2024年9月5日発売
蛙や蛇の言葉が聞こえる小学生の美苑は、大学教授の父と華道家の母と住むお屋敷の中庭で、小さい生き物たちの言葉に耳を傾けるのが日課だった。一方、人付き合いは苦手で空気が読めず、クラスに友達はほとんどいない。父の同僚だった児玉先生からイグアナの子供の飼育を託された美苑は、彼女に「ソノ」と名付け、平穏な日々を送ってきた。しかし二十四歳のある日、母から突然、驚愕の通告を受けることになり…。厄介な人間関係を温かく描く、爬虫類系ハートフルノベル。
母を病で失った五歳の「僕」は、いくつかの親戚の家を行き来しながら幼稚園に通っていた。大人たちが差し出す優しさをからだいっぱいに詰め込み、抱えきれずにいた日々。そんなとき目の前に現れたのは、イギリスからやってきた転入生のさりかちゃんだった。自分と同じように、他者の関心と親切を抱えきれずにいる彼女と仲良くなった「僕」だったが、大人たち曰くこれが「初恋」というものらしく…。コンビーフのサンドイッチ、ひとりぼっちのハロウィン、ひみつの約束、悲しいバレンタインデー。降り積もった記憶をたどり、いまに続くかつての瞬間に手を伸ばす。第45回野間文芸新人賞候補作となった『息』に続く、注目の若手による最新中編。
50代の主婦・佐々木瞳は兵庫県のマンションで夫と二人で暮らしていたが、2018年に母の京子と同居することに。コロナ禍中に母が急死すると、空き家になった実家や相続、家族の問題に直面する。実家の整理や売却に向けての準備を進める中、中学の同級生で自称“空き家ウォッチャー”の和江とともに空き家が活用されている事例などに触れていくがー。「家」をめぐる家族の物語。
警視庁生活安全部少年事件課の山内が暴力団員に捜査情報を流しているとの密告が人事一課監察係に届く。同僚の佐良、皆口とともに監察官の能馬から事前監察を命じられた若手の毛利。行確に向かった新宿歌舞伎町にはトー横キッズが集まり、中学二年の孤独な少年・三崎は偶然預かった薬“あれ”を闇で売ろうと謎の少女・美雪に持ち掛けられていた…。ジンイチ、新たな戦いへ!
「お別れをしたいと思ってまいりましたのー今までの私に」-周囲から悪女と噂されながらも、第二王子の婚約者として誠実に務めてきた侯爵令嬢のアウレリア。しかしある日、乗っていた馬車が転落し、世間では亡き者とされてしまう。この一件に婚約者や異母妹が関わっていることを知ったアウレリアは、あらゆる策を講じて彼らを破滅へと追い詰めていき…。「悪女?今の私にとって最大の誉め言葉ですわ!」疎まれた令嬢が悪女として舞い戻る、華麗なる大逆転劇が幕を開ける!