2016年6月3日発売
救われるのは、信じる者か、信じぬ者か。霊山・御嶽の麓の町で、悲惨極まりない人生を送ってきた少年、潤。山に棲まう神に会い、生きることの意味を問いたい…。積年の切ない望みを胸に、潤は誰もいない山へひとり姿をくらませてしまう。そんな潤を、強力の孝が思わぬ理由で捜索することになる。神を求め、信じる潤。長く山で暮らしながら、神を信じぬ孝。恐るべき大自然の猛威に翻弄されながら、二人が熱く命の炎を燃やすー。
優秀な外科医としての将来を捨て、個人病院の医師となった直江庸介。影をもつニヒルな彼に惹かれていく看護師の倫子。酒に酔い、女に溺れる直江の胸の底には、ある秘密が隠されていた。医療の世界を舞台に美しい文体で「愛と死」の本質に迫る代表作。
内憂外患の波が押し寄せる、京の都。幕府の存続を図るため、幕閣は尊王思想を増長させる『日本書紀』を秘かに焼き尽くす計画を進めていた。しかし、草莽の志を抱く植松頼助・猿投十四郎たち一団は、それを阻止すべく立ち上がる。さらに、人々に勤王の志を説くため、天皇の功績を摺り物にして頒布することに。尊王の志士たちと幕府隠密たちとの熾烈な戦いがはじまったー。
神書頒布を目論む植松頼助・猿投十四郎たち一団は、多くの同志たちの協力を得て、少しずつ頒布地域を広げていた。しかし幕府の隠密たちも容赦なく、彼らを追い詰めていく。凄惨な戦いに命を落とす者たち、そしてかつての仲間と相対することになった者が抱える苦悩…。それでも王政復古を願う、熱い思いの行方はー。構想十年、国とは何か、政とは何かをあらためて問う傑作時代小説。
女渡世人おまさは宿場の旅籠で親子三人連れと同宿し、娘のお玉に懐かれる。その夜、何者かが来襲しお玉の両親が殺害された。危うく難を逃れたお玉は不相応な小判を所持していた。宿帳に記された江戸の住処までお玉を送り届けることになったおまさ。追手が再びお玉を襲うが、偶然、九十九九十郎が窮地を救う。九十郎も内済ごとの絡みからおまさを捜していたのだ…書下し長篇時代剣戟。
小説とは現代を映す鏡であるー。著名作家から新鮮な顔ぶれまで、著者それぞれが多様な表現方法で、多彩に“今”を切り取った物語たち。2015年に各文芸誌に発表された全短篇の中から、読み巧者が議論を重ね、選んだのがこの16作品です。心を温め、鷲掴みにし、ときには棘を刺すなど、時間を忘れさせてくれる逸品揃い。至福のひとときをどうかお楽しみください。
あの女さえ、いなければー。篠田淳子は中学時代の同級生、佐竹純子が伊豆連続不審死事件の容疑者となっていることをニュースで知る。同じ「ジュンコ」という名前の彼女こそ、淳子の人生を、そして淳子の家族を崩壊させた張本人だった。親友だった女、被害者の家族、事件を追うジャーナリストのアシスタント…。同じ名前だったがゆえに、彼女たちは次々と悪意の渦に巻き込まれていく。
三重県の山奥、神去村に放りこまれて一年が経った。最初はいやでたまらなかった田舎暮らしにも慣れ、いつのまにか林業にも夢中になっちゃった平野勇気、二十歳。村の起源にまつわる言い伝えや、村人たちの生活、かつて起こった事件、そしてそして、気になる直紀さんとの恋の行方などを、勇気がぐいぐい書き綴る。人気作『神去なあなあ日常』の後日譚。みんなたち、待たせたな!
ガイドブック執筆のために京都を訪れたフリーライターの緋美花。取材で街を歩いていると、オスを感じる男と出会う。ベンチャー企業の経営者、寡黙な京人形師、茶道具屋の跡取りの坊や、SM愛好家…。彼らの指、口、身体に、ときに緩やかに、ときに激しく、緋美花は乱される。雅やかな空気につつまれた、匂い立つ官能が胸を揺さぶる傑作短編集。
新宿行きスーパーあずさの車内で、ペンション経営者の男性が毒殺された。目撃証言によれば、被害者の宮沢は死の直前に謎の女と会話をしていたらしい。長野県警刑事・道原伝吉は女の正体を探るために宮沢の故郷である蝶沢村へ向かうが、その生い立ちには深い闇があったー。北アルプスで起きた過去の不審死事件をも巻き込む、この悲劇の真相は!?
借金のカタに、ブラック企業以上にブラックな探偵社でタダ働きしている飯倉良一。コワモテ社長から無茶ぶりされて潜入するのは、美少女が身を隠すシェアハウス、癒やし系美女が働く日雇い派遣現場等々。そこでは想定外の事件と甘い誘惑が待っていて…。エロス、ユーモア、サスペンスが絶妙なハーモニーを奏でる、満足度120%、一気読み必至の痛快シリーズ第2弾!
村上水軍の流れを汲む名家に育ち、ピアニストを目指す少女・咲枝は、来島海峡大橋から飛び降りた母の死に疑問を抱いている。上京中の咲枝と偶然知り合った浅見光彦もその死に不審を覚えた。しまなみ海道を訪れた光彦は咲枝とともに、真相を求めて調査を開始するが…。美しい瀬戸内の島と海を舞台に浅見光彦の推理が冴える、傑作旅情ミステリー。
山奥の製薬研究所で謎の爆発事故が発生。泉夏樹は一命をとりとめるも全ての記憶を失っていた。研究所の同僚・黒崎ら生き残った仲間と脱出を試みる夏樹だが、その眼前に、理性を失い凶暴化した人々が突如襲いかかってきた!?息呑むアクションと隠された禁断の真実…最後の1頁まで驚きの連続!常識を揺るがす究極のバイオホラー×ミステリー。
毎年、同日同刻に鳩の死骸と人の死に直面する配送員の運命は?被害者の夫は、なぜ殺人の罪を被ったのか?契約中の駐車場が、なぜ不特定多数のドライバーに無断駐車される?公務員探偵“腕貫さん”が、市民が持ち込む事件の謎を鮮やかに解く。そしてグルメ仲間である女子大生・ユリエのピンチには…。単行本未収録1編を加えた文庫特別版。
アルバイトで南の島を訪れた涼介は、「ピンザ」と呼ばれるヤギの乳でチーズをつくる夢を追い始める。だが、その挑戦は島のタブーにふれ、男衆の怒りを買ってしまうー。敗北感にまみれたひとりの青年が、悪戦苦闘の果てに生存への突破口を見いだしていく、感動の力作長編!