レベッカ・ウインターズ))。失恋旅行でローマへ来たシャーロットがホテルのバーで嘆息していると、魅力的な長身男性が隣に座った。「君、大丈夫?」優しい言葉をかけてきた裕福なイタリア人のルチオに惹かれ、身も心もゆだねるが、眠っている間に彼は忽然と姿を消したー“すてきな夜をありがとう”と書き残して。数週間後、彼女は妊娠に気づき…(「トレヴィの泉に願いを」(ルーシー・ゴードン))。弟が作った借金に頭を抱えるリアの前に、半年だけ恋人だったスペイン人実業家のアレハンドロが現れた。1人の女性と長続きする関係を持てない彼を本気で愛するようになってしまったリアは、ぼろぼろになる前に自ら身を引いたのだった。しかし今、彼は借金を肩代わりする見返りに、またベッドを共にするよう要求してきた!(「情熱の取り引き」(トリッシュ・モーリ))
“ママが死んでしまってそばにいないから手術はこわいけど、手術でぼくの頭痛をなくして、パパをまた幸せにしたい”病の少年の手紙を読んで、慈善財団で働くギャビは胸がつまった。少しでも支えになりたい一心で幼い少年を訪ねると、そこは世界的な富豪一族の当主ルカ・ベレッティーニの家だった。父親のルカは不在だったが、ギャビは少年と祖母に迎えられ、病をしばし忘れられるよう、楽しい時を過ごした。ただ、この子の手紙のことはルカには秘密よと祖母に釘を刺されるーいつも不幸せそうだと子供に思われていると知れば傷つくから、と。だが翌日、少年と同じ黒髪碧眼のルカが、突然ギャビの職場に現れた!
“妊娠”を示す検査薬の結果を見て、ステファニーは呆然とした。相手は、3カ月前に旅先で出逢った、カリスマ性漂う男性ーたちまち彼の虜になり、生涯忘れられない一夜を経験した。だが翌日、別れのメッセージを残し、彼は忽然と消を消したのだった。父親を知らずに育った彼女は、わが子に同じ思いをさせたくなかった。あらゆる手を尽くし、ギリシアの地でようやく再会を果たすが、そこにいた彼は、まるでステファニーの知る彼ではなかった。彼女が愛した男の正体は、富豪一族の御曹司、ニコス・ヴァサロス。驚きも冷めやらぬなか、辛辣な言葉がステファニーの胸に突き刺さった。「金持ちと寝て妊娠するのが狙いだったのか?」。
結婚半年の記念日の朝、サン・ヴィターノ王国の皇太子妃ルーナは、王家所有の金鉱視察に赴く夫リーニと別れのキスを交わした。昨夜、妊娠が判明し、彼女は幸せの絶頂にあった。夫が帰宅したら、この朗報を伝えて特別な日を祝おう…。だが彼は帰ってこなかった。地震による落盤事故に巻き込まれて。打ちひしがれながらもルーナは夫の死を受け入れ、気丈にもほかの犠牲者の弔問のため隣国まで足を延ばした。そして、奇跡が起きた。病院で治療中のリーニを発見したのだ。「君は誰だ?いったい僕は何者なんだ?」ルーナの喜びは一瞬で消えた。夫はすべての記憶を喪失していた。
ブレアは元婚約者のアリクに会いに、ニューヨークを訪れたー生まれたばかりの、彼に生き写しの息子を連れて。1年前、学生だったブレアは、13歳年上で大富豪一族出身のアリクと恋におちて婚約したものの、やむなく身を引かなくてはならなくなった。ある人物に脅されたから、とは口が裂けても言えなかった。彼と別れたあとに、おなかに赤ちゃんがいるとわかったことも。でも、こうしていま会いに来たのは、彼の黒髪とオリーブ色の肌をみごとに受け継いだ息子の存在を黙っているのは罪だと思ったから。純粋にそれが目的と示すため、婚約者がいることにしたブレアに、アリクは告げた。「これから1カ月、君は僕と一緒にここで暮らすんだ」
ジャネットは仕事で訪れたオフィスで、10年前に突然別れを告げて姿を消した元婚約者のウェイドと偶然再会し、息をのんだ。だが今や大企業の辣腕社長となった彼の冷酷な態度に衝撃を受け、ジャネットはその場から一目散に逃げ出した。すると翌週、ウェイドが彼女の職場に乗り込んできて、吐き捨てるように言った。「聞かせてくれ。いったい何人の子をベビーシッターに預けてきた?」彼は何を言っているの?いわれなき疑いに、ジャネットは呆然とした。「君は僕に愛を誓いながら、平然とほかの男と結婚するような女だ!」ひどいわ…。あれからずっと、結婚はおろか、誰ともつき合わず、彼のことを思い出して涙で枕を濡らす夜もあったというのに…。
「僕は昔、君と宮殿で遊んだアレックス。行方不明のヘレニア王子だ」長身で黒髪の男性がー途方もなく美しい男性が静かに告げた。金髪碧眼の変装を解いた彼の姿に、ジャンニーナは呼吸を忘れた。3年前、出会った瞬間に私の心を奪い、突然去っていったフィリップが、アレックスー少女の頃に憧れていた黒い瞳の王子様だったというの?ある命の危険から身を隠さなければならなかった日々が終わった今、アレックスはヘレニア国に新国王として迎え入れられるらしい。彼は積年の嘘と不義理を謝罪し、ジャンニーナに求婚した。私が愛していたのはフィリップだし、平民の私が王妃だなんて…。あまりの出来事に混乱し、ジャンニーナの意識は遠のいた。
「2年間の兵役に就くけど、待っていてくれ。毎日手紙を書くよ」17歳のアレクサはギリシア海運王の御曹司ニコを信じて待ちわびた。けれども手紙は1通も届かず、悲嘆にくれるなか、彼女は親代わりだった祖父の転任先であるカナダへと発った。わたしは初めて愛を捧げた人に、だまされたということね…。ほどなく妊娠が判明し、アレクサはニコに知らせずに出産したのだった。月日は流れ、ある夜、18歳になった娘の恋人の家に招かれた彼女は、夕食の席に現れたギリシア神さながらの男性を見て、失神しかけた。ニコ!どうして、あなたがここに?我が子と知らずに娘と話す彼の姿に、アレクサは残酷な運命を呪った。