2017年2月3日発売
千景とまゆ子。高校の同級生である二人は十年ぶりに再会し、思いがけず一緒に暮らすことになる。薬剤師の千景は、定年退職した大学の「先生」の元を訪れては、ともに線虫の観察をする日々。スナック勤めのまゆ子は、突然訪ねてきた「先生」の孫と、カタツムリの飼育を巡り、交流を深めてゆく。そんな中、高校時代の友人の結婚式が近づき、二人はかつての自分たちの「深い関係」と「秘密」とに改めて向き合うことになる。そして…?「生」と「性」のままならなさを印象的にすくい上げるデビュー作。第40回すばる文学賞受賞作。
元高校物理教師という異色の経歴を持つ神村五郎は、卓越した捜査能力により平刑事なのに署内では署長についでナンバー2の扱い。「第二捜査官」の異名を取る。相棒の新米刑事・西尾美加は元教え子だ。飛び降り自殺と思われた事件の真相に迫った「死の初速」。死体のない不可解な殺人事件を追う表題作「虹の不在」など四篇を収録。難事件に蒲田中央署の捜査官たちが挑む大好評警察ミステリー。
財政再建、農地開拓に生涯にわたり心血を注いだ米沢藩主、上杉鷹山。寵臣の裏切り、相次ぐ災厄、領民の激しい反発ーそれでも初志を貫いた背景には愛する者の存在があった。名君はなぜ名君たりえたのか。招かれざるものとして上杉家の養子となった幼少期、聡明な頭脳と正義感をたぎらせ藩主についた青年期、そして晩年までの困難極まる藩政の道のりを描いた、著者渾身の本格歴史小説。
家族・親戚とともに水上バスに乗り込んだ花嫁の津田隆子は、船上から忽然と姿を消してしまった。定刻を過ぎても隆子は現れず、新婦不在のまま披露宴を行ったのだった。新郎の池沢英二と同じ絵画教室の縁で出席していた浅見雪江は唖然。息子の光彦に事件を調べるように依頼するが、何の手掛かりも発見できなかった。数日後、築地の掘割で女性の死体が発見される。それは隆子なのか!?
谷村梢は小学校四年生を担任する補助教員だ。「カニは縦にも歩けます!」と理科の授業で実証し、注目されたのは、いじめられっ子・中尾文吾。梢に、スーパーである教師の万引きを目撃したと告げたまま下校。その日、文吾が襲われた。襲われる直前、梢の名前を呼ぶ声を近所の人が聞いていたという。梢に注がれる疑惑の目…。日常の謎が“深い”ミステリーに!表題作を含む魅力の七篇!
警視庁捜査一課の美女刑事、江仁熊氷見子。女の勘を武器に常人には理解しがたい直感力で事件を解決に導く彼女だが、頭の硬いベテラン刑事たちからはやっかみ半分の嘲笑を受ける日々。相棒で後輩の真山恵介は、戸惑いながらもエニグマに従ううちに、刑事としての尊敬の念、そしてさらには微妙な感情が芽生え…。「勘」で事件を解決??新“勘”覚警察小説待望の文庫化!
最強の美少女ハッカー“ゴースト”を追い詰めた。しかし逮捕まであと一歩のところで轟音が鳴り響き、気を失って…。目が覚めると「俺」が眼前にいた。ガラスに映った俺の姿はゴーストになっている。-なんと、魂が入れ替わってしまった!早く原因を突き止めなければ。特別認定犯罪者対策機関「特対」のレドは、魂交換者のゴーストと共に犯罪者の巣くう「迷宮街」へと乗り込む!
上野の美術館の前庭にある“地獄の門”の前で、水曜日11時に頼みたい仕事の内容を話すと“泥棒の守護神”が現れるという奇妙な噂が。半信半疑で訪れた、造形作家TOKIWAのマネージャー篠原健。彼女が亡くなり、噂を信じたくなったのだ。「盗んで欲しいのは、あの人の遺体と一緒に棺に納められてしまうもの」。だが何も起こらない。守護神などいない、そう思ったとき何かが手元に落ちて来てー。
出社すると会社が倒産していた。それを恋人に告げたら、出て行ってしまった(「竜宮電車」)。母親の言うことが窮屈だった少年は、ある文字がタイトルに入った本を集めると願いが叶うと聞き…(「図書館の鬼」)。人気がない神社の神さま。ハローワークで紹介された花屋で働くが、訳有り客ばかりが…(「フリーター神さま」)。現実に惑う人たちと不思議な力を持つ竜宮電車をめぐる三篇を収録。
愛くるしい表情を見せるかと思えば、ふいとどこかにいなくなる。猫という生きものはまあ、気まぐれなもの。そんな猫と人間たちが、江戸の町を舞台に織りなす喜怒哀楽。時代小説の名手たちによる傑作を、歴史小説家の気鋭・澤田瞳子がセレクト。時代小説好きはもちろん、猫好きの方々にもお楽しみいただける一冊。巻末に収録された解説『文学における「猫」の位置づけ』は出色。
平穏で地味に見えても、それだけですむ人生なんてない。同窓会の案内がきっかけで二十年ぶりに連絡を取り合った六人の女性。犬と暮らす失業中の領子、娘との関係に悩む明子、元恋人の死に夫が関わっていたのではと疑う穂乃香…深い感動が胸を打つ、終わりと始まりの物語。
小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。店主の弓子が活字を拾い、丁寧に刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い…。活字と言葉の温かみに、優しい涙が流れる、大好評シリーズ第二弾!
東京じゅうが濃い霧に覆われたある日の午後、帰宅途中の少年に近寄る黒い影。霧の中から現れたのは、怪しいこうもりのような灰色の紳士だった。少年に迫る魔の手、呪われた首飾りの謎、美しいバイオリニストの少女。大好評を博した少年探偵団オマージュ作品の文庫化第二弾。
浅草寺近くに佇む銭湯「明日の湯」の三代目当主・三助は大学生。時代遅れの銭湯なんか継ぐ気はないのに、失踪した父のかわりに仕方なく切り盛りしている。ある日三助は銭湯を訪れた美人に一目ぼれするが、彼女の正体は意外なものでー。お湯と人情が疲れた心と身体をあたためる、ほっこり銭湯ミステリー。