著者 : 池央耿
月に一度開かれる“黒後家蜘蛛の会”の謎解きの宵は、名給仕にして名探偵であるヘンリーのもてなしさながら、読む者すべてに心地よいひと時をもたらす。本書には、愛書家が一万冊以上の蔵書の中から遺贈した一冊の本を当てる「三重の悪魔」、著者の実体験をそのまま作品化した「待てど暮らせど」、いっぷう変わった密室の謎に挑戦する「秘伝」など、さまざまな趣向の12編を収録。
六人の教養自慢と給仕一名が集い、美食と雑談を楽しんだのち推理合戦を行なう。この様式美を長年貫く“黒後家蜘蛛の会”も、ときには例外に遭遇する。シリーズで唯一、女性が謎を持ちこむ「よきサマリア人」や、突然押しかけてきた客人の悩みを解決する「飛入り」など、第4巻には変わり種エピソードを収録。不測の事態にもヘンリーの給仕と推理の神業ぶりは決して揺るがない!
“黒後家蜘蛛の会”には数々のお楽しみがあるー会員たちによる丁々発止の会話、ゲストが食後に提供する多様な謎、そしてその難問を見事に解決する偉大なる給仕へンリーの名推理が。黄金パターンを確立した、殿堂入りの連作ミステリ短編集第3巻には、火星や日蝕の様相など科学の領域から、アメリカ大統領にまつわるトリビアまで、多岐にわたる分野に材を取った全12編を収録。
六人の知的エキスパートと給仕一名からなる“黒後家蜘蛛の会”の晩餐会では、決まって難問・奇問が取りあげられる。会員たちが匙を投げた問題を鮮やかに解き明かすまでが、万事控えめな名給仕ヘンリーの役目なのだ。ミステリ愛にあふれた連作短編集の第2巻には、著者アシモフ自身がモデルのゲストが登場する話や、ホームズ物語が秘めた謎に挑戦する話など、全12編を収録する。
“黒後家蜘蛛の会”の会員ー弁護士、暗号専門家、作家、化学者、画家、数学者の六人、それに給仕一名は、月一回“ミラノ・レストラン”で晩餐会を開いていた。食後の話題には毎回不思議な謎が提出され、会員が素人探偵ぶりを発揮する。ところが最後に真相を言い当てるのは、常に給仕のヘンリーだった!SF界の巨匠が著した、安楽椅子探偵の歴史に燦然と輝く連作推理短編集。
スパイ容疑で逮捕されたフランス亡命貴族のロンドンでの裁判。とある医師の娘が証人となり、弁護士の奇策もあって被告は罪を免れる。一方パリの居酒屋では血腥い計画が着々と練られ…。二つの首都の間で絡み合った因縁の糸が解けていくなか、革命の足音が近づいてくる。(全2巻)
ルーシーと結ばれロンドンで幸せな家庭を築いたダーネイだが、元の使用人を救うべくパリに舞い戻るや、血に飢えた革命勢力に逮捕されてしまう。彼の窮地を救うため、弁護士カートンは恐るべき決断を下す…。時代のうねりの中で愛と信念を貫く男女を描いた、ディケンズ文学の真骨頂。
キングとツァラプキン。境遇の異なる若きテニス世界ランカーは、試合を通じて意気投合し親友となった。彼らは互いに高めあい、やがてともにウィンブルドン選手権への出場を果たす。だが、その世界一の大舞台では、ある大胆な犯罪計画が実行されつつあったー。青年たちの友情を軸に、白熱する試合と犯罪の行方を描いて手に汗握らす、極上のスポーツ小説にして大傑作ミステリ!
どん底の境遇のなかで謹厳実直に物を書き続けて三十余年。不意に多少の財産を手にしたライクロフトは、都会を離れて閑居する。四季折々の自然の美しさに息を呑み、好きな古典文学を読み耽りながら、自らの来し方を振り返る日々-味わい深い随想の世界を心に染みる新訳で。
職業医師として、年来、私は性的強迫観念が色濃く滲み出た情事の破局に関心を懐いている-本書の語り手、ピーター・クリーヴはそう語る。1959年の夏、精神科のマックス・ラファエルはロンドンからうらさびた土地にある、堅固な精神病院に副院長としてやってくる。並外れた美貌と知性をもちながらも孤独な彼の妻ステラは、そこで、狂気の彫刻家、危険な入院患者であるエドガー・スタークと宿命的な出会いをする。堰を切ったように情事に走る二人。そして作中人物たちはそれぞれに自らの悲劇を手繰り寄せていく…。
ボーイはメイル夫妻に拾われた実在の犬である。素姓も知れぬ野良犬だったが、すぐに特異な才能を発揮し始め、同家の看板ともいうべき存在となった。本書は、ピーター・メイルが愛犬ボーイの口を借りて人間と現代社会を思う存分に論じた文明戯評である。イギリス的ユーモアと辛辣な観察に満ちた抱腹絶倒の物語でもある。全米一のイラストレイターの挿絵も話題。
美食を愛し、色を好むラテン気質の愛犬ボーイは、また何時間でも蟻を眺めて過ごすデカルト流の内省的な性格も持つ。彼の目にうつった“人間、この不可思議なるもの”の物語。『南仏プロヴァンスの12か月』の著者がユーモアたっぷりに綴る“豊かな人生哲学とは”。
暴風雨に襲われたカンザス・シティ空港。乗客を乗せた最新鋭のハイテク旅客機が着陸に失敗、離陸を待っていた別の旅客機と衝突した。事故機には極右で知られる議員も乗っており、破壊工作の疑いもある。国家運輸安全委員会の主任調査官ウォーリングフォードは即座に現地に飛び、操縦ミス、天候など各方向から事故の分析を開始。だが原因究明に必要なヴォイス・レコーダーは、いくら探しても残骸から発見できなかった。
ハイテク機の操縦システムは強力な電磁波を受けると誤動作を起こす弱点があった。事故当時、現場には空軍の高性能レーダーがあったが、惨事直後、強引に持ち去られていた。このレーダーが事故の原因なのか。一方、ついに発見されたヴォイス・レコーダーにより、事故直前の機長と副操縦士の緊迫したやりとりが明らかになるが…。航空機事故の権威がハイテク化の進む民間航空の最前線に潜む危険を描破したベストセラー。
フレッド・フィッチは詐欺師に騙されてばかりいる不運な男。そんな彼に、顔も知らない叔父の遺産がころがり込んできた。だが叔父は詐欺の名人で、誰かに殺されたことがわかった。やがて怪しげな人々が現われ、彼は命まで狙われるはめに、このとんでもない事態をいったいどうるのか。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した酒落た笑いのミステリ・