著者 : 入間人間
あの頃の僕らはまだたくさんの高いものに世界を囲まれて、息苦しさを覚えていた。自由に走り回っているようで、ふと気づくと自分がどこにも行けないような気がして焦り、苛立ち、空を仰いでいた。僕らが『魔女』に出会ったのは、そんなときだった。あれから数年、自殺したはずの稲村が突如生き返った。思い返すのは、例の魔女のこと。あの場に居合わせた僕ら六人は、どうやら命をひとつ分だけ貰っていたらしい。一度だけ復活できる。なら命ひとつ犠牲にして、僕らに何が成し遂げられるだろう。
『人は水の中でも、空の向こうでも息苦しくて生きられない。大地を愛せ』それが現在に至るまで受け継がれた部族の教え。だけどわたしは海を愛した。集落の嫌われ者なわたしは生け贄となって、海の底に沈む神の岩へ向かう。そこで出会ったのは、長い眠りから覚めたばかりの自称神様だった。「私はあなたと旅に出たい。ずっと遠くに行きたい。この世界で、生きていたい」独りぼっちの少女と、無知な神様の少女の、ガール・ミーツ・ガール、ストーリー。
これは終わった物語。夢と人生を食いつぶされたそれからのお話。「みーくん」と「まーちゃん」のその後と彼らの子供たちの運命ー。
「こういうのが初恋なんだなって、思いましたっ」 いつも背中を追いかけていた、あの人への『憧れ』。夢の中で一緒に過ごした、海辺でのあの子との『友情』。傷つけてしまったあの人への、伝えられない内緒の『想い』。私の好きな人は、私以外の人も好きなのだろうか。たくさんの人と物の中で、その女の子を好きになっただけ。もどかしい想いを描く、少女たちの可憐な物語。
しまむらと付き合うってことは、うーん、まず、い、一緒に登校するとか……でいいんだよね……。でも、何時に迎えに行けばいいのかな。自転車どうしよう……しまむらは歩きだし……早く学校始まらないかな。 安達と付き合うことになったけど……、何か今までと変わるのかなー。……安達は変わるんだろうか。でも、付き合うってどうすればいいんだろ。うーんよくわかんないな。大丈夫なのかね。 お祭りでの告白から、彼女と彼女になった二人。夏休みも明けて新学期。これまでとちょっと違う高校生活が始まる。
小説家になるという夢を叶えた妹。その事実は俺の存在意義を揺らがせた。弱い妹が好き。そして、妹に頼られる自分が大事。そんな独りよがりな想いに気付いたところで人生は引き返せない。だから俺は、妹と二人で一緒に暮らし続けることに決めた。俺には妹しかいない。これまでも、これからも。親から見捨てられても、世間から白い目で見られても。なるほど、気持ちの悪い兄妹だ。だけど血肉を分けた妹に人生を捧げて寄り添い抱き合って我が道を行く。妹と過ごし続ける、ただそれだけ。俺の人生はこれで満足だ。それが俺の、いもーとらいふ。依存し合う二人の“一生”を描く、ちょっぴり苦い兄妹ラブコメ、完結編。
夏休みの終わり。妹が俺に泣きついてきたのは、あちらが六歳で、こちらが十歳のとき。珍しく側に寄ってきた妹の手には日記帳の表紙があった。目が合うとおずおずそれを差し出してきて、「てつだって」と、か細い声でお願いしてくる。俺と妹の関係が始まったのは、その瞬間だと思った。泣き虫で、根性がなくて、ぼーっとしてて、友達もいない、心配で放っておけない存在。-それが妹だった。「わたしのじんせーは、にーさんでほとんどだもん」幼少時代からの成長、そして大人になるなかで選択した人生ー。離れられない二人の“一生”を描く、ちょっぴり苦い兄妹ラブコメ。
