著者 : 細音啓
「巫女としてじゃなく、幼なじみとして何もできないのが悔しいの」真夜中に突然やってきたユミィを前に、シェルティスは微笑む。-ユミィが頼ってくれる。それだけで、僕には充分だから。浮遊島事件の真実をあかすため、統政庁を訪れた天結宮の巫女・ユミィとシェルティスたち。しかし、双方の主張は食い違うばかり。そんな中、錬護士筆頭イシュタルが全ての事象を記録する統政庁の秘宝『ミクヴァの緋眼』への恐制接触を提案。さらにユミィに巫女として決断を迫るー危険な任務を誰に託すのか、と。一方、沁力術士『黄金のマハ』とイグニドも、統政庁に姿を現す…。己の“絶対の聖域”を護るために闘う、重層世界ファンタジー。
「守るんじゃなく、一緒に戦う。…それが僕の新しい戦い方だから」仲間と挑んだ選抜戦で、シェルティスは新たな決意を迫られる。統政庁との会合に赴く巫女・ユミィの護衛任務。それを勝ち取るため、モニカと華宮、そして「四人目」の仲間と部隊戦に参加したシェルティスは、一人で戦ってきた己の弱点と向き合うことになる。時を同じくして、シェルティスに宿る魔笛を浄化するため沁力の修行を重ねるユミィの前に、ツァリと名乗る女性が現れた。「沁力が開花するキッカケーお前の知らない旋律を与えてやろう」そう告げる彼女は、ユミィを『ある場所』へ誘うのだが…。変革する世界で、少年を想い少女が歌う、重層世界ファンタジー。
「…あなたは、わたしと真逆だ」絶望的な戦闘で、なおマハに挑むシェルティスを華宮は見つめる。「あなたは、あなたを信じる人をー信じられるのですね」巫女を守護する正護士を目指し、モニカの部隊に入るシェルティス。そこで彼を待っていたのは、3人目の隊員候補生・華宮だった。あなたには“過去”がないー異端ゆえ経歴を消去されたシェルティスは、華宮に不信を抱かれてしまう。そんな中、他部隊が何者かによって壊滅する事件が発生。真相を追うシェルティスと華宮の前に、圧倒的強さを誇る沁力術士『黄金のマハ』がたちはだかる。世界の理に拒絶された少年が絆を奏でる、重層世界ファンタジー。
『対・穢歌の庭術式へ移行了承。-第七天音律を結んでください』結界を張るよう要請された少女の頬を、透明な滴が滑り落ちる。「シェルティス…わたしたち、本当にもう会えないの?」幽幻種と呼ばれる存在に、人が侵される世界。巫女の祈りで守られた浮遊大陸オービエ・クレアでのみ、人は生きることができた。結界の巫女・ユミィは、ある少年を待っている。巫女を守る護士だった、幼なじみのシェルティス。大陸から堕ち、異端として追放された彼は、かつてユミィと約束していたー必ず君の隣に行く、と。世界の理を体現する少女と、世界の理に拒絶された少年。二人の想いが錯綜する、重層世界ファンタジー、開幕。