著者 : かわい千草
正月の京都。ユウリ・フォーダムの初夢は、どこか古めかしい時代の誰かが、ピンを買い損なうというものだ。使用人らしきその者は「主人が奥様に渡すためのものだった」と大いに嘆くのだった。 それからしばらくして、セント・ラファエロでは、図書館の本棚奥にあったラペルピンを見つけた生徒のひとりが、それをこっそりわがものとしてしまう。以来、夢の中に夜ごと美しい女性が現れるようになったその生徒は、やがて衰弱していく。 アシュレイの協力を得たユウリとシモンは、生徒が隠匿したラペルピンに夢魔が取り憑いている事実を突き止め、対策に乗り出すが……。 『古都妖異譚』でも活躍中のユウリ、シモン、アシュレイの、セント・ラファエロでの知られざるエピソードが、書き下ろし特別編として登場!
貴公子シモン・ド・ベルジュが、ロワール河流域の城の倉庫で見つけたのは、変わった形の小瓶。「この蓋、開けるべからず」の注意書きが添えられたそれには、財宝のありかを教える悪魔が封じ込められているらしいが…。(書き下ろし作品「カタツムリの軌跡」)。ほかに文庫未収録作品「ユウリ・フォーダムの探しもの」「コリン・アシュレイの片づけもの」も入った、ファン待望“欧州妖異譚”シリーズ、珠玉の特別編!
貴公子シモン・ド・ベルジュが不思議な縁で借りることになった日本の賃貸物件は、港町横浜にある、いわくつきの古い洋館で……? (書き下ろし作品「黄色い館の住人」) 日本を舞台にした、完全書き下ろし新作「黄色い館の住人」のほか、文庫未収録作品(※下記参照・加筆修正あり)も多数収録する《欧州妖異譚》シリーズ特別編! 〈収録作品〉 「黄色い館の住人」 「ロワールの羊はニ乗の夢を見る」 「横濱ラプソディ」 「修行場の異邦人」 「シモン・ド・ベルジュの人には言えない秘密の事情 」
かすかに春の息吹が感じられるようになってきた季節。エリザベス・グリーンに心を奪われているナアーマ・ベイは、ある男から取引を持ちかけられた。赤いリボンを彼女に渡せば、巡り巡って彼女はお前のもとにやってくると。男は、その代わりにあるものを「ミスター・シン」の店に持っていくよう指示する。エリザベス、ベイは男の遠大な策略の駒だった。男の正体は果たして?そしてユウリは二人の危機を救えるのか!?
日が暮れた冬のロンドン。かつてユウリを拉致監禁し、万華鏡の謎を聞き出そうとしたナアーマ・ベイが突然現れた。自分は黒魔術を使う秘密結社から足を洗ったが、共に属していたマーカス・フィッシャーが組織を裏切り呪いをかけられたことを告げるためだった。生ける屍のような姿でユウリの目の前に現れたマーカスは、対抗魔術を知るアシュレイに連絡を取り助けを求めていることを伝えて欲しいと懇願する。
セント・ラファエロ時代の物語が蘇る! シモンが寮長を務めるヴィクトリア寮のアフタヌーンティーでは、あるラッキーな生徒の話題で持ち切りだった。恋が成就し、ヤマ勘で挑戦した学期末試験では三位の成績をおさめたのはグリオン。彼についているのは「幸運の女神」なのか? 数日後アシュレイは同じような幸運に恵まれたのち、不運な最期を迎えた過去の寮生の話を聞いた。そこには「木製の車輪」が関係しているようだ……。ユウリとシモン、そしてアシュレイはその謎を突き止めようと、歴代寮長の記した寮長日誌を繙く。 新作の「フォルトゥナの車輪」に加え、ファン垂涎のショートストーリー三編を大幅に改稿した篠原美季の自選集第二弾!!
咲き誇る牡丹の園には秘密が隠されているーー。 シモンがユウリの故郷・日本で不思議な体験をする三つの物語。 シモンの双子の妹たちの社交界デビューが決まった。衣装には日本の着物生地を取り入れたいというベルジュ家母娘のこだわりで、シモンはユウリと共に老舗呉服屋で相談することになったが、店内で突然神隠しに遭う。同じ頃アシュレイは没落貴族のいわくつきの品を手に入れていた。手にしたものに災いをもたらすという品はシモンの失踪と関係があるのか!? 書き下ろし作「瑞鳥の園」に加え、ショートストーリー二編を収めた著者初の自選集。
秋期休暇である「リーディング週間」のタイミングで、シモンに一族の式典に招かれたユウリ。ベルジュ家の敷地に入ると、そこには巨大な室内迷路が作られていた。一族の子供達を楽しませるためのものだったが、ハロウィンの晩に三人が行方不明になってしまう。この地で18世紀にあった、人喰い鬼がでるという迷路と関係があるのか? 子供を探すユウリは死者の導きにしたがい、迷路の先に進む。そこで見つけたものとは!?