生涯最後の決闘ー。相手は幼き頃からの同門。敵意を向けて腕を磨き合った、我が半生の片割れ。かつて一度として剣を届かせることのできなかった仇敵。どちらが真剣での決着を言い出したのか。とにかく、確かに私は斬られたのだった。だが気付けば、私は果たし合いの直前に戻っている。斬り殺される度に、時間は巻き戻される。私の振るう剣が、あの男に届くまで。不可解な現象に巻き込まれた“死に戻り”の剣士が辿る、数奇な半生とはー。
夏休み後半。安達のしまむらへの想いは高まりーー。 女子高生二人の日常が、ほんの少し動き出す。 喧嘩の仲直りを経て、元の関係に戻ったかに見えた安達としまむら。しかし、安達のしまむらへの想いは、現状維持で満足することを許してくれず、流されるのでは無く、自ら先へ先へと進もうとしていた。 「しまむら、遊ぼう!」「え、無理無理。お盆は祖父ちゃんたちの家に行くから」 「そうなんだ……何泊?」「三泊四日の予定でございます」「じゃ、じゃあ。四日後、また来ても……」 「あー、じゃあ帰ったら電話するから」「待ってる」 しまむらを待ちきれず、電話とメールで連絡をしてしまう安達。そんな様子に、しまむらの中でも安達への想いが変わりつつあった。そして迎えた花火大会の夜。浴衣を身に纏い、お祭りの喧噪の中を歩く二人。安達のしまむらへの想いは、花火とともに大きく舞い上がる。
高校生・首藤祐貴は、拳銃の売人と出会う。そして資質を買われ『次なるターゲット』を依頼される。さて彼の決意は?陶芸家・緑川円子は、弟子の金髪青年の妹と犬をかくまうはめになる。緑川は、仕事の邪魔をされてうんざりの様子。殺し屋・黒田雪路は、首藤を仇と考える小泉明日香と朝食を取る。黒田は、また面倒事が増えた、と思った。駄目大学生・岩谷カナは、持っていた拳銃のせいで拉致監禁され、生命の危機を迎える。彼女の望みの綱は、『丸い犬』。探偵・花咲太郎は、二条オワリとともに、カナと『丸い犬』の行方を捜し始める。花咲は相変わらず閃かない。小学生・時本美鈴は、殺し屋・木曽川につきまとう。理由は、暇だから。文句を言われたら、銃で撃てば良い。終焉、間近。
高校二年の夏休みはイベントがいっぱい。 安達としまむら、二人で過ごす二度目の夏。 夏休みはしまむらと会えなくなる……お祭りに行ったり、プールで泳いだり、一緒にアイス食べたり、やりたいことがいっぱいありすぎて……そうだ、やりたいことリストだ! かきかきかきかき……。 夏休みはいいものだ。なにがいいって朝、無理して起きなくていい。でも、やることがなくて、時間が過ぎるのが遅い。安達は何をしてるんだろ。バイトかな。っと、電話だ。花火大会? 別にいいけど──。 安達としまむらの夏休み。去年とは少し違う、高校二年の夏休みが始まる。
その美少女は人斬りだった。祖父の家に『刀』が飾られていて。それを振るう『性』を持ち。『力』があることは運命なのだと。彼女は信じて疑わない。かつて「事故」で両腕の機能を失った女子高生・春日透は、人を殺してみたいと願っている。世界に害を為す「超能力者」は一人残さず斬り殺す。辻斬りを邪魔する奴も全員殺す。そうして日本刀を口に咥え、彼女は今宵も獲物を探し回る。だがある日、彼女が一度殺し損ねた男が、復讐のために近づいてきて…。愛憎が交錯する、本格異能バトル!
桜の季節、しまむらと同じクラスになれた。でも、しまむらは近くの席の女子とお昼を食べるようになった。……なんか嫌だな。私はどうしたらいいんだろう。 ある日の昼休み。近くの女子集団に声を掛けられた。なんとなく安達の方を見ると、目が合った途端、顔を逸らされた。女子集団の輪に入り、もう一度安達の方を見たら、一人で教室を出て行ってしまった。私もパンを買いに行くのになぁ。まあ、行く途中で見つければいいか。 しまむらと前みたいに仲良くなるには……そうだ、お泊まりだ!?
