著者 : 生川
解き放たれたのは「神様」と呼ばれる超常の存在。暴走を開始したアレは世界を壊せるもの。アレは世界を、人間を、生物を呪っている。そして、その殺意は伝染する。神様の呪いの影響を受けた人間は殺意に取り憑かれ、他者を襲い殺す。混乱した世界はやがて藤花と朔をも呑み込み、破滅へと突き進む。世界を救う道はひとつ、神様を殺すことーつまり「神殺し」。神殺しのためには「藤咲の女たち」が必要であり、特に藤咲藤花は重要な存在なのだという…。「かみさま」になりそこねた少女とその従者の物語は、ここに終演を迎える。
永瀬の地獄から逃げ出した朔と藤花。しかし二人の行く先にはもはや安寧の地などなく、さらなる地獄のしがらみが二人を絡めとる。「神がかりの山査子」に保護されたものの、異能を強めるその特異な眼を狙われる朔。滅びの力をもつ神をその身に下ろそうとする山査子の男と、それを邪魔せんとする少女の間で繰り広げられる「地獄めぐり」。その中で、朔は藤花を危険にさらすものを呼び込む己の眼と運命を呪いはじめる。そして死をいざなう蝶が二人を導く先では、燦然と繰り広げられ続けてきた醜悪な舞台がその幕を下ろそうとしていた。
「かみさま」を失った藤咲からの逃亡生活を続ける、藤花と朔。自らを「不良品」と称す少女を守りながら、朔は今後の行く末に頭を悩ます。そんな二人のもとに、未来視の異能をもつ「永瀬」の遣いー未知留が訪れる。永瀬の擁する「ほんもの」が視た藤花と朔にまつわる幾つかの光景。雪の降る永瀬の邸にて繰り広げられる、未来視を巡った狂気の発露。それは『少女たるもの』になれなかった誰かの、在りし日の恋の残滓。これは、過去に自分を求める少女と現在に自分を認める女の、「想い」が生んだ美しき地獄の物語。
藤咲藤花の元に訪れる奇妙な事件の捜査依頼。それは「かみさま」になるはずだった少女にしか解けない、人の業が生み出す猟奇事件。人の姿を持ちながら幽世のものに触れる異能をもつ彼女は、事件の解決に自分の居場所を求めて歩む。そして、その隣には「かみさま」の従者として彼女を守る役目を負うはずだった青年・藤咲朔の姿が常にあった。数奇な運命のもとに生まれーそして本来の役割を失った二人は現世の狂気のなかで互いの存在意義を求め合う。これは、夢現の狭間に揺れる一人の少女と、それを見守る従者の物語。