出版社 : 亜紀書房
職場でのあらゆるハラスメントに疲れきり、常日頃、屋上から身を投げたいという衝動に駆られる“私”。拠り所は三人の女の先輩だけ。ある日、先輩たちから渡されたのは、古くから受け継がれてきた絶望から抜け出すための「呪文書」だったが…(「屋上で会いましょう」)結婚・離婚・ハラスメント・突然死ー現代の女性たちが抱えるさまざまな問題や、社会に広がる不条理を、希望と連帯、やさしさとおかしさを織り交ぜて、色とりどりに描く9作品を収録。韓国文学を代表する人気作家チョン・セラン、初めての短編集。
戦争で夫を亡くし足のケアサロンを営むペイジ。斜向かいに住む大学教師ベンの密かな楽しみは、ペイジの生活の一部始終を観察することだった。ある日ベンは、意を決し初めて店を訪れる。足を洗ってもらっているあいだに、ひとり語りを始め、忘れ得ぬ事故のことを打ち明けるベン。悲惨な体験を通して、孤独な二人の心は結びつくのだが…(「初心」)。人生の情景が鮮やかに浮かび上がる、めくるめく10篇。
十六の夏に出会ったイギョンとスイ。はじまりは小さなアクシデントからだった。ふたりで過ごす時間のすべてが幸せだった。でも、そう言葉にすると上辺だけ取り繕った嘘のように…(「あの夏」)。誰も傷つけたりしないと信じていた。苦痛を与える人になりたくなかった。…だけど、あの頃の私は、まだ何も分かっていなかった。2018年“小説家50人が選ぶ“今年の小説””に選出、第51回韓国日報文学賞受賞作。
養護教諭のアン・ウニョンが新しく赴任した私立M高校。この学校には原因不明の怪奇現象や不思議な出来事がつぎつぎとまき起こる。霊能力を持つ彼女はBB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かう。はたしてM高校にはどんな秘密が隠されているのか…。斬新な想像力と心温まるストーリーで愛され続けるチョン・セランの魅力が凝縮した長編小説。
ネット古書店でエゴサをしていたら、サイン入り自作が売りに出されていることに気づいた作家「イ・ギホ」。しかも他の作家の本より格安、酷評のコメント付きだった。悶々として眠れぬ彼は、出品者に直接会おうとはるばるでかけるのだが…。(「チェ・ミジンはどこへ」)。「あるべき正しい姿」と「現実の自分」のはざまで揺れ、引き裂かれるふつうの人々を、ユーモアと限りない愛情とともに描く傑作物語集。
キャロルの手紙や日記、歴史資料や学問的解釈etc…を駆使して付けられた、300以上の注釈を収録。これまで世界中の画家が描いてきた100枚以上の「アリス」挿絵を精選収録。公刊された「アリス」からは削除された幻の「かつらをかぶった雀蜂」挿話を復元収録。テニエルの貴重な鉛筆ラフスケッチも収録。
世界中で愛される漫画を終生描き続け、桁違いの成功を収める一方で、常に劣等感にさいなまれていた天才漫画家。その生涯を、手紙やメモなどを含む秘蔵資料と親族・関係者への取材により描き出す。作者の人生と重ね合わせることで漫画の隠された意味を解き明かし、アメリカで大きな話題を巻き起こした決定的評伝。「PEANUTS」を何倍も楽しむための必読書!
別れた夫の思い出のみを胸に戦後を生きた女性。その遺品の手紙が語り出す、悲しい真実とは。イタリア人の目を通して描く、実話に基づいた「原爆と戦争」の傷跡。村上春樹作品のイタリア語版翻訳者が初めて綴った感動の小説。
汚れた壁紙を張り替えよう、と妻が深夜に言う。幼い息子を事故で亡くして以来、凍りついたままだった二人の時間が、かすかに動き出す(「立冬」)。いつのまにか失われた恋人への思い、愛犬との別れ、消えゆく千の言語を収めた奇妙な博物館など、韓国文学のトップランナーが描く、悲しみと喪失の七つの光景。韓国「李箱文学賞」「若い作家賞」受賞作を収録。
老人介護施設で働く「私」の家に住む場所をなくした三十代半ばの娘がしばらく厄介になりたいと転がりこんでくる。しかも、パートナーの女性を連れて。娘の将来を案じるあまり二人とぶつかる「私」にやがて起こる、いくつかの出来事と変化とは。LGBT、母子の関係、老いというテーマを正面から見つめ「シン・ドンヨプ文学賞」を受賞した傑作長編。