著者 : 長山靖生
幽幻の魔鏡が映し出す艶やかな怪美と畏怖。オリジナル・アンソロジーで再発見。幼少期からの幻惑と、初春から梅雨、夏を経て秋、そして冬へと至る四季の行事情景に沿いながら蒐められた作品群。
私小説的悲愴と空想的跳躍の錬金術的混合物!大正時代から昭和初期にかけて、「小作家」と称された牧野。彼が生み出した結晶のような詩文は、ある種の人の心に深く残り、人生を歪めもすれば救いもした。悲しみと羞恥を引きずりながらも、精いっぱい夢想の中に遊んだ作品群に、耽溺したい!
日常という名の虚偽に人一倍敏感だった坂口安吾は常に自分の現実を物語に変容させた。そう、安吾のファルスは現実を一度完全に解体してナンセンス化し、再構成する知性の働きが秀逸なばかりでなく、不条理でありながら拒絶よりも許容する雅量が光っているのだ。急き立てられるように書き続け、陶酔と分析、あくまで解剖する視線を失わない孤独の深淵を描いた作品群に、耽溺したい!
思想としての本格指向と、資質としての変格嗜好に引き裂かれる部分を持ちながらも、双方を排斥しあうことなく交錯し蝕知させる作品群。オリジナル・アンソロジーで再発見。
初期の耽美主義、怪奇、犯罪探偵趣味、私生活的幻想ー美意識や情念や生活に基づかない思想は、真に思想たり得るのか。自己の欲望に忠実で、かつ總明で勤勉な人間だけが到達できる洞察力を通し、見出された真実が描かれる。文学の魔窟へご招待。
オリジナル・アンソロジーで再発見。悲愴と滑稽、恍惚と不安が同居し、正義と不実、真面目と怠惰の価値が反転するー。虚構と詭弁に溢れながらも、悲しい真実と痛切な純真が描かれる太宰治の傑作選!
謎とは何であるか。100年前の1920年、「新青年」創刊。文学の先端で、探偵小説とモダニズムの共鳴がはじまったー!乱歩、横光、小酒井不木、堀辰雄、甲賀三郎、萩原朔太郎、海野十三、夢野久作…戦間期日本の想像力を代表する名作の数々を集成。
堀辰雄、芥川龍之介、室生犀星、太宰治、宮沢賢治、左川ちか、中原中也、夏目漱石…。飲み物が香る、甘く潤いの物語!文豪たちがこだわった、飲むという官能的な小説の世界を読みやすい現代仮名遣いで!
「謎解き」と「解かれざる神秘」芥川龍之介がこだわった二重の意味のミステリ。犯罪、探偵、風刺、幻想、神秘、そして心の声が現代仮名遣いによって甦る!
多くの理想を抱えた作家であり知識人だった横光利一の今読んでも眩しいぐらいの傑作群!溢れんばかりの新しさ、純粋知性、真心、清廉、高潔が、現代仮名遣いによって甦る!横光利一の名前は新感覚派というレッテルと共に語られることが多く、日本の文壇、文学史では異端の刻印という側面もあった。モダニズム文学は当時の文壇文学の重鎮たちからは若者による奇を衒った一時的流行と見られがちだった一方、プロレタリア文学派からはブルジョワ的であると非難された。横光はそうした両面の無理解を真正面から受けて立ち、真に新しい文学の王道を拓くべく、実作と文学理論の双方で苦闘していたのである。
「廃墟趣味」に溢れた佐藤春夫の柔軟自在でありながら強靱な物語!現代仮名遣いによって甦る稲垣足穂、山之口獏、太宰治、堀口大學との交流秘話小説。佐藤春夫を一言で表せば「ノンシャラン」。ふつう「無頓着」とか「暢気」とか「だらしない」とか、褒め言葉には向かない語だが、でも「そういう気楽さで暮らせたらいいな」とちょっと憧れてしまうところのある境地を指す。都市文化に蔓延していた大衆に迎合せず、時流に迎合してふらふらしてしまう世間一般に比べたら、まことに凛としていたし、「ここではない何処か」を常に求めていた「ノンシャラン佐藤春夫」の小説世界が新たに。
鴎外がビールに、荷風がウイスキーに託した思いとは?本書は酒が様々なイメージで登場する傑作を厳選。古今東西、人類の友である酒になぞらえた憧憬や哀愁は今でも現代人を魅了し続ける。近代文学に足跡を残した漱石、露伴、安吾、谷崎、太宰ら16人の作家と白秋、中也、朔太郎ら9人の詩人、歌人による魅惑のアンソロジー。
北原白秋、萩原朔太郎、中原中也、立原道造、高村光太郎…詩人たちの「詩想」あふれる小説の世界!これまであまり知られなかった瑞々しい詩人の小説の世界を読みやすい現代仮名遣いで!
『風立ちぬ』などのサナトリウム文学のイメージを一新するように、堀の初期の作品には、しばしば天使や妖精が出てくる。空を飛ぶイメージと共に、水の中を漂い泳ぐイメージを伴う作品も少なくない。そのいずれにも軽やかな浮遊感がある…。新仮名遣いで甦る摩訶不思議な世界。