著者 : 柿沼瑛子
ある朝、ふと目にとまった〈俳優、死亡〉の記事-。俳優エリック・タールは、幼い僕を捨てて去っていった父だった…。死の謎を追ってさすらう少年アランが出会う、かつて父を愛した、そして父が愛した男たち。父の航跡をたどるうち、少年はいつしか悲しい愛のかけらを手にしていた…。
エイズで逝った彼は、15歳年下のぼくを誰よりも深く愛してくれた…。残された者のかぎりない喪失の悲しみを繊細に描くアメリカ新世代ゲイ作家の感動のラブ・ストーリー。
出会いは7月最後の朝。麻薬がらみの罪状が示すとおり、彼はどこか憔悴感を漂わせていた。だが、瞳に宿る真摯な光がわたしを捉えた。わたしたちは運命のようにささやかな交情を持ったが、季節が秋にうつる頃、ひとつの別れがわたしを待っていた。己れの愛と矜持を賭けて闘うゲイでヒスパニックの弁護士リオス。ゲイ・ミステリ版『長いお別れ』と評される現代ハードボイルドの傑作。
ニューヨークの喧噪を離れ、ペンシルバニアの片田舎で、執筆活動のかたわら夫や息子と穏やかに暮らすことを夢見たイーディス。だが、夫の伯父ジョージの突然の闖入によってその夢は脆くも崩れ去ってゆく。そんなときイーディスに残されたものは、一冊の厚い日記帳だけであった。やがて彼女は日記に描かれたもう一つの別の世界、彼女自身の幻想を生きはじめる…。
寝たきりの生活を続ける伯父ジョージと成人後も無気力でまったく働く気のない息子クリッフィー。息のつまるような現実のなかで、イーディスは次第に自らの狂気に陥ってゆく。やがて彼女は日記に記す…。「現実と夢の世界との差は、耐えられない地獄だ」。ハイスミスが現代の“狂気”を冷たく、乾いた筆致で描き切った傑作、待望の翻訳刊行。
匿名の中傷文の執筆にいそしむ偏屈な老人、マフィアにコネがあると称する9歳の悪ガキ、寄る年波に必死の抵抗を試みる美貌の未亡人ー。こうした登場人物の入り乱れるなか、ある日2人の男女が失踪する。駆け出し弁護士アラゴンをも巻きこんで、物語は予想外の方向へ…。カリフォルニアのとあるビーチ・クラブに展開する恐ろしくもユーモラスな悲劇の顛末。鬼才の異色サスペンス。
父親の代から資産家で、趣味として印刷所を営む物静かで実直な夫、ヴィクター。一方、美しく奔放な妻、メリンダは、彼とのあいだに娘までもうけながら、次々と新しい男友達を家に誘い込む。やがて、二人のわずかな関係の軋みから首をもたげる狂気と突発的に犯される殺人。郊外の閑静で小さな町を舞台に、現代人が、かかえこまざるを得ない分裂症的な病理を、一人の男の心理と行動を通して、イメージ豊かに、また冷徹に描き出した、ハイスミスの傑作長編。
思いたってメキシコ旅行に出かけたエイミーとウィルマ。ありふれた旅路となるはずだったが、滞在なかばウィルマがホテルのバルコニーから墜ちて死んでしまう。居合わせたエイミーも、そのときの記憶を欠いたまま失踪。一体そこで何があったというのか?調査の依頼をうけた私立探偵ドッドは失踪人の身辺を探るが…。鬼才が放つ緊迫のサスペンス。
チベット自治区の一郭を占める孤立の地、ギャンカーラ。今この一帯を、反共武装ゲリラの一団が跳染していた。首領と目されたのは、数年前CIA工作員として撹乱行動に従事中死亡したはずの男。だが中国政府はこれを受け入れず、米国の侵略行為と断じて、締結寸前の科学技術協定を破棄する構えに出た。困惑した米国政府は、真偽を確かめるべく男の妻トレイシーを現地に送りこむが…。大自然の彼方、トレイシーは果して何を見たか?
1週間後には死刑が執行される婚約者の無実を証明してほしい-状況からいってもあまりにもきびしい仕事だ。だが、私立探偵アロー・ナジャーは、不思議な魅力を持つ娘キャンディ・アンのたっての頼みを聞き入れることにした。依頼人の婚約者カーティス・コルトは、酒屋の主人の妻を殺した廉で逮捕されていた。ナジャーは目撃者を訪問し、事件の再構成を始めた。が、何者かが彼を尾け回しはじめたばかりか、目撃者の一人が飼猫を惨殺され、無言の警告を受けるという出来事まで起ったのだ。真犯人が別にいるとの確信を強めたナジャーは、身に迫る危険に怯えながらも事件の裏に隠された秘密に近づいていったが…?人間味溢れる探偵ナジャーの魅力がますます輝く第3作。
探索の旅は終わった。世界を支配できる力を秘めた〈アルダーの珠〉を奮取し、ガリオンはリヴァ王となってセ・ネドラ王女と結ばれた。すべてこれらのことは時の始まりより定められていたこと。そして今、〈予言〉が語るように、ガリオンは邪神トラクとの最後の対決の途上にあった。だが、彼は暗澹たる思いに閉ざれるばかり。自分の意志とは無関係に王にされ、あげくのはてにトラクを倒せという。だがしかし、果して死すべき人間に神を打ち負かすことなどできるのだろうか…。全米でベストセラーを記録したエピック・ファンタジイ、堂々完結。