1997年発売
その時、村は耐えていた。高度成長の足音がちかづく裏で、そのひずみもうまれはじめた’60年代初め、それぞれの道を必死にさぐる女たち。名作『四万十川』シリーズの作者が女の半生と村の運命を描く大作、第二部。
“ビッグY”に安らぎのときは訪れようとしなかった。1975年4月29日、南ベトナムの首都サイゴン沖-。長きにわたる泥沼の戦争はさらに深みを増し、多くの人々を苦しめていた。平和裡の解決を目指した和平協定は裏切りと謀略の末、アメリカが守り続けた南ベトナムをついに崩壊へと導いていく。ことここに至っては、アメリカにできることは一つしかなかった。「サイゴンが陥落する前に在南ベトナムの合衆国国民約1000名、南ベトナム政府の要人とその家族約6000名を救出、収容せよ」これが“ビッグY”こと「モンタナ」を含む第七艦隊が受けた最後の命令であった。今なお世界最大最強の45口径46センチ砲が上向き、発射準備をする。我らの「大和」が眠りにつく日は来るのか…。
羽倉信清は秘術の使い手として武芸の道を極めた男。だが、ある事故で男の機能を失ってしまった。家名を継ぐことを断念した彼に老中・松平定信の声がかかる。大奥坊主・斎左門として隠密を務めよというのだ。それは御台所の男子を暗殺することが主な役目だが…。魑魅魍魎の如き大奥三千人の女たちを相手に孤軍奮闘する男を描く書下ろし長篇時代小説。
南国の宏大な屋敷で生れ育ったセントバーナードとシェパードとの混血の子バックは、突然、鞭と棍棒に追われ、アラスカの氷原で屈辱的な労働を強いられることになる。苛酷な労働と生死をかけた闘いの中で、バックは次第に野性に目覚めてゆく。全篇を貫く強烈な反抗精神と自由への憧れが読者を魅了する、ロンドン(1876-1916)の出世作。
元処刑捜査官の北条貴は、国際警察刑事機構の助っ人としてバンコクへ飛んだ。そこのチャイナタウンで、かつては権力者の圧政から中国の民衆を守る互助組織であった三合会が、犯罪組織へと変貌し世界に進出していた。北条に組織から、彼の仲間の耳が送られてきた。明らかな宣戦布告に、貴はすべてを覚悟して、単身、今もっとも不気味な中国マフィアの本部へ乗り込んだ。
ベルリン国境で命を落とした妻への復讐を誓う義弟ジョージがワルシャワで失踪。彼のものと記されたホルマリン漬けの手首が、SIS(イギリス秘密情報局)局員バーナード・サムソンの元に送られてきた。さらに東に置かれた秘密組織「デリウス」が連絡を絶ち、調査に赴いたサムソンの眼前で、リーダーの牧師が爆死する。-冷戦終結に「希望」はあるのか…?最後の本格スパイ・ストーリー「新々三部作」迫真の第二部登場。
菊地昭夫は、自分の軽はずみな発言が招いた不本意な人事を機にある日突然会社をやめた。とくに考えがあったわけではない。するとそこに、お見合いをして断られたはずの女性から、自分の店を手伝ってほしいとの話がもちあがり、昭夫はアンティークショップの店員となる。その上、大恋愛の末に自分を捨てて他の男と結婚したはずの女性がマンションの隣に引っ越してきた。さらには携帯電話を拾ったことがきっかけとなり新しい恋がめばえそうな予感も…。人は人であるかぎり、いくつになっても恋をする…恋をすれば、傷つけられたり、傷ついたりすことも…それでもやっぱり人は誰かを好きにならずにはいられない-。不器用でユーモラス、ちょっぴり切ない究極の大人のラブストーリー。
今年で創刊四十周年を迎えたSF同人誌「宇宙塵」の、既刊一九四冊の中から傑作・佳作を厳選したベストコレクション!2には、『ソリトンの悪魔』で推理作家協会賞を受賞した梅原克文のデビュー作『二重ラセンの悪魔』の幻の中篇バージョンを初めて収録!他に、清水義範「待っている」、梶尾真治「もっともな理由」といった単行本未収録作品や、小松左京「地には平和を」、広瀬正「作品が書けない理由」等の初期傑作を収録。