1995年3月発売
ドシャ降りの真夜中、正也は昼間、仔猫を捨てた雑木林へ急いだ、寝床についたものの、気になったからである。だが、暗闇の中、迷ってしまった。その時、遠くで明かりがチラついた。ホッとして近づいてみると、なんと男が死体を埋めているところだった…。現場に残されたヘアピンを食い込ませた靴跡を追う刑事。連続殺人事件に潜む銀行のオンラインの死角。
元マル暴刑事の佐伯涼は、警察手帳や拳銃、手錠の使用を禁止され『環境犯罪研究所』へ出向させられた。だが佐伯の仕事は刑事時代と同じ暴力団狩りだった。警察の特権、組織を使えぬ佐伯の武器は1400年続く佐伯流活法の拳と強靱な肉体。そして彼の目的は検挙ではなくて暴力団壊滅の戦いだった。犯罪のプロは法の網を逃れ、チンピラに自首させる。首領を潰さなければ根は絶えない。佐伯の凄絶な拳が唸り孤独な戦いが始まる。
大地震発生。恐怖と冒険の近未来小説。シベリアの核兵器解体施設を襲った地震は、予期せぬ核事故をひき起こした。地球の破局まであと十数時間。閉じられた地下世界で、国際混成チームの活躍がはじまる。ロシア・日本・アメリカを結んで描く痛快巨篇。
織田信長が天下一統を志して伊勢、志摩の平定に乗り出したとき、志摩の土豪から身を起こした九鬼嘉隆は真っ先に信長の麾下に馳せ参じた。信長の知遇を得て、九鬼の運命がひらけた。文禄の役で織田水軍の総大将として海戦に明け暮れた戦国大名の数奇な人生を聞く長篇時代小説。第5回柴田錬三郎賞受賞作。
ダブリン、パリ、ウィーンと若き家術家ベラックワがドタバタと駆け抜けてゆく-。「死後しばらくするまでは」出版が禁じられていたベケットの幻の処女作、ついに邦訳刊行なる。
内閣総理大臣加藤友三郎は、戦艦を主体とした海軍の時代から、戦闘機を中心とした空軍の時代の到来を予感し、海軍省から独立した空軍省の創設を命じた。初代空軍大臣には海軍出身の谷口尚真が任命され、それまでなおざりだった情報機関を特設、空母は全て帝国空軍の所有となった。一方、満州の関東軍は権益を狙って中国・北方軍闘の張作霖暗殺を企図していた。帝国空軍に発せられた最初の指令は、関東軍の暴走を抑えるため、情報局特殊工作班によってその謀略を阻止することだった…。日本、中国、ソ連、ドイツを舞台に壮大なスケールで描く長篇戦記シミュレーション第一弾。
桜の花びらが舞う富士見が丘高校入学式。何事にもクールだった僕-神木和己-は、自分とはあらゆる面で正反対の彼-都築裕-と出会った。その時から、僕は彼から片時も目が離せなくなる。“ドキドキ”が僕の心を支配してゆく。-この気持ちはいったい何…。冬城蒼生が語る、もどかしくせつない愛のはじまり。
その日、逢坂嘉三郎の屋敷に現われた少年は、透けるほどの白い肌と、細面の人形のように麗しく美しい容貌をもった美童であった。以来、蜘蛛の巣にかかった蝶のごとく、嘉三郎の心は妖しくとらわれていく…。山藍紫姫子と名香智子が織りなす、幻夢妖美譚。
…これが不倫というものなのだろうか。肌の温かみが伝わってくる。夫とは違う筋肉の盛りあがりを感じながら疼く体を開き…。禁断の愛=不倫の誘惑に抗しきれず、悦楽に悶え燃え尽きようとする熟れた人妻たちの、めくるめく官能の一夜が今日も過ぎてゆく。