2021年7月7日発売
1995年、小学6年生の愛衣はウサギが好きなあまり、当番でもないのに同級生の珠紀と、ほぼ毎日飼育小屋へ行く(『クレイジー・フォー・ラビット』)。1997年、中学校の教室にある写真を持ってきた同級生の田中が、強烈な匂いを発していることに愛衣は気づく(『テスト用紙のドッグイア』)。2001年、高校3年になった愛衣は、両親と距離ができ、街で出会った1つ年上のエミとファミレスに入り浸る(『ブラックシープの手触り』)。2004年、大学3年の愛衣はバイトの仲間が行った旅行先で地震が起こったことをニュースで知る(『クラッシュ・オブ・ライノス』)。2018年、結婚し子も生まれた愛衣は、幼稚園で娘が友達を否定するような発言をしたと連絡を受ける(『私のキトゥン』)。嘘や秘密を敏感に嗅ぎ取ってしまう愛衣の五つの年代と、ままならない友情を描いた切実な連作短編集。
家庭内暴力をふるい続ける父親を殺そうとした過去を封印し、孤独に生きる文也。ある日、出会った女性・梓からも、自分と同じ匂いを感じたー家族を「暴力」で棄損された二人の、これは「決別」と「再生」の物語。
ある日、名香子は夫の良治に連れられ、都立がんセンターに行った。肺がんの診断を受けた良治は、好きな人ができたのでその人と治療をすると一方的に告げ、その場を立ち去った。呆然とする名香子だったが、事態は“蝶の羽ばたき”のように思いもかけぬ方向へと進んでいくのだった。コロナ禍の家族小説。
シャーロック・ホームズの翻訳者だった父が倒れ、四姉妹の末っ子リブロは家族の歴史をたどりなおす。時空を超えて紡がれる、風変りでいとしいファミリー・ストーリー。
大火からの復興の要として照降町の人びとの支えとなっている周五郎だったが、小倉藩の派闘争いの中、実兄が暗殺される。藩の行く末と町での暮らしの間で揺れる周五郎、その周五郎がいずれ去ることを覚悟する佳乃ー。勇気と感動の物語、ついに完結!
あなたの心で鳴っている音に、あなたは、きっと気づいていない。島を出て行った初恋の人を想い続ける郵便屋さん、音楽を捨てて都会からやってきた元ミュージシャン、島の神様の声が聞こえるババ様…彼らの心にはどんな音楽が?人の心に流れる音楽が聞こえる、風変わりな店主が、南の島の小さな店で、お待ちしています。感動の涙、再び。
長年の目標だった、長編小説をついに書き上げた。しかしー眠る妻の枕元に、原稿を置いた。気づいてもらえない。芸術家になった後輩を呼び出した。逆に、彼の作品の感想を求められる。仕事仲間のディレクターに的を絞った。仕事の悩みを相談される。初恋の女性から連絡がきた。お願いする前に、“お願い”された。誰かに、読んでほしい。誰でもいいから、読んでほしい。読んでほしいだけなのに!誰に会っても、自分の話を切り出せない。気づくと、相手の話を聞いてばかり。はたして、この小説は、誰かに読んでもらえる日が来るのだろうか!?
1964TOKYO。戦後復興を遂げた日本、抜けるような青空のもと、オリンピックが開かれた。大学生の葉子は恋をしていた。相手は学生運動のリーダーで、故郷に婚約者がいた!告白か、断念か、募る想いに苦悩する葉子、恋の行方は…。