空を自由に飛びたいわけじゃない。僕が望むのは、普通の人のまわりに、当たり前にあるべきもの。酸素とチョコレートの次ぐらいに、誰もが気軽に手にしているもの。漢字二文字で、世界の在り方を大きく変えてしまうもの。友達。僕はそれが、欲しい。僕は独りぼっちだ。僕は祈る。どうか届け。できれば神様に。奇跡よ、降臨せよ。友達。僕はそれが、欲しい。すべてはあの忌まわしき楽園、秘密基地から抜け出す為に。
人型兵器で巨大生物から地球を守る。そんな日々の中で、私、永森友香は一人の『少女』と出会った。ロボット。少女は自身をそう紹介した。傍にいる、うさんくさい博士風の男によると、彼女は『チョコ』という名前らしい。チョコは、私を『おともだち』に選んだという。「トモカ、一つ尋ねます。友達とはなんですか?」知らないのかよ。…いや、待て。じゃあ私はその意味を知ってるのか?それは、巨大ロボットよりも非現実的な存在で。人類の誰よりも綺麗な目をした機械。これが私と、チョコの出会いだった。
ある日。とあるアパートの住人、神喜助のゴミ箱の中身が、ひとりでに増えた。ここの住人の誰かのゴミが、何故か転送されてきている。糸くず、美しい髪の毛、小説の下書き、そして『恥ずかしいポエム』。しかし、読んでいるこちらが赤面するそのポエムは、どうやら『遺書』らしい。つまり、ここの住人の誰かが、死のうとしている?神(のゴミ箱)のお告げにより、退屈だった彼の人生は、ささやかに動き始めた。これは、『どこかとつながっている』ゴミ箱を巡る、すこし不思議な住人たちの物語。
そいつはひやむぎ泥棒か宇宙人、どっちなのだろう。名前も分からない、言葉も分からない。分かるのはその少女の髪が虹色に輝くことだけ。私がその髪に触れると、その指も虹色を帯びた。そして起こるは、狭苦しいアパートの一室で繰り広げられる、虹色のエイリアンとの壮大なファーストコンタクトであった。ご近所さんにこの子を紹介し、カニャエと名前をつけ、ひやむぎ買いに二人でスーパーまで競争!地球のどこかで発生したささやかな異星間交遊。それは、窓から、外から、腹の中から始まっていた。宇宙からやってきた虹は今日も暖かい。異星人も地球人も宇宙人。こんなのがいれば、夜空も明るいわけだ。
2月4日、バレンタインデー10日前。放課後に二人で出かけたモール内のドーナツ屋の前で、安達が聞いてくる。 「14日に、しまむらはなにか、用事ありますか?」 「ないですけど」 「ないなら、14日に、遊ぼうという……」 鼻の上に加えて、手の甲まで真っ赤に染まっていた。そんな安達の決意や覚悟に感心して、私はこう応える。 「いいよ。今年はバレンタインをやっちゃおうか」 2月14日までの10日間。安達のどきどきな10日間が、しまむらの日常に彩りを与える。そんな二人のお話。
男子校、だ。頭髪の自由はなく(例外あり)、携帯電話は悪の枢軸で、もちろん華やかな青春なんて皆無。三年間、僕らが進み続けるのは砂の海。そんな男子校に、訳あって集ったのは、全く意味のないイケメンフェイスを持つ長髪野郎、モンゴルから柔道のために砂漠に来た留学生、高校生の代名詞である丸坊主の元・野球少年、そして、そんな悪友たちと青春を謳歌する僕だ。四人が歩くその先には、無限の砂漠と蜃気楼の美女しかいない。今日も僕らの雨乞いが始まる。