1994年5月31日発売
人類初の恒星間宇宙船が惑星キャンドルに到着したとき、人々は空飛ぶカヌーを操るインディアンと遭遇した。13世紀に光速飛行術を見出したインディアンの一群がカヌーで地球を離れ、この星に移住を果たしていたのだ。数百年後この星を訪れた新聞記者ウィルは平和共存を続けているはずのインディアンと入植者との間に深刻な対立があることを知る。異星の地で、開拓時代そのままの激烈な戦いが、いま始まろうとしていた。
インディアンの光速飛行法の秘密が隠された“クレイ”の所有権をめぐって政情不安におちいった惑星キャンドル。クレイ埋蔵地を保有する娘ジェイニイは、入植者とインディアンとの間で窮地に立たされる。ウィルは彼女を救うため友人でインディアンの指導者でもあるトーマスとともにカヌーで地球に旅立ったが、そこで彼らを待っていたものは…?90年代SF期待の新人が、奇想天外な設定のもとに描く迫真のSFドラマ。
惑星ハーモニーに人類が入植して四千万年。平和な文明の栄えるこの星は、じつは軌道上のマスター・コンピューター“オーヴァーソウル”に密かに管理されている。ところがその機能が低下し、世界を制御できなくなってしまった。このままでは人類が自滅への道をたどるのは必至。守護者としての使命をまっとうすべく、オーヴァーソウルは一人の少年にメッセージを託すのだが…遠未来に生きる人類の姿を壮大に描く傑作長篇。
騎士の娘マリアンが十字軍帰りのロバートから聞かされたのは、代官ドレイシーと結婚せよという父の遺志だった。だが、代官は酷薄な男。彼に嫌悪を覚えたマリアンは、しだいにロバートに惹かれていった。そんなある日、マリアンが逃亡死刑囚にさらわれ、無法者が徘徊するシャーウッドの森に連れこまれた。ロバートは彼女を救うべく森に足を踏み入れた…ロビン・フッド伝説を鮮やかに甦らせるシリーズ第2弾。
世界各地で激しい航空戦が繰り広げられている一方で、航空技術は目覚ましい進歩を遂げていた。ハーフナーらのドイツ技術陣は革新的なジェット戦闘機Me262を開発、一挙に戦いの主導権を握ろうとする。だが生産は遅々として進まず、戦局はドイツにとって取り返しのつかないほど悪化。残されたパイロットたちは一握りのMe262で、圧倒的な連合軍爆撃機隊に絶望的な戦いを挑む。史実をもとに空の男たちの死闘を描く。
平らな山の上にあるフラットヘッド族の国と、湖のなかの島にあるスキーザー族の国。この二つの国の争いをおさめに、オズマ姫とドロシーは出発した。ところが、スキーザーの国の高慢ちきな女王につかまって、二人は湖の底に閉じこめられてしまった。それを知った〈よい魔女〉グリンダは、オズの魔法使い、かかしたちといっしょに助けにいくが…。オールスター・キャストで贈る、ファンタジイの名作オズ・シリーズ完結篇。
彼の名はジョン、あるいはゴーストとも呼ばれている。一切の武器を持たないハートレスな殺し屋だ。精妙な感覚と異様な剛力を秘めた自分の両手が唯一の凶器。そのまがまがしい手で、請け負った仕事を確実にこなしていく。しかし、仕事以外のことには関心も知識もなく、しかもひどく無口なので、他人からは頭が弱いと思われている。そんな彼が初めてシェラと会ったのはシアトルのストリップ・バーだった。彼女は店の踊り子で、ふたりは互いに相手が同種の人間であることを嗅ぎ取り、美人局のコンビを組んで、デンヴァー、ヒューストン、ニューオリンズと放浪の旅をつづけた。ところが、タンパという町でふたりは殺人事件に巻き込まれ、シェラは失踪、ジョンは殺人犯として刑務所で三年間すごした。出所後ジョンは、姿を消したシェラを捜し出すことしか頭になかった。しかし、手がかりは全くない。何としてもシェラと会い、逃げた理由を直接聞き出したい彼は、どんな危険な仕事も引き受けながら、シェラ捜しの旅をつづけた…。
二人の貴族が出会った。一人は25歳、一人は83歳。時と場所を越えて奇妙に符合する二人の人生を通して20世紀英国ゲイ社会の歴史の仮面を剥ぐ一大問題作。サマセット・モーム賞受賞作。
おれは松平利春。不自然死死体を検屍する監察医だ。行く先々で殺人事件が発生するんで、“死神解剖医”なんて呼ぶ者もいる-。だが、今回は死体がおれを熱海へよんでくれた。身代り不動の極楽坂の梅の木に、若い美人がブラリぶらさがっていた。偽装縊死ではないかと考えた旧知の刑事チョウが、是非、解剖してくれと頼んできたのだ。ところが、待ってたのは死体一人じゃなかった。おれが行ったとたん、芸者の姐妓がやっぱり極楽坂に吊るされ、別の場所にももう一人。おいおい三人の首吊り人なんて、こりゃどうなってんだ。
李唐長安にあって、半神半人の運命からこれまで幾多の事変に巻き込まれざるを得なかった顕聖二郎真君に最大の危機が襲った。一身二者、彼の内が神と人の二つに分かれたのだ。天界に安住することを嫌って塵界に身を染めてはじめて、二郎は翆心という女性の真情に魅かれてきた。一方、天宮の玉帝は外甥にあたる二郎が卓絶した力で天界に謀叛を起こさないかと警戒をゆるめなかった。人としての限られた時間に命を燃やすか、今こそ天界を掌中に治め絶対の威力を揮うか。二人の二郎が、翆心をはさんで相対決する完結巨篇。
「私の最も大切な財産は石神探偵事務所の狩野俊介君にゆだねるものとする。猫を追い払うより皿を引くべきであった」-俊介の愛猫ジャンヌを通して親しくなった元市長・滝之水老人が、息をひきとる際、弁護士に託した遺言だった。真っ白な便箋に象形風に書かれた不可解な文字は、遺言であると同時に、その意味を解けとの探偵俊介への依頼だという。老人の娘婿・高山代議士から「大切な財産」を渡せと居丈高に要求された俊介は、それに反発し、長兄の娘、梨花とともに遺言の謎に迫る。会心の本格推理シリーズ新作。
バレンタインデーの夜、長野県諏訪市の十九歳の新聞配達員・青島蕗子が行方不明になった。蕗子は販売店に住みこみながら、信州大学へ通う学生であった。連絡を受けた諏訪署の刑事・道原伝吉は、いやな予感がした。果して、蕗子は絞殺死体となって発見された。しかも、その後、蕗子の死体発見場所から、わずか150メートルの畑の中に、若い男性の刺殺死体が埋められていた。2つの殺人事件の捜査の過程で、繰り返し哀切なメロディーが聞こえてくるのだった。その曲、幼女の歌う童謡「砂山」と事件の関連は…。
秘密捜査官・矢神俊二。一切の過去、怒りと哀しみを、その虚無的マスクの下に隠しもつスーパークールな男だ。政府の水際作戦によって官能麻薬〈ヴァージン・ジュース〉の供給が枯渇し、都市ではファミリー同士の縄張り争いが一触即発の状況だった。そんな中、郷田ファミリーのVIPがたて続けに狙撃された。奴らが多国籍ファミリー相手に戦争を始める前に狙撃者をつきとめろ、それが指令だった。コンビを組まされたワル刑事鬼城と非情の捜査を開始した矢神の前に、黒いボディスーツの女が影のように現われる…。