1995年8月15日発売
地味で目立たないOL佐竹紀子が入社以来初めて遅刻した。「遅くなりました」と入ってきた女は、紀子とは別人のような美女。見違えるように変身した紀子の身にいったい何が起こったのか。第一話「シンデレラ」ほか、伝奇ノベルの第一人者が放つショート・ラブストーリー集。愛が恐怖に変わる掌篇ホラー小説。
ぼくはわにわに。素子さんちに棲む、400人(ぬい)余りのぬいぐるみの中でも名門の“わに族”出身なのだ。白くてチャーミングなボクに、原稿依頼がきて、一族は大騒ぎ。事件にはこと欠かなしい、張り切って書きました。仲間たちと素子さんとダンナとその愛猫ファージの、十二の楽しいお話です。
女はそれぞれ音をもってるけど、いいか、角だつな。さわやかでおとなしいのがおまえの音だ。料理人の佐吉は病床で聞く妻の庖丁の音が微妙に変ったことに気付く…音に絡み合う女と男の心の綾を小気味よく描く表題作。他「雪もち」「食欲」「祝辞」など十編。五感を鋭く研ぎ澄ませた感性が紡ぎ出す幸田文の世界。
人類50億人殺戮計画を陶然と語る悪の帝王に竜堂四兄弟は怒りの反撃を開始、地球の闇の支配者・四姉妹との総力戦の火ぶたが切られた。アメリカ超能力精鋭部隊と大陸横断殺人ビームが次々に四兄弟に襲いかかる。さらに茉理を人質にとられた四兄弟が怒りのパワーで結束したとき、天空に再び巨竜が飛翔する。
太陽系に侵入したカピンはその特異な能力ーペドパイルングをもちいて、テラナーの精神を乗っ取り自在に操れると判明した。しかも旗艦『インターソラー』にカピンのひとりが潜入したらしい。すでに太陽系帝国の要人が乗っ取られた可能性すらあった。ローダンでさえペドパイルングの前には無力なのだ。アトランは極秘裡にグッキーたちミュータントからなる特別コマンドを編成すると、カピンの捜索に乗りだしたが…。
東京から青森までー緑まぶしい五月の国道四号線を完全装備の自転車でツーリングする中年グラフィク・デザイナー、桐沢風太郎。ひょんなことから自衛隊の陰謀さわぎに巻き込まれ、特別隊に追跡されるはめになった。道中で出会ったヒッチハイクの家出少年、桐沢、自衛隊の尾形三佐ー追う者と追われる者の対決、冒険とサスペンスをはらみつつ、男たちは北へ。男たちのロマンをさわやかに描く傑作ロード・ノヴェル。
好奇心が強すぎて神学校の落ちこぼれになっていたわたしは、教授からある課題を与えられた。突然失踪した学生クロズリイを捜せというのだ。敬虔と評判だった級友の足跡を追い始めたわたしは、やがて彼が詩人キーツの末裔を名乗る老女に金策を頼まれていたことを知る。が、その老女が殺され、行方不明のクロズリイに殺人の容疑が。若き神学生オーエンの苦闘を通して不安定な青春の哀歓をリリカルに描く、シリーズ第二弾。
一見無関係に思われた三件の殺人事件。だが現場に残された口紅のケースが同じことから、同一犯の可能性が。鍵を握るのは犯行直後に目撃された喪服の女。そして新たな共通点も。最初の被害者は愛人と横領を働き、二人目は婦女暴行の常習犯、三人目は妊娠した愛人を捨てたという女性問題があったのだ。やはり犯人は喪服の女…。数日後、最初の被害者の妻が探偵事務所を訪れた…。
1910年の日韓併合から45年の日本敗北の瞬間まで、36年間朝鮮半島に君臨した「朝鮮総督府」。足がために乗り込んだ伊藤博文から寺内正毅、長谷川好道ら八人の総督が存在した。語られることの少ない“日韓併合時代”を大韓帝国滅亡に立ち合う悲運の国王高宗と純宗、暗躍する親日派高官、生命をかける抗日志士のそれぞれの生きざまを軸に展開する。知られざる歴史ー日韓の悲劇を描く壮大な近代史ドラマ。