秋の気配が漂うロンドン。パリの情勢が不安定なためフォーダム邸に泊まっていたシモンは、ベルジュ家秘蔵のダイヤモンドを大英博物館に展示する交渉を任されていた。交渉当日、シモンとの待ち合わせで大英博物館に来たユウリは、偶然奇妙な形の石を拾う。それは古代メソポタミアと現代を繋ぐものであり、世界の崩壊にもつながる代物だった。ユウリは大切な人々を守るため不思議で危険なゲームに身を投じた……。
季節は初夏。ハリウッドデビューが決まったオニールに誘われ、ユウリとシモンは友人達と一緒にニューヨークへとやってきた。仕事で忙しいシモンとは別行動で、ユウリはオニール達とともに「呪われた館」として地元で有名なウッドポール・ハウスに滞在することに。その館は、かつて持ち主が悪霊から逃れるために建て増しを繰り返したという。行方不明者も出ているという館でユウリが遭遇したものとは!?
「恋する石」というウェブサイトで、夢が叶うと評判のパワーストーン・アクセサリーを製作販売しているオリヴィア。彼女が身に着けたハーキマーダイヤモンドを見たユウリは、その石が特別なものだと感じた。一方、ベルジュ家所蔵の宝石類が、ルーブル美術館で企画展示されることに。シモンはアシュレイから、タイタニック号と共に沈んだベルジュ家に因縁のあるダイヤモンドが引き上げられたという情報を得るが。
チェルシーで開催される世界的なフラワーショーで、樹木の精霊「緑のジャック」の目撃が相次いでいた。シモンと会場を訪れたユウリは「願い事の木」という展示の側で、行方不明になっていた少女を見かけ手を差し伸べるが、触れ合う直前に彼女は消えてしまう。一方、アシュレイはウエストエンドの骨董商に頼まれ、何かが封印されていた木箱を探すことになるが。三人は、精霊と木箱の秘密を解き、少女を救えるか?
ユウリのパブリックスクール時代の後輩で、現在はケンブリッジ大学で学ぶセイヤーズ。彼と同じ学寮のフィッシュボーンが、いわくありげな手書き写本を手に入れた。その本を切り売りしていた彼は、不可解な交通事故に遭い、写本は行方不明になってしまう。ユウリは父の公開講義のためケンブリッジを訪れ、その交通事故に修道士の幽霊が関わっているという噂を聞く。ユウリたちを巻き込み事態は思わぬ方向へ!
ロンドン、ヒースロー空港の上空で目撃された龍。東洋風の蛇に似た姿のそれは、ユウリたちの母校・セント・ラファエロの上空でも生徒たちに目撃された。その後、降り続く雨。総長となったアーチボルト・シリトーは「フォーダム級」の異変を察知し、ユウリに事態の正常化を依頼。ユウリは母校を訪問する。その頃ロンドンでは、シモンの弟・アンリが行方不明に。ユウリは龍の謎を解き、アンリを救えるか?
セント・ラファエロ時代のユウリの友人、アルフレッド・ロウ。著名な占い師を祖母に持ち、本人もタロットが得意な彼は、祖母が相続した遺産の手続きをする際、ユウリに同行を求めてきた。遺産には「隠れた問題」があり「カップの従者」が必要になるというのだ。シモンに紹介してもらった弁護士と共に南仏に遺された家を訪ねた二人。ユウリはそこで不思議な形の指輪を手にし、パリにあるもう一つの遺産の存在を知る。
シモンの双子の妹たちが、ユウリへの贈り物にするためネットオークションで落札した万華鏡。覗き窓の周りにラテン語で「百の目が見る」と刻まれたそれは、実は盗品だった。女性遍歴からか「青髭公」と呼ばれるニューサム伯爵は、アシュレイに盗まれた万華鏡捜しを依頼。シモンの許にはアンジェレッティという男が、ユウリの前にも若い男が万華鏡を求めて現れた。三人の男が執着する万華鏡に隠された秘密とは?
待降節に華やぐロンドン。一年に一度の新人デザイナーとモデルの卵たちによるファッションショーが行われた。スーザンは、そのランウェイを歩くことに賭けていた。だが夢は叶わなかった。失意の彼女の指には、エジプトで拾った赤い石がはまった古い指輪が、禍々しく光を放っていた。一方、ウエストエンドの骨董商ミスター・シンの店で異変が起き、アシュレイが巻き込まれてしまう。ユウリはシモンの力を借りて、スーザンとアシュレイを救えるか?
ハロウィーンを前にしたロンドンの街角。ユウリは、困り顔で座り込む奇妙にクラシカルな装いの青年から「一緒に林檎を捜してくれないか?」と頼まれる。パリでは、シモンが怪しげな結社に所属するルイ=フィリップから林檎を渡せと迫られ、シモンの従姉妹ナタリーの周囲でも、林檎が謎を呼ぶ。一方アシュレイは、林檎が描かれた妖しい書き物机を託されるが。皆が捜す「林檎」とは?果たして林檎は誰の手に?
新学期。シモンは、数学の天才・ジャック・パスカルと邂逅した。彼は、マンチェスター近郊にあるオコーナー家のマナーハウスで開かれるホームパーティーに出席。その帰路、ロンドンに住むユウリを訪ねたいと話した。だが、ユウリの前には姿を現さず、帰寮後は、部屋に引きこもってしまう。才能と栄光をもたらすというオコーナー家の失われた家宝「ウェーズリーの水晶」を捜すアシュレイ。パスカルを異変から救いたいユウリ、シモン。謎の鍵は、マナーハウスに!