著者 : とろっち
交通事故に遭うところを「高木茜」と名乗る女性に助けられた水原透流は、お礼をするため食事に誘う。そして意気投合した二人は、交際を重ね親密な関係を築いていくのだが、同時に透流は茜が時折覗かせる物憂げな表情に不安を覚えはじめる。透流はその気持ちを払拭しようと茜と愛を育くもうとするが…。茜には透流が想像もできない大きな秘密が隠されていたー。運命に翻弄される二人のあまりに愛おしく、あまりに切ない至極の純愛物語。
5月28日、日曜日。弁天島にかかる橋の上で不思議な光る綿星に触れてから、僕と莉央は同じ5月28日を繰り返している。これは僕の望み。「今日」が続く限り、莉央の命が消えることはない。病院を抜け出し二人でどこへ出かけても、誰に迷惑をかけることもない。僕たちは永遠につづく日曜日の中で幸せでいられる。しかし同じ時間を繰り返す度、僕の中から莉央との思い出は消えていき…。これは「繰り返し」の代償なのか?それともー。人の願いを叶える綿星が見せた、恋人達の奇跡の物語。
ここは、見渡す限りの水平線(ホライゾン)。たくさんの人間たちで賑わっていた、《セジング》は見あたらない。海獣『カリブディス』によって水底へ沈没した。 絶望的な状況下で、アキは、《セジング》住民の生存を信じ、そしてオルカが失った《シャチのぬいぐるみ》を探し出す決意をする。アキに残された唯一の手段は、何の道具にも頼らず、自分の力だけで海の中へと身を投じる……《潜水》による捜索だった。 ーーボクは、必ず見つけ出す。
「大丈夫。助けはきっと来るよ」 見渡す限りの水平線(ホライゾン)。浮き輪もなしで波間に漂う少女・アキと、もう一人。疲労は、限界だった。『溺死』という不吉な二文字が、脳裏をよぎる。 「……来ないと、思います」 波間にぽつんとたゆたう二人。海と空。二色の青しか存在しない現代(アフター)で、漂流者を助ける者は漂流者自身しかいない。 「大丈夫。絶対助かるよ」 「助かりません」 二人の周囲には、海面から太いケーブルが脱出を遮るように突き出し、漏電によって稲妻のように輝いていた。ケーブルの上には、獲物の命が尽きるのを待つ猛禽の眼もあった。 少女が悟ったように、微笑みながら言った。 「助けは『絶対に』来ないんです。ここは……セントゥリア海峡ですから」 絶望的な状況の中でーー二人の「生きるための戦い」が、始まる。
すべての『陸』は、水底(みなぞこ)に沈んだ。透き通る蒼い海と、紺碧の空。世界の全てを二つの青が覆う時代、『アフター』。 セイラー服を着て『海の男』として生きるボクは、両親の形見・愛船パラス号で大海を渡り荷物を届ける『メッセンジャー』として暮らしていた。そんなボクに、この大海原は気兼ねなくとびきりの『不運』を与えてくる。 --『白い嵐』。 無情にも襲いかかる自然の猛威。それは、海に浮かぶ全てを破壊した。 愛船パラス号を失い、ボクが流れ着いたのは孤立無援の浮島。食糧も、水も、衣服も、何も無い。あるのは、ただただ広がる『青』。ここに、助けは来るのか、それともーー それは、いつ終わるとも分からない。ボクの『生きるための戦い』。