1993年12月20日発売
札幌の大学二年生、高村伸夫は専門課程の選択に悩み、雪に閉ざされた暗鬱なものからの脱出も夢見て、京都の大学の文学部に編入を試みる。が、それに失敗した伸夫は人間へのやみがたい興味から、同じ札幌の別の大学の医学部に進むことを決意する。解剖実習、お産見学の宿直、インターンのための上京など、とまどいにみちた清新な日々の心の軌跡を刻む自伝的長編五部作の第一作。
国家試験に合格した高村伸夫は、母校の整形外科の医局に入局し医師としての道をあゆみ始める。その直後、派遣医師として赴任した道東の炭鉱病院で直面する落盤による死傷事故の連続。一方、子宮破裂で血圧がゼロになるほどの出血をしながら、伸夫の手で命をとりとめた女体の逞しさに目を開かされる。生と死のはざまで揺れる新米医師の驚きと感動にみちた体験を迫真の筆で描く第二作。
地上げした土地の廃ビルにペインティングを施し、アーティストやミュージシャン、編集者などオシャレな不良どもを住まわせる。なんの変哲もない町が二年後には流行の発信地となるだろう。期限付きの解放区、ムスリム・トーキョーはそんな思惑で生まれたー。ドラッグが蔓延し、フリーキーな若者たちが蠢く堕天使の楽園。幻覚のようなヴィジョンに豊かな寓意を重ねた長編小説。
東京郊外の都市で一刀彫りの郷土人形を作る旧家に嫁いだ女性が次々に不審な死を遂げる。最初の妻は交通事故に遭って家に戻ったその晩に、二番目の妻は心臓発作で急死。どちらの場合も夫は不在だったという。その家には江戸時代から伝わる美しい浄瑠璃人形があり、それにはただならぬ因縁が絡んでいるらしい…。謎と官能に彩られた男女の異形の愛を描きだした禁断の恋愛ミステリー。
ユダヤ人に化けてもらいたいー。ナチス親衛隊少佐シュターケにとって、その任務は屈辱に満ちたものだった。最終目標も知らされぬまま送り出された彼は、ユダヤ人の第三帝国脱出を助けるモサドのロッシや米国から派遣されたジュリアとともに、パレスチナからローマへと呉越同舟の冒険行を敢行する。そしてローマで彼を待っていた指令とは…。壮大な規模で描く大戦前夜の歴史秘話。
戦場で出会い、熱い恋に落ちたスティーブンとアンジェラ。身篭ったアンジェラだが、彼がマフィアの跡継ぎであることを知り、秘かに帰国した。数年後、ファミリーの指導者となったものの、妻クララとの不毛な結婚生活に疲れ果てていたスティーブンは、死んだと思っていたアンジェラと再会し、彼女との愛に生きることを決意する。裏切られたクララは、幸せな二人を追い始める…。
エジプト・アメリカ合同軍事演習「ブライト・スター」は両国大統領の観閲の許、平穏裡に挙行される筈だった。だが、リビアの密使が放った両大統領への銃弾が「演習」を「紛争」へと急転させた。直ちにエジプトはリビアへ侵攻、〈限定報復〉を試みるが、事態はソ連による化学兵器の使用にまで拡大。米軍演習部隊は緊急展開を開始するが…。コイルの緻密な筆致が冴える迫真の軍事フィクション。
マンハッタンの超高級マンションの一室から、若い美貌の男性の死体が発見された。男は裸で黒革の拘束マスクをつけ、片脚を切断されていた。身元を探るヴィンス刑事の許に、七年前の殺人未遂事件で昏睡に陥っていた被害者の女性ベイブが、覚醒したという報せが届く。犯人とされた彼女の夫は、有罪答弁取引きですでに釈放されている。一見無関係な二つの事件が、複雑に絡み合いー。
愛する夫が自分を殺そうとしたという事実がどうしても信じられないベイブは、ヴィンス刑事と協力して事件の再調査を進める。家族はなぜか彼女に詳しいことを語りたがらない。彼女には昏睡中のかすかな夢の記憶があるのだが、それはパーティ着の男女が黒革のマスクをつけた若者をいたぶる異様な場面だった。全く覚えのないことをなぜ夢に見たのか?謎は一層深まり、意外な結末へ向う。
新聞がバラバラ殺人事件を報じていた朝、探偵小説作家の星田は雑誌記者の津村を相手に、“完全なる犯罪”などというものはこの世に存在しないとの論陣を張って深夜に帰宅すると、「貴下の“完全なる犯罪”なしとの説に対し、人間の手により“完全なる犯罪”の計画を遂行する。充分の研究により犯人を突き止められよ」の文字通りの挑戦状が届けられていた。新潮社が昭和7年に刊行した全作書下ろしの『新作探偵小説全集』の付録として発行された『探偵クラブ』に連載された「殺人迷路」は、乱歩をはじめ10作家により書き継がれて本格物として結末づけられている!はたして“完全なる犯罪”は可能なのか…。他に、『講談倶楽部』昭和29年9月増刊号に一挙掲載の「悪霊物語」を併収した。
極楽の歓喜をもたらす守護神でもついているのか、熟れた人妻・グラマーな美人OL・処女喪失志願の少女など、次々とイイコトが続いている慶悟は今日も、千人力の守り神を背にエロスの極限へと腰を振る。連作官能ロマン。
日本怪獣映画の原点というべき不朽の名作。企画書として書かれたまま、永らく埋もれていたオリジナル原作を、初めて単行本化。(「ゴジラ」)。東宝怪獣映画シリーズ中、唯一ビデオ化されていない幻の作品。ゴジラと同じ香山滋による原作は、昭和30年の初刊以来、38年ぶりの復活。(「獣人雪男」)。キノコ人間・マタンゴの恐怖を描いてファンの評価も高い異色のホラー作品。掲載誌不明とされていた原作小説をついに発見。(「マタンゴ」)。
二億年の眠りから醒めた巨大翼竜ラドン。原作は雑誌の別冊附録として発表されたため、ほとんど入手不可能。(「ラドン」)。ザ・ピーナッツの歌声に導かれ優雅に空を飛ぶモスラは、ゴジラと並ぶ人気怪獣である。これも別冊附録に発表、初の単行本。(「モスラ」)。二大怪獣の激闘を描いて平成ゴジラシリーズの口火を切った傑作。応募入選のオリジナル原作は、もちろん単行本初収録。(「ゴジラVSビオランテ」)。
火のように気が強く、思い立ったら何でもする。恋のためなら自分の家にでも火をつける。情念が強く、何をするかわかったものでない。情炎に燃え、男の身を焼く。結婚が出来ないとわかっていてなぜ私を生んだの…。二十数年後に起こるであろう母娘の避けられない相剋。