著者 : 楝蛙
地方公務員・中田忍が犯す、最後の“悪徳” やがて樹になる異世界エルフ・河合アリエルを救えないばかりか、最大の理解者・一ノ瀬由奈と決定的に断絶し、失意に沈んだ中田忍。 彼を救ったのは、忍と新たな友情を結んだ女子高生、御原環であった。 忍は「自分が異世界エルフを託された理由」に最後の望みを賭け、新たな協力者を巻き込んで、己の人生を辿り始める。 懐かしき人力飛行機研究会(トビケン)の部室、義光と徹平が姿を消す中で、若月星愛姫が放ったのは、猜疑のひと言。 「たぶんしのぶおじちゃんは、わるいエルフのまほうで、あやつられてるとおもうの」 黒い故郷、夢の片端。 足掻き続ける忍が向き合う、隠された真実。 52ヘルツの鯨が鳴く声は、果たして誰に届くのか。 そして地方公務員、中田忍が最後に犯す、天衣無縫の”悪徳”とは……? 泣いても笑っても、『公務員、中田忍の悪徳』シリーズ最終巻。 忘れるな、これが中田忍だ!!
異世界エルフ・河合アリエルの秘密と悪徳 瀬戸内海に浮かぶ謎の孤島『耳島』から帰還した忍たちの関係には、小さくない変化が生じていた。 土壇場で何もできなかった御原環は、己の無力さに挫けかけながらも、アリエルの秘密すら利用して、忍への慕情を届かせんと奮闘する。 アリエルを見殺しにしてでも忍を救いたかった一ノ瀬由奈は、ついに己の心と向き合い、深い絶望にその身を沈める。 ぶつかり合う想いの中心で、何も知らないまま、知らされないままに立ち尽くす、我らが福祉生活課支援第一係長、中田忍。 そして不可侵の秘密を抱え、超越的に暗躍する異世界エルフ、河合アリエル。 平穏を護る欺瞞のヴェールが暴かれたとき、閉じられた優しい世界に、終演の舞台風が吹く。 異界の笛の音に秋鹿が踊る、急転直下の第7巻。 葛藤は、小さな瞬きに呑まれて消える。
迷宮で異世界エルフは世界の真実を知るーー 「オークの島ですか?」「いや、大久野島だ」 中田忍の意志に自ら背き、晴れて中田忍との同居を勝ち取った異世界エルフ、河合アリエル。 自動車の運転を体得し、パートタイマーとして職に就き、少しずつ確実に現代社会との融和を進めつつあるアリエルの姿を見る忍の眼差しは、決して優しいばかりではなかった。 そして明らかになる、新たな耳神様伝説の残痕。 忍たちの暮らす地に点在する、両耳が欠けたいくつもの古いお地蔵様。 耳神様あるところに現れる、謎の老人と大きめのコーギー犬。 アリエルの切なる願いに応えた忍は、夏の陽炎を捉えるべく、両手にヘラを構えて焼きそばを炒める。 鍵を握るのは、旧日本軍の負の歴史が佇む”東京第二陸軍造兵廠、忠海製造所”。 あるいは”毒ガスとうさぎの島”と呼ばれる国民休暇村、広島県竹原市忠海町、大久野島。 迷宮の先で異世界エルフが目にする、世界の真実とはーー 「ここは、天国ではーーありませんでした」 幸福な結末を踏み越えて、傷付け傷付き合う社会派現代ファンタジー、第六幕。
最大最凶の難局を切り抜けた機械生命体的地方公務員、中田忍。懸念事項たる異世界エルフへの現代社会融和についても一定の手応えを認めた忍は、アリエルや協力者たちを巻き込み過ごす、儚くも尊い、つかの間の日常へ身を委ねることとなる。そうして訪れた転機、異世界エルフ、アリエルの語る己の出自と過去。衝撃と壮絶に彩られたその告白に、銘々心動かされる協力者たち。だが、肝心の中田忍は、普段通りの仏頂面で言い放つ。「彼女には近々、この家を出て行って貰う」とー。間隙の日常に揺れる、現代異種族交流活劇・第五弾!
突如もたらされた“異世界エルフ”アリエルの身分を公的に証明する書類の数々。多くの問題を解決し、忍の目指す異世界エルフの社会的自立を大きく助けてくれるはずのそれは、同時に「公的機関のデータベースを自在に操る超越的な謎の監視者」の存在を示唆するものでもあった。浮き彫りとなった異常を前に、家族を守るべく戦線を離脱する徹平、遠ざけられた由奈、空回りする環、じっと見守る義光。そして、アリエルを送り出すべき現代社会もまた、中田忍を苦しめる。打ち寄せる新たな波紋は、忍から何を奪い、何を与えるのか。
区役所福祉生活課支援第一係長中田忍は、あるひとつの悪徳を犯している。穏和な生態と柔和な笑顔がかわいい、言葉の通じぬ異世界エルフ“アリエル”を秘密裏に保護し、生かし続けていることだ。果たすべき日々の業務に加え、それぞれの協力者たちの思惑、立ちはだかる戸籍問題、さらにはアリエルとの穏やかな暮らしすらも、忍の罪悪感を苛み、責め立て、忍の信義を惑わせる。そんな中、クリスマスの近づくある日、区役所へ謎の幼女が現れる。「はじめまして、ぱぱ!」と元気に叫ぶ彼女を、忍は迷わず警察へと突き出すが…。
区役所福祉生活課支援第一係長、中田忍(32歳独身)。責任感の強い合理主義者。冷酷だが誠実、他人に厳しく自分自身にはもっと厳しい男。ある深夜、帰宅した忍は、リビングで横たわるエルフの少女を発見。忍は悟る。「異世界エルフの常在菌が危険な毒素を放出していた場合、人類は早晩絶滅する」「半端な焼却処理は、ダイオキシンの如く地球を汚しかねない」「即座に凍結し、最前ど宇宙、次点で南極、最悪でも知床岬からオホーツクの海底へ廃棄せねば…」だがその時、“エルフ”の両瞼がゆっくりと開きー第15回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。