著者 : 入間人間
2月4日、バレンタインデー10日前。放課後に二人で出かけたモール内のドーナツ屋の前で、安達が聞いてくる。 「14日に、しまむらはなにか、用事ありますか?」 「ないですけど」 「ないなら、14日に、遊ぼうという……」 鼻の上に加えて、手の甲まで真っ赤に染まっていた。そんな安達の決意や覚悟に感心して、私はこう応える。 「いいよ。今年はバレンタインをやっちゃおうか」 2月14日までの10日間。安達のどきどきな10日間が、しまむらの日常に彩りを与える。そんな二人のお話。
男子校、だ。頭髪の自由はなく(例外あり)、携帯電話は悪の枢軸で、もちろん華やかな青春なんて皆無。三年間、僕らが進み続けるのは砂の海。そんな男子校に、訳あって集ったのは、全く意味のないイケメンフェイスを持つ長髪野郎、モンゴルから柔道のために砂漠に来た留学生、高校生の代名詞である丸坊主の元・野球少年、そして、そんな悪友たちと青春を謳歌する僕だ。四人が歩くその先には、無限の砂漠と蜃気楼の美女しかいない。今日も僕らの雨乞いが始まる。
この星にはふわふわさんという存在がある。生き物かどうかは今のところ分からない。でも、人の形をしてこの地に立つ。すべてのふわふわさんは、失われた者の姿を真似して、存在する。僕としては、いわゆる『よみがえり』なんてものは信じていないけれど……。 目の前で、綿毛が渦を巻き、幼い少女が現れた。 『ふわふわさん773』。 僕は思考のノイズに延々、苛まれ続ける。あれは見間違えるはずもなく。十年前に僕の世界から失われた、ねえさんだった。
高校生・首藤祐貴は、発砲事件を起こし逃走、謎の殺し屋・木曽川と出会う。 小学生・時本美鈴は、銃撃相手を探すうち、不思議な歌手・二条オワリと出会う。 陶芸家・緑川円子は、金髪青スーツの弟子と個展を開く準備をする。 殺し屋・黒田雪路は、その殺害ターゲット・緑川円子と至近で相まみえる。 駄目大学生・岩谷カナは、ふと拳銃を捨てようと考える。 そして、探偵・花咲太郎は、相変わらず閃かない。 6丁の拳銃を巡って、6人の運命は回る。
俺と敷島の二人で、どうにか成し遂げた『ゲームクリア』は、次なるステージのスタートでしかなかった。延々と繰り返される『ゲームオーバー』を経て、ついに巨大怪獣を倒した俺と敷島が、ほっと一息ついたのも束の間。「セーブしました」というメッセージと、謎の「スキル獲得」イベントが発生した。そう、ステージ1をクリアしたとしても、この『ゲーム』の世界から抜け出すことはできなかった。つまり、次なる敵がやってくるのだ。それは、大量の刺客を擁する『ラットマン』と、血の雨を降らせてくる『ねずみおとこ』だった。『ルート分岐』まで引き起こした非情極まりないこの状況は、残念ながら『現実』だった。俺と敷島の、強くないままの『ゲーム』は繰り返される。
今まで興味なんかなかった。ないフリをしていた。だれにも、なにもほしがらなかった。だけど今年は違う。私が初めて願うクリスマスプレゼントは、しまむらとのクリスマスだった。 今までなんとなく毎年過ごしていた。強い関心があるわけでもなかった。だけど今年は違う。少し気を遣って、安達へのクリスマスプレゼントを選ばないといけない気がしていた。
「俺は正しいことをやっている」その確信と同意を得られないまま、引き返せない道を進む少年、五十川石竜子。少年は正当性を得るため、『始祖の血』を持つ者との接触を図ろうと動き出す。「私は正しいことをやっている」そのつもりで生き続けてきた殺し屋、ナメクジに開花する、新たなる力と『呪い』。力に引き寄せられて生まれる出会いがもたらすものに、彼女は尚も翻弄される。そんな二人の行き先が交差した場所に、待ち受けるのは姉妹。元AV女優の姉と、友人A、であったはずの妹。訳あり姉妹は縁ある二人に問いかける。「あなたはなにをやっているんですか?」
昼休み前の平和な教室を、突然巨大怪獣が襲った。俺は、踏みつぶされて死んだ。-直後。謎のカウントダウン表示と、コンティニュー選択の画面が視界に現れた。「Yes」の表示を選ぶ。すると、昼休み前の、『死ぬ直前』の教室に戻った。つまり、生き返った。そして、俺と敷島さんの二人だけが気づく。この世界が『ゲーム』だということに。再びあの巨大怪獣が襲ってくるということに。謎のカウントダウンの数字がゼロになるまで。俺たちは、強くないままニューゲームを繰り返す。
