1995年3月発売
落ちこぼれマフィアのジョーイがフロリダをめざしたのは大物になって「仕切る」ためだった。が、そうは問屋が卸さなかった。突如、厄災が訪れた。威張り腐った異母兄のジーノが抗争相手のマフィアから300万ドル相当のエメラルドを盗み、殺し屋に追われて逃げてきたのだ。迫力のラストページまで、一気読み。
SF伝奇超大作ついに完結。田沼意次の時代、鬼道衆の分裂と争いから現われ出た闇の歴史は、いま、無窮無限の世界を駆ける霊船黄金丸によって宇宙の進化へと語り継がれる。互いの生命を啖い合う妖星=地球から虚空の巡礼に旅立った霊船を待ち受けるものは何か。終章で明かされる進化の涯に至る形態とは。
2061年、ヘイウッド・フロイドは高鳴る動悸を抑えきれなかった。75年ぶりに再接近してきたハレー彗星の探査計画への参加を要請されたのだ。最新型のミューオン駆動宇宙船ユニバース号に乗り組みハレー彗星をめざすーそして、みずからの手で彗星を調査する。だが、彗星に着地し探査を始めたフロイドたちを、思いもよらぬ事件が待ち受けていた。
人類は、木星軌道上に設置したワームホールをタイムマシンに転換すべく奮闘していた。そんな時、そのワームホールから未来人の船が現れた。乗っていたのは〈ウィグナーの友人〉と名乗る人々で千五百年未来の地球を支配する異星種属クワックスを滅ぼすためにやって来たのだという。だが、その裏には途方もない意図が。ハードSFの新たな旗手が、千五百年の時に隔てられた二つの太陽系の抗争を壮大に描いた傑作長篇。
こいつは時価五十万ドル、いやそれ以上かー私たちは忍び込んだコルキャノン邸で、世界に五枚しかないという超希少コインを手に入れた。たった一時間の仕事としては上出来だ。と喜んだのも一晩限り、翌朝コルキャノンの妻が撲殺死体で発見され、なんと私に殺人容疑が。その上、第二の殺人が起こり、問題のコインが消えるにおよんで、私は犯人捜しに乗り出すことに。
尖閣列島は日中両国が主権を主張する、不可侵海域。武器・麻薬の売買や密輸が横行する無法地帯だ。海上自衛隊は極秘裏に最新鋭艦『ゆきかぜ』を送り、無国籍船を装って密輸犯を撃滅してきた。人呼んで「海の悪魔」。密貿易の巨利で経済特区を支配する中国海軍の巨魁・劉淵丹は、北京政府と対立、ついに尖閣列島に、北京政府転覆の軍事基地を築きはじめた。海戦シミュレーション長篇。
八王子分署におかしな二人が誕生した。一人は元演歌歌手で能天気な男、百瀬刑事。相棒は本署から配属された仕事一筋の若き才女、小池奈美子部長刑事。二人の初仕事はある通報から始まった。ウイルス研究の小川博士宅で夫人七重の不倫相手が殺された。犯人は七重のもう一人の愛人で、しかも夫人はその男と逃亡中だという。捜査中に、相模湖から胴体だけの女の死体が浮かび上がったが…。書下し長篇ミステリー。
淳子四十六歳。男と女の情炎を燃やしつづけた人生だった。養女となって婿養子をとったが夫は養母と関係し、飛び出て勤めた料亭では、主人にくどかれたのも束の間、夫人に半死半生でたたき出された。月日を重ね、料亭まで手にいれたが、世話してくれた男にも身をまかせた。その男が知人の男性も交え、スペイン旅行に行こうと誘ってきた。なぜ三人。淳子の肉体の奥に、妖しい炎が燃えさかった。鬼才の秀作。
笙という名の、獣のような眼をした青年実業家に、少女たちは囲われていた。アスパラガスのように細身のゆうな、ふっくらした脂肪に包まれた毬、そしておそろしい程の美貌をもつ伽耶。この伽耶の蠱惑によって、笙のもとに少女たちは集まってくる。父親のハイテク産業を母体に巨利を得た笙の渇きを癒すものは何なのか。横浜山手通の屋敷には、きょうも輪姦された少女や、両性具有の少女が拾われてくる…。
「娘さんを預かっている。身代金二百万ドルを用意しろ」野沢コンツェルンの総帥・野沢清一の許に一本の電話がかかってきた。娘の京子はコンツェルンの後継者。しかも犯人は受け渡し場所にケニアのホテルを指定してきた。野沢は秘書の米山に犯人抹殺を命じ、彼を伴いケニアへと向かう。だが、京子と引き換えに身代金を渡した時、突然別の男が現われ、京子と身代金を奪って逃げた。長篇サスペンス・ロマン。
日本列島改造論で一大ブームを巻き起こした田中角栄だが、金脈問題やロッキード疑惑でついに政権の座を明け渡す。しかし、後を継いだ三木、福田、大平の各首相時代にも、強力な軍団の闇将軍として隠然たる権力を誇り、中曾根政権を誕生させた。だが、やがて世代交代論が新世代議員から沸き起こり、ついに田中派は本格的に分裂。竹下登を中心とする創政会と田中直系の二階堂派との対立抗争が広がっていく。
縞の合羽に三度笠、軒下三寸借り受けての仁義旅ー舞台、映画、歌でもおなじみの〈股旅もの〉。しかし、ここに収めた八編は単なるやくざのアクション・ドラマを越えた人間の物語だ。「股旅者も、武士も、町人も、姿こそ違え、同じ血を打っている人間であることに変りはない」。義理と人情のしがらみ、法の外に打ち捨てられた渡世人の意地と哀愁にそそぐ温かいまなざし。庶民派作家の真骨頂がここにある。
武田信玄の寵臣土屋庄三郎は、夜桜見物の折に老人から深紅の布を売りつけられる。これぞ纐纈布。古く中国で人血で染めたとされる妖しい布だ。この布が発する妖気に操られ、庄三郎がさまよう富士山麓には、奇面の城主が君臨する纐纈城や神秘的な宗教暖が隠れ棲み、近づく者をあやかしの世界に誘い込む。怪異と妖美のロマンを秀麗な筆致で構築し、三島由紀夫をも感嘆させた伝奇文学の金字塔。
勤王の志士の妹・お香代の面影を恋い求め、変転する時流にもてあそばれる織之助は、思わぬ成り行きから、ふたたび独楽勝負に身の行く末を賭けることになる。対するは愛憎半ばする宿敵、伏見流名人・潤吉。剣風吹きすさぶ京、時代の激流は二人の若者と彼らが愛する美女の運命を容赦なく押し流していく。寄略縦横、日本大衆文学史に巨大な足跡を印した著者の『富士に立つ影』と並び称される異色長編。