著者 : 太宰治
ああ、私は一体、何を待っているのでしょう。毎日、毎日、駅にまだ見ぬ人を迎えにいく女性。今日も彼女は、駅の冷いベンチに坐っている。太宰治の名作が、乙女心をくすぐる作品で知られ本シリーズでは太宰治『女生徒』を担当するイラストレーター・今井キラによって、鮮やかに現代リミックス。人気シリーズ「乙女の本棚」の第30弾が登場。小説としても画集としても楽しめる魅惑の1冊。
オリジナル・アンソロジーで再発見。悲愴と滑稽、恍惚と不安が同居し、正義と不実、真面目と怠惰の価値が反転するー。虚構と詭弁に溢れながらも、悲しい真実と痛切な純真が描かれる太宰治の傑作選!
旧家に生まれた者の“暗い宿命”を描いた太宰治「私小説集」。明治四十二(1909)年六月、太宰治こと津島修治は青森県北津軽郡に誕生、のちに遠く東京にあって望郷の念を募らせていた。太宰は、津軽での幼・少年期を“遺書”のつもりで書き綴った処女作「思い出」で文壇デビュー。その後、兄との不和から十年ぶりとなった帰郷を描いた「帰去来」、母危篤の報を受けての帰郷を描く「故郷」、そして、時局差し迫る中での津軽旅行をまとめた「津軽」と、旧家に生まれた者の暗い宿命を描いている。前四作品に加え、名作「富嶽百景」を含む太宰の私小説で構成したアンソロジー集。解説を同じ東北出身の作家・佐伯一麦氏が特別寄稿。
大きな電気工場から大金を盗み出した紳士盗賊は、捕まった後も金のありかを白状しなかった。一方、私は同居人の松村から、ちょっと変わった二銭銅貨の出どころについて執拗に問いただされる…。(「二銭銅貨」江戸川乱歩)。乱歩、横溝正史、夢野久作らが書き継いだ合作、妖婦蘭子の魔性の生涯を描く「江川蘭子」ほか、シェイクスピア、太宰治など「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズで紹介された古今東西の名作を厳選収録。
敗戦後の昭和二十年代、そして高度経済成長と新左翼運動の昭和四十年代。世を根底から疑い、これに背を向け、あるいは反逆しようとする「デカダン文学」なるものが、とりわけこの二つの時代を中心に現れ出た。頽廃、厭世、反倫理、アナーキー、およびそこからの反転。昭和期のラディカルな文学的実践十三編を照射し、その背後に秘められた思想的格闘を巨視的に読みなおす。
昭和十九年五月、津軽風土記の執筆依頼を受けた太宰は、三週間かけて津軽地方を一周した。生家と義絶して以来、帰るのを憚っていた故郷ー。懐かしい風土と素朴な人柄に触れ、自らにも流れる津軽人気質を発見する旅は、「忘れ得ぬ人たち」との交歓の日々でもあった。やがて、旅の最後に、子守・たけと三十年ぶりに再会を果たし…。自己を見つめ直し、宿命の地・津軽への思いを素直に綴った名紀行文。
これまで高校国語教科書に掲載されたことのある太宰治の短編小説集。教科書に準じた注と図版がついて、読みやすく分かりやすい。解説として、著名な太宰論も収録。