体育館の二階。ここが私たちのお決まりの場所だ。今は授業中。当然、こんなとこで授業なんかやっていない。 ここで、私としまむらは友達になった。好きなテレビ番組や料理のことを話したり、たまに卓球したり。友情なんてものを育んだ。 頭を壁に当てたまま、私は小さく息を吐く。 なんだろうこの気持ち。昨日、しまむらとキスをする夢を見た。 別に私はそういうあれじゃないのだ。しまむらだってきっと違う。念を押すようだけど、私はそういうあれじゃない。 ただ、しまむらが友達という言葉を聞いて、私を最初に思い浮かべてほしい。ただ、それだけ。
自身の目の色を自在に変える、ただそれだけの偽りの力『リペイント』で、偽りの『王』を演じた五十川石竜子。彼は、カルト宗教教祖の少女・シラサギを打倒するため、同じくカルト宗教団体で教祖が不在となった『ニュートラル友の会』の制覇に乗り出した。カワセミから受け継いだ白装束を纏い、新教祖を名乗って布教に励むトカゲ。そんな彼の前に、復讐対象であるシラサギがやってくる。彼女の目的は、トカゲとのデート!?一方、もう一人の復讐者・殺し屋ナメクジは猪狩友梨乃との奇妙な付き合いに辟易していた。他人の考えを読む友梨乃に苛立ちを覚え、限界を感じていたそのとき、『最強の殺し屋』の一人、ミミズが襲来する。強大な超能力を駆使してナメクジを追い詰めるミミズ。能力を持たないナメクジは、懸命に逃げようとするが、その先にデート中の少年少女がいて…。
なんとなく『彼女』を好きにならないといけない気がする。そのためには『彼女』と一緒にどこかへ出かけたり遊んだりしないといけない。今年で俺と彼女は大学三年生。この一年をのんきに過ごしてしまったら、就職活動も控えて、顔を合わせる機会は激減するだろう。だからその一年の間に、俺は『それ』を見つけたいと祈った。これは、優柔不断な大学生の『俺』が過ごす一年間の記録だ。必ず、一年の間に見つけなければ。彼女を好きになる方法を。
(1)黒田雪路 ── 二十代前半の青年。殺し屋。拳銃の持ち主。依頼を受けて、女性陶芸家の暗殺を企み中。 (2)岩谷カナ ── 大学六年生(誤植ではない)。駄目人間。拳銃の持ち主。働くために外出中。 (3)首藤祐貴 ── 高校三年生。気になっていた片想いの相手の跡を追いかけ中。 (4)時本美鈴 ── 小学六年生。顔立ちが整った少女。拳銃の持ち主。『嫌いな人』 ランキングの六位を殺そうと街を徘徊中。 (5)緑川円子 ── 陶芸家。頭には常にタオルな妙齢の女性。年齢不詳な、金髪青スーツな弟子と、個展会場に向かい中。 (6)花咲太郎 ── ロリコンな 「閃かない探偵」。依頼され、なくしてしまった拳銃を捜索中。 6丁の拳銃を巡って、6人の運命が、今転がり始める。
『携帯電波』-少女が台所で偶然見つけた携帯電話。耳を傾けた向こう側には、もう一人の自分がいて…。『未来を待った男』-この時代にタイムトラベラーを呼び寄せる。それが男の目標だった。『やり直したいことがある』のだという。そして、ついにその時が訪れる。『ベストオーダー』-四人の俺が、同じ場所に現れた。自分自身が複数いるこの状況を前に、俺達四人はしばし考えた後、全員で共謀し、『完全犯罪』を企てる。ほか、書き下ろし短編『時間のおとしもの』を含む、時間に囚われた人間たちの、淡く切ない短編集。
世界を塗り替えるはずだった俺の野望は、右目と共に消失した。あの日、ビルの最上階で『神様』の少女に勝負を挑んで、そしてあっさり負けた。もう二週間ほど前の話だ。そして俺はーヒキコモリになった。ん?世界を支配?できるわけねーだろそんなの。あんな殺し屋どもに、なんで太刀打ちできるんだ。中二なめんな。だけど明確に分かったことがある。敵はあの『神様』だ。いつか、この左目ー『リペイント』を、『神様を倒す能力』にしてみせる。…ただ、もう一つ気づいたことがある。この力は戦うことに向いていない。だから、俺はもう戦わない。そうして自室でこっそり復活を目論む俺だったが、なぜか目の前にエロい巣鴨とエロイDVDが!?意外な展開が待ち受ける学園異能第二弾。
気づけばわたしは声を張り上げて、名前を呼んでいた。時間旅行。それは、『過去』の改変だった。わたしたちの改変の代価は、傷だった。歯車の迷宮に迷い込み、その身を四方からずたずたにされていくほどの。
小さな離島に住む僕。車いすに乗る少女・マチ。僕とマチは不仲だ。いつからかそうなってしまった。そんな二人が、変わったおっさん(自称天才科学者)の発明したタイムマシン(死語)によって、過去に飛ばされた。