1995年3月発売
1934年大晦日、深夜の帝都・東京。滞日中の安南国皇帝が失踪し、その愛人が墜落死。警視庁切っての名警視が真相究明に乗り出したが、デマ・誤報・密告が錯綜し、元旦の首都は大混乱に陥る。秘宝「帝王」の行方と、動機不明の連続殺人事件の謎ーすべての探偵小説を超えたスーパー都市迷宮小説。
ジェニファ・ジョーンズの顔の輪郭、ローレン・バコールの目、マリリン・モンローの口元、アン・マーグレットの躰、ディートリッヒの脚に美容整形した世界No.1の美女の肉体が競争して無残にも傷だらけになった話。青ざめた顔の1枚の絵に魅せられてその絵に愛された女の幸福な死…。心がねじれたり魂を売りたくなるような世にも不思議なラブショック・ショート・ストーリー100編を収録。
乱世は幾多の異才を生む。信長、秀吉、家康、信玄、謙信といった稀代の智将・名将の他、大胆不敵に我が道をゆく戦国の異端児前田慶次。独り深遠なる芸術の真髄を見据えた千利休。槍一本に命を託し諸国で名を馳せた孤高の武将後藤又兵衛。また、関ケ原に敗れて主従数名で敗走する西軍の将宇喜多秀家等、戦乱の世を彩った様々な人間模様を達意の筆致で写し出す傑作アンソロジー15編。
マンハッタンで堅実な投資顧問会社を経営するファーは麻薬密売で逮補された息子の将来と引換えにFBIとの取引を受け入れた。カリブのカイマン島にファーは工作員数名と傍受装置を完備した投資顧問会社を作り、おとり捜査が開始された。巨額の資金洗浄を持ちかけてきたのはコロンピアのコカイン・ブローカーとニューヨーク・マフィアだった。一味は罠にはまったかに見えたのだが。
闘争に疲れたIRAのデヴリンは、合同テロ組織による合衆国大統領暗殺計画を察知した。彼は身の安全とオーストラリアへの移住を条件に、この情報をイギリスのSISに持ち込む。だが、担当となったバランタインが情報の真偽を確認しようとした矢先、南仏に滞在中の大統領令嬢が誘拐されたー。テロリストと諜報員の奇妙な二人三脚、監禁された令嬢の凄絶な日々を描く謀略巨編。
私立探偵ブルーは奇妙な依頼を受けた。変装した男ホワイトから、ブラックを見張るように、と。真向いの部屋から、ブルーは見張り続ける。だが、ブラックの日常に何の変化もない。彼は、ただ毎日何かを書き、読んでいるだけなのだ。ブルーは空想の世界に彷徨う。ブラックの正体やホワイトの目的を推理して。次第に、不安と焦燥と疑惑に駆られるブルー…。’80年代アメリカ文学の代表的作品!
妹の部屋から持ち出したバービー人形との恋物語「『ファック・ミー』とバービーはいった」、強姦犯に宛てた被害者からのラブレター「レイプなんて怖くない」、社会の底辺に生きるいびつなカップルの残酷な運命「恋の骨折り老い」-心も体も傷つきながら、それでも誰かを愛さずには、肌を合わせずには生きられない人間の性をやさしく見つめる16編。現代アメリガが生んだ愛の文学傑作選。
砂の降りしきる町の娼家「緑の家」、密林に覆われた尼僧院、インディオの集落。ペルー社会の複層性さながらに交錯する現代・中世・古代。盲目のハープ弾き、飲んだくれ、日本人の流れ者、そして女…。市民的規範には無縁のしたたかな人物群が多様多彩に躍動乱舞する。-ラテンアメリカ文学の豊かな土壌に育くまれ、前衛的な手法を駆使して濃密に織りなす、物語の壮大なる交響楽。
筒井和泉守政憲は江戸南町奉行に就任するや、早乙女源六を内与力にするとともに、定町廻り同心筧彦七をつけて裏探索方を命じた。そして彦七の下には手足となって働く、岡っ引きの甚八以下五人が控えていた。この六、七、八の捕物陣七人が江戸の凶悪事件の探索に当たり、浅草と麹町で同時に起きた紙問屋の押し込み強盗を追って動き出した。-街道を走り、十手捕縄を操り次々と下手人をあげる痛快本格時代小説。
紀州和歌山藩主の四男として生まれた吉宗は、御三家の名にとらわれない自由闊達な生き方をしていた。若侍たちに襲われ、手ごめにされかかっていた踊り子の小づまを助けた吉宗は、それを機に彼女と愛し合う。しかし、小づまは一度だけ吉宗に身体をあずけた後、姿を消してしまう。やがて吉宗は十六歳の正室・理子を迎えるが、彼女も急逝してしまう。動乱の時を生きた若き吉宗の奔放な青春を描く長篇書下ろし。
三国鼎立時代の最後に天下を統一した魏は、権臣・司馬炎に国を奪われて晋の時代となったが、諸王の権力争いから朝政は乱れた。女道士・石珠と武人・劉弘祖の二人は、続々と集まる憂国気概の同志と結んで、天下平定のために晋都洛陽をめざす。智謀あり、武勇ありの、武術、妖術の入り乱れる混戦のうちに、首尾よく勝利の日を迎える痛快な歴史物語。
鷹森克彦はかつての恋人の朝比奈慧一のマンションを訪れた。別れた後も忘れたかったが忘れなかった、いや忘れられなかった彼。彼の妻が他界したと聞き訪れた。別れたかった理由が慧一の唇から零れる。過度の愛情が生んだ不安。彼も克彦を忘れられなかったという。五年を隔て二人の恋愛が始まる。不安をかきけすように求め合う。他三篇を収録した、冬城蒼生が貴方に贈る秘蔵の初期短篇集。
自動人形、二重人格などをテーマにしたホフマンの「砂男」は、怪奇幻想小説の傑作として有名であるが、後年フロイトによってとりあげられ、恐怖の源泉としての「無気味なもの」が作品ともども詳細に分析された。本書はその「砂男」とフロイトの論文を併せて収録し、訳者の明快な解説を付したもので、古典を古典的論文で読解するという新しい試みを意図したものである。
主人公・大上円は、29日周期で42度の高熱を発する特異体質の持ち主。新都心・東京ウィング・シティに引っ越してきた途端、暴走族に襲われている美少女を救う。それが、探し求めていた少女・百合川蛍との出会いであり、“世界の変化”の始まりだった。美しく高貴で、壊れてしまいそうなボヘミアンガラスにも似た、世紀末の恋の行く手には何が待つのか。
1603年刊の「日葡辞書」を大学に売り込みにきたマヌエルは金だけ奪って逃走したが、翌日その金はなぜか送り返されてきた。「時価2億」にマスコミは沸き立つが、マヌエルは長崎で射殺される。辞書と犯人の行方を追い、“迷宮課”浦島警部は天草、マカオへ飛ぶ。17世紀の夢を血に染めたのは誰か。浦島の推理の冴えは。