著者 : 三須祐介
亡霊の地亡霊の地
同性愛者として生きることへの抑圧から逃れるため、台湾の故郷の村、永靖を離れ、ベルリンで暮らしていた作家の陳天宏は恋人を殺してしまう。刑期を終え、よるべのないドイツから、生まれ育った永靖に十数年ぶりに戻って来た。折しも中元節を迎えていた故郷では、死者の魂を迎える準備が進んでいた。天宏のいなくなった両親と結婚した姉たち、狂った姉、そして兄。生者と死者の語りで、家族が引き裂かれた理由と天宏が恋人を殺した理由、土地の秘密、過ぎ去りし時代の恐怖と無情が徐々に明らかになっていく。2020年、台湾文学賞金典年度大賞と金鼎賞文学図書賞を受賞。2022年秋、ニューヨーク・タイムズから「最も読みたい本」に選出された、最注目の台湾の若手作家が贈る慟哭の物語。
次の夜明けに次の夜明けに
台湾の新世代作家の一人、徐嘉澤。本作が本邦初訳。一九四七年、二二八事件に始まる台湾激動の頃。民主化運動で傷つき、それまでの生き方を変えなければならなくなった家族。新聞記者の夫とともに、時代の波に飲まれないよう、家族のために生き、夫の秘密を守り続けて死んでいった春蘭。残された二人の息子、平和と起義は、弁護士と新聞記者として民主化とは、平和とは何かを追求する。起義の息子、哲浩は、歴史にも政治にも関心がなく、ゲイだと告白することで一歩を踏み出す。三代にわたる家族の確執を軸に、急激に民主化へと進む時代の波に翻弄されながらも愛情を深めていく一家の物語。
太陽の血は黒い太陽の血は黒い
おれは見たんだ。太陽がゆっくりゆっくりゆっくりと緑色に変わっていくのを。そして黒い血が流れ出てくるのを…台北の浮薄な風景に傷の記憶のゆらぎをきく、新たな同時代文学への試み。
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