’60年代の反戦運動の元闘士ペリー・ヒルダリーが通り魔に撃たれ死亡した。友人ハンク・ザーンは彼の遺言執行人だったが、死の3週間前に遺言が書きかえられていることを発見する。それは実子を完全に排除し、100万ドルの遺産を4人の男女に贈るという意外なものだった。1人は若く美貌の女性キャスター、1人はうさん臭い離婚訴訟専門家。女探偵シャロン・マコーンはそこに犯罪の匂いを嗅ぎつけるー。
昭和62年10月、中曽根裁定によって内閣総理大臣となった竹下登だが、政局は消費税導入をめぐる国民、野党の猛烈な反発、さらに税制国会中に明るみに出たリクルート疑感によって混迷を深めていく。内閣官房副長官、小沢一郎とともに舞台裏の根回しに走り、“国対の神様”金丸信を税制特別委員長にかつぎ出し、懸命に野党との駆け引きをくり返す竹下だが、ついに退陣の腹を決める。激動期を描く政治ノベル。
左大臣、道長の治世-。大宮人の任官、昇任を決める除目の季節。武蔵国へ赴こうとした新任の国司、小野行正は逆賊、平将門の怨霊軍団に襲われ、気がふれてしまう。また、上総国の国司に任官した藤原治成も任地に赴く途中、逢坂山で同じ亡霊軍団に遭遇し、惨殺されるという怪事件が相次いだ。平安京の安穏を守ることを使命とする影法師は京職の隠れ法師と協力して、京の平和を乱す「平将門の亡霊軍団」の謎の正体を突き止めるため立ち上がった。
坂巻内科医院の院長、倫三が急死した。死因はウイルス性の脳炎によるものだった。同じ頃、彼が研究に通っていた明京医大の細菌学教室で、ウイルスの盗難事件が発覚しており、倫三は致死率100%の恐るべきウイルスに感染した可能性もあった。しかし、専門医による感染ルートの解明も不可能だった。果たしてウイルス利用の完全犯罪殺人は可能なのか。
源田実司令の発案ですすめられていた、紫電改を主力とする343空紫電改部隊が遂に編成された。先に始動している901潜以下の伊900型潜水艦部隊と合流することになる。インドネシア、フィリピンの輸送海路の保全のため、秘密基地ヤバ島から、南シナ海、セレベス海…へ、混成部隊が哨戒に出動する。折しも、米国が新型爆弾に成功し、輸送船でインドに輸送するとの情報を入手した源田司令は、三四三空の混成部隊に、この輸送船団の撃沈を指令する。そのころ東京上空は、中国から飛来するB-29の襲撃をうけていた。インド洋上では、米国輸送船団めがけ、空から紫電改部隊が爆弾を、海から901潜以下が魚雷を、集中砲火していた。
卓越した性技で次々と女子社員たちの肉体を漁る人事課長補佐・弓削清。彼の狙いは、直属上司であり次期社長候補夫人でもある魚住志麻を自らの性の虜にすることにあった。立場上、志麻部長の言いなりになるふりをしながらも、様々な恥戯で徐々に彼女を手なずけていく弓削。だがそんな彼の歪んだセックスの裏にはある暗い過去が影を落としていた…。長篇官能ロマン。
インドから「光り輝く島」(スリランカ)へ移住し、小さな町の駅前で粗末な茶店をいとなむ男、レンガサーミ。タミル人の彼は、シンハラ人優位の社会で、シンハラ人になりきろうと健気な努力をかさねてきた。妻と年ごろの娘との、貧しいながらも平穏な生活。だが、彼がきずいた人生は、町の映画館でおきた些細な出来事をきっかけに一変するー。仏教とヒンドゥー教、シンハラ語とタミル語…さまざまな民族と文化がせめぎ合う国スリランカ。その複雑な社会で、少数派として生きるレンガサーミの姿を、シンハラ人の「私」が友人の眼で描写する。開発の波に洗われ変わりゆく町を舞台に、スリランカの根源的な問題を浮き彫りにした力作長編。