2005年9月発売
余命短い父を看取るため、二十数年ぶりに故郷の田舎町へ戻ってきたロイ。かつて弟が自殺した事件の真相を探るうち、一生を不機嫌に過した父の秘密を知ることになる。そして町を牛耳る保安官の不審な行動。蜘蛛の巣のような家族と地縁のしがらみに搦めとられるロイは、だが次第に復讐のターゲットを見出して行く。
どうして私はこんなにひねくれているんだろうー。乳がんの手術以来、何もかも面倒くさく「社会復帰」に興味が持てない25歳の春香。恋人の神経を逆撫でし、親に八つ当たりをし、バイトを無断欠勤する自分に疲れ果てるが、出口は見えない。現代の“無職”をめぐる心模様を描いて共感を呼んだベストセラー短編集。直木賞受賞作品。
映画を見に行くことになったのは妹が死んでしまったからだ。私は平素より視覚情報に関しては淡白を貫く主義なので、映画を見るのは実に五年振りのこととなり、妹が死んだのも、矢張り五年振りだった。回数を勘定すれば、共にこれが四回目である。映画を見るのは妹が死んだときだけと決めているのではなく、逆であり、妹が死んだからこそ、映画を見るのだ。そうはいってもしかしこうしょっちゅう死なれては私としても敵わない。日頃大きな口を叩いている友人達に合わせる顔がないというものだ。私には合計で二十三人の妹があるけれど、死ぬのはいつも、十七番目の妹だった。
“『竜馬がゆく』連載開始のころ”司馬遼太郎は言った。「短篇小説を書くというのは、空気を絞って水を滴らすほどのエネルギーがいる」そうして生まれた短篇の豊かな世界を発表順に味わう。
武松は鴛鴦楼で大暴れし、弓の名人花栄が登場して、清風寨をおおいに騒がす。一方、星主の宋江は閻婆惜殺しの罪で捕まり江州に送られ、そこの牢役人で一日五百里を走る戴宗や二挺の斧を自在に使う李逵と出会う。百八人の好漢たちは続々と出会っていくが彼らに対する中央政権の風当たりもしだいに激しさを増していく。
ナポリ出身の詩人バジーレが主にイタリアから集めた精選昔話集。ボッカチオの『デカメロン』に触発されて書いたという本書は、10人の語り女たちが5日にわたって競ってまくしたてる50の物語を収めるおとぎ話の宝庫である。「シンデレラ」「眠り姫」「長靴をはいた猫」をはじめ、ばか息子の出世話、異類婚、乗っ取り花嫁、老婆の若返りなどおなじみのモチーフが数多く詰め込まれている。全2冊。
ナポリ方言で書かれたこのヨーロッパ最古の昔話集は、イタリアならではのおおらかであけっぴろげなエロチシズムと、荒々しく皮肉たっぷりの残酷さで満ち満ちている。バジーレ独特の凝った表現には、はでやかで不可思議なバロックの雰囲気が漂う。子どもたちのためのグリム童話より180年も昔、大人の娯楽だったおとぎ話はこんな姿をしていたのである。全2冊。
古の時代、世界は神によって二つに分けられた。科学が支配する人間界・エルデと魔法が支配する異世界・ファンダヴェーレ。そして世界には封印された強力な「力」があった。その力「封印の鍵」を宿すエルデの少年・鈴風草太は東京の中学校に通う普通の男の子。幼なじみの女の子に頭の上がらないちょっと頼りない草太に、邪眼の魔女・サンドリヨンと腹心の部下ヘンゼルの魔の手が伸びる。草太の警護をするのは赤ずきん、白雪姫、そしてオオカミ族のヴァルなど、おとぎ話のヒロインたち。…その熾烈な争いの中、あらたな刺客・グレーテルがツインテールの髪を軽やかに揺らしながら、エルデにやってきた。「封印の鍵」の争奪戦のさなかに、行われたもう一つの闘い。それはグレーテルの赤ずきんへの嫉妬心からはじまった恋の闘い!?だった。
男の名前は神崎零次。D.O.E(ディフェンダーズオブアース)エージェント、ディフェンダー0721。コードネーム“スペクター”何故か武器を使わずに、拳による処刑を繰り返す異端のディフェンダーは都会の雑踏にまぎれ、公的機関の監視の下、孤独な闘いを続ける。終わりのない異形の者たちとの闘いが、ダークヒーローの闇をさらに深く濃くしていく。
「殺しは仕事にしたことがない。殺しをしなかったとはいわないが」。あらゆるトラブルを請け負う男、ジョーカー。着手金は百万円、唯一の連絡場所は六本木のバー。噂を聞いた男と女が今宵も厄介事を持ち込んでくる。ジョーカーを動かすのはプライドだけー。待望のハードボイルド新シリーズ第一弾の連作短編。
ロス市警のみならず、FBIからも激しい妨害と警告を受けるボッシュ。孤独な捜査を進める彼に貴重なヒントを与えてくれたのは、今は全身不随の身となった元刑事のクロスだった。が、その身辺にも危険が迫り…。たくさんのもつれた糸が絡み合い、人の心の闇を炙り出す!現代ハードボイルドの最高峰。