2015年1月7日発売
デジタルデータのみを破壊する「情報震」が地球上で頻発している。原因はおろか震源地すら特定できない。あらゆる情報が崩壊し、機能を失った大都市からは人の影が消えた。偵察のためトウキョウに進駐した日本情報軍機動観測隊は、想定外の「敵」と出会う…。
嵯浪藩・西野家の一人娘・紀江は小太刀の名手。かつての想い人を忘れられぬまま妻、母となり葛藤を抱えつつも穏やかな日々を送っていた。しかしある朝思いがけずー。過酷な運命を生きる女性が示す一つの夫婦の形を美しい四季と共に描いた傑作時代小説。
連載当時は誰も注目していなかった日露戦争。その経緯を紐解くことで、作家は“日本人の精神性”を描き出そうとした。だが、歴史になる前の出来事を書く苦しみを味わうことになる。それを乗り越え「事実」を踏まえた「小説」を生み出そうとした、独自の工夫と試みに迫る。
物語が日露戦争終戦後に差し掛かった際に、正確な情報を与えなかった政府、冷静に事実を調べようとしなかった新聞や、学者、政治家、情報に踊らされた国民たちを、作家は冷徹に描き出し、「魔の季節」への出発点だと記した。40代を費やして執筆された作品の執筆秘話。
北町奉行所の同心・河村金志郎の裏の顔は金貸し。岡っ引きの銀治、下っぴきの音松を使ってトイチで貸して取立てている。同業の金貸し・吉五郎が殺され、他人事ではないと探索に乗り出したが、さる大名が浮上し、奉行から圧力がかかる。上司である与力の内諾を得て密かに調べを続け、その大名に直に問いただしたところまではよかったのだー。さらなる難問が金志郎に降りかかる。
人妻亜希子は小遣い稼ぎに客をとっている。その日、男が亜希子の上でしたこと、それが彼を忘れられなくさせた。愛と言うには淫らすぎる。性と言うには切なすぎる。人生に疲れた中年男と、満たされぬ女の情念に憑かれた日々は、やがて壮絶な成就のときを…(「ワリキリ」)。性愛の深淵がこの一冊にある。鮮烈作品集!
故郷の川にかかる粗末な丸太橋をかけかえようと、長らく托鉢を続ける僧の普照。苦労の末に集めた金は十両。が、その金をならず者たちに奪われてしまったのだ。失意の普照を助けようと、高瀬川界隈で評判の居酒屋「尾張屋」の主人・宗因が一肌脱ぐことに。大店の主たちが金を出そうとするが、本人は申し出を拒否するのだった!?人間の気高さと愚かしさ…深い感動を呼ぶ傑作シリーズ!
女絵師・春香は博多織を江戸ではやらせた豪商・亀屋藤兵衛から「博多八景」の屏風絵を描く依頼を受けた。三年前、春香は妻子ある狩野門の絵師・杉岡外記との不義密通が公になり、師の衣笠春崖から破門されていた。外記は三年後に迎えにくると約束し、江戸に戻った。「博多八景」を描く春香の人生と、八景にまつわる女性たちの人生が交錯する。清冽に待ち続ける春香の佇まいが感動を呼ぶ!
四谷署管内で男性フリージャーナリストが何者かに金属バットで撲殺された。捜査は難航し、特務武装班に極秘捜査の指令が下る。ジャーナリストが追っていたのはカジノ解禁法案推進派国会議員の収賄事件だ。海外視察の推進派議員五人に金と女の甘い蜜を吸わせたカジノ会社の存在が浮上するが、情報提供者も謎の死を遂げていた。浅倉悠輔率いる特命チームの活躍を描く書下し長篇サスペンス。
新宿署管内のマンションで若い美容師が暴行された。そして立て続けに年頃のOLが、部屋に侵入した暴漢に襲われる。ふたつの現場に残されたのは、いずれも一輪の深紅の薔薇。「犯行の刻印」は十四年前の未解決連続強姦殺人犯「ペルソナ」を思い起こさせた。女刑事・夏目凛子が卑劣な犯人を追う。警察庁直属の特捜チーム「α特務班」の活躍を描くクライムミステリー登場。
人類の存亡をかけたエボラ出血熱との闘いが続くなか、富士フイルムの薬剤が全世界から注目を浴びた。果敢な経営を続ける同社はしかし、今世紀に入り本業消失という未曾有の危機に陥っていた。窮地に抗して未経験の化粧品開発に挑み、大ヒットを生んだ経緯をモデルに、社員たちの不屈の奮闘を描く迫力ビジネス小説。変われる者だけが生き残る。全ビジネスマンが今なすべきことがここに!
子供の頃、家族で行った海に臨むホテル。そこは母親にとって、一族の栄華を象徴する特別な場所だった。今も過去を忘れようとしない残酷な母と弟から逃れ、太一と結婚した奈津子は、久々に思い出の地を訪ねてみる…。車椅子の夫とめぐる“失われた時”への旅を通して、家族の歴史を生き直す奈津子を描く、感動の芥川賞受賞作。
紀州・熊野の貧しい路地に、兄や姉とは父が異なる私生児として生まれた土方の秋幸。悪行の噂絶えぬ父・龍造への憎悪とも憧憬ともつかぬ激情が、閉ざされた土地の血の呪縛の中で煮えたぎる。愛と痛みが暴力的に交錯し、圧倒的感動をもたらす戦慄のサーガ。戦後文学史における最重要長編「枯木灘」に、番外編「覇王の七日」を併録。
医者の家に生まれながらも、大きな志を抱く久坂玄瑞。やがて吉田松陰と出会うと、その才能は開花し、妹・文の婿に迎えられることに。だが、松陰が非業の死を遂げると、その運命は大きく変転。師の遺志を継いだ玄瑞は、高杉晋作らとともに尊王攘夷活動に奔走していくー。幕末の動乱をまっすぐに生き、維新の先駆けとなった若き傑物を活写した長編。文庫書き下ろし。