著者 : 夢枕獏
著者のライフワークである伝奇大河シリーズ「キマイラ」がついに完結を迎える!? 闘病を経て、いま考えうるラストをとにかく書きあげたいとの思いから、物語の途中をすっとばし、先にラストを書き上げるという前代未聞の一冊に。俺たちの闘いは終わらない!
「おまえはおれが守る……」囚われた織部深雪を救うべく、ルシフェル教団のアジトがある伊豆の森を訪れた大鳳吼と九十九三蔵。闇に光が差したかに思われたが……息をのむ格闘シーンや雪道のカーチェイスなど、渾身の伝奇大河シリーズ「キマイラ」待望の最新刊!
【文学/日本文学小説】大鳳吼は九十九三蔵の協力を得て、織部深雪を拉致したルシフェル教団のもとへ。深雪の無事を確かめるが、庭で番犬と化した菊地に出会う。一方、九十九を追ってきた龍王院弘は、森で宿敵ボックに出くわす。著者渾身の大河シリーズ「キマイラ」待望の最新刊!
中学生の九十九三蔵は、円空寺で、真壁雲斎を訪ねてきた久鬼麗一と初めて出会った。その後、西城学園の入学式で再会した二人の間には、次第に友情が芽生えていく。その頃、西城学園は、「もののかい」という空手部と関係があるらしいグループによって支配されていた。一年生の夏休み、箱根の別荘で過ごしていた久鬼と九十九は、同じ場所で行われていた空手部の常軌を逸した合宿を目撃するが…。待望の新作第12巻!
大鳳吼と久鬼麗一のキマイラ化を抑えるべく奔走する真壁雲斎。亜室健之から聞いた恐るべき秘密を九十九三蔵に語り始める。一方、スチュワート・ボックに拉致された織部深雪を助けるべく単身戦いを挑んだ菊地良二は、ボックの仲間と思われる久鬼にそっくりな謎の少年と対峙するが…。キマイラをめぐる血ぬられた歴史と伝説が明らかになる、奇想天外の第11巻!
円空山で二十年ぶりの再会を果たした吐月を、久鬼玄造は翌日自分の屋敷に招いた。吐月、九十九、そして菊地を前にして、玄造は数十年前に大谷探検隊がひそかに日本に持ち帰ったキマイラの腕を見せた後、それを手にするにいたった経緯を語り始めた。それは、梶井知次郎や馬垣勘九郎との出会いに始まる玄造の青春の回想であり、キマイラの謎を解く鍵を秘めた長い物語であった。
八ケ岳山麓の亜室健之の別荘に侵入した菊地の目の前で、久鬼は己れの身体に一対の翼を生じさせて月の夜空に消え、玄造が典善に命じておこなわせた久鬼の奪還は失敗に終わった。久鬼を失った健之は、雲斎に接触を図った。求めに応じて雲斎は大鳳を伴った新宿に出たが-。健之と雲斎、大鳳と由魅、玄造と吐月-。主要人物が劇的な出会いを果たす波瀾のシリーズ第12弾。
円空山で傷ましい獣の身を横たえる大鳳を救うには、ソーマと9番目の月のチャクラの解明を急がねばらならなかった。雲斎は巫炎の情報をもとに月のチャクラの活性化を試み、道潅と九十九は紀伊の山中で吐月に、雪蓮について質していた。問いに応えて、吐月はふたりに、20年前のチベットでの体験を語った。狂仏と外法絵と陳岳陵という中国人の名前を持つ日本人にまつわる思い出を-。
久鬼玄造邸で傷を負った大鳳吼は、キマイラ化したまま、円空山で深い眠りに落ちていた。八ケ岳に移された久鬼同様、そのまま獣と化すか、人にもどれるかの、ぎりぎりの段階までキマイラ化は進んでいる。雲斎の要請で、道潅と九十九は高野山に登った。吐月に会い、雪蓮の民の行方を知るためである。ソーマでキマイラ化を抑える方法を知ろうとする、雲斎の必死の試みだった。
大鳳吼が小田原に現れ、深雪の前に姿を見せた。ひっそりと、夜の闇に紛れるように西海地通りを歩んだ大鳳は、部屋の窓越しに、痛ましいほど哀しい瞳を深雪に向けたのだった。目出帽をとり、獣の顔をさらすことで深雪に別れを告げた大鳳が去った後には、一輪の薄紫色の花が残されていた。久鬼に与えられたソーマを、大鳳は深雪を通じて雲斎に託したのだ。《キマイラ・吼》緊迫の第8弾!