出版社 : 中央公論新社
食事だと言われて居間へ移ったリィは、その瞬間、顔をしかめた。部屋中に強烈な甘い匂いが漂っている。ドーナツ、デニッシュ、パイ、マフィン。数種類のケーキ。トーストの類もあるが、用意されているのはピーナツバターやジャムなど、見事に甘いものばかりだ。さらにスナック菓子や炭酸飲料が並んでいる。男は髭もじゃの顔で笑っている。「おいしそうだろう。きみの好きそうなものばかり用意させたんだ」「ヴィッキー?」と声をかけられて振り向くと、銃口が突きつけられた。だが怪しい風体の男からは、敵意も害意も感じられなかった。「頼むから一緒に来てくれ」と言う口調には、困惑した様子がうかがえたー奇妙この上ない誘拐劇。
研修を終え宮廷に戻ったタリアだが、直後、「女王補佐」としての決断を迫られる。エルスペスにもたらされた、隣国の王子アンカーとの縁談を巡り、議会が分裂していたのだ。セレネイは一見申し分のない縁談に罠の臭いを感じて迷うが、証拠はなにもない。呼応するかのように、不穏な動きを見せるオーサレン卿。ついに女王の命令が下り、クリスとタリアは隣国の偵察に向かうが…。
「きみはクリスのもとで研修を受けるのだから、最後に彼に会ったときよりも落ち着いた状況で顔なじみになっておきたいだろうと思ったのだよ」「落ち着いた状況ですって?これが落ち着いた状況だっていうんですか?」「相対的にはな」正式な“使者”となり、“学院”での日々に別れを告げたタリア。研修の指導官はクリス、任地は北の“国境地帯”。辺境出身のタリアにとって比較的簡単な任務になるかと思われた。研修はクリスと協力して難題に向かうことが不可欠である。しかし、二人の信頼を揺るがすべく、密やかに不和の種は蒔かれていたのだった。執拗に迫る“女王補佐”排斥の魔手。タリアはこの陰謀を打ち砕けるのか。
私は誰なのか?私はどこにいるのか?超技術を駆使するメンフィスの母体、アンドロギュヌス・シンジケートから逃れ、逆にその懐に潜入するために、玉緒はついに火星へ到着。火星の現実を目の当たりにする。そこには超古代より時空を超えて現れた、王女ネフリティースら、懐かしい面々の顔がそろっていた!彼女らとともに火星の深奥へ赴く玉緒。繰り広げられる様々な神秘体験の中、玉緒はついに自分自身の存在を疑うことに…。次元を超え、時空を超えるということは、いったい何を意味するのか。はたして現在は「いつ」なのか…。古代よりの超遺伝子を追い、人類はどこから来てどこに行きつくのか。壮大なる超時空を紡いできた物語。シリーズ完結編。
貴重な休暇を利用し、学生時代から親しんだ穂高岳を登る棟居刑事は、一瞬目を合わせた自分と同年配の男に殺気を感じ、翌日下った上高地では亡き妻の面影を彷彿とさせる女性と行き合った-。東京に戻った棟居を事件が待ち受けていた。T省の課長補佐の墜死体が発見されたのだ。さらには、ベテランのアルピニストが北アルプス「夢の縦走路」で遭難死した。二人の死を繋ぐ巨大な官僚制度の底で蠢く黒い欲望とは!?汚染された組織の中で、ただ一人「純白」であろうとした人間の誇りを描く。
「大和」の奮戦でマリアナを死守したのも束の間、米軍は戦略爆撃機B29の太平洋戦線への投入を決定、サイパンへの再侵攻を開始した。急遽、沖縄から第一機動艦隊が救援に向かう。だがその不在を衝き突如千島沖にモンタナ級二隻、空母四隻からなる米艦隊が出現。新鋭機F4Uで直衛を固めた精鋭部隊は、迎撃の日本軍機を一蹴!南下する米軍を阻止すべく、重雷装艦「北上」擁する決死の第五艦隊が急行する。
帝国に迫る氷の種族の魔手。彼らの使う邪法に対抗策はあるのか。魔道師たちの必死の探索は続く。手がかりとなるものは古代帝国の骨董が見せる夢。剣士ライシャッドの夢に繰返し現れるいにしえの植民地を目指す若者と彼の恋する娘が操る霊気魔法に最後の望みがかけられたはたして古代の秘術は甦るのか-。
古代魔術を操る氷の種族の脅威がトルマリン帝国に迫りくる。大公の命に応えるためそして目の前で殺された友の復仇のため剣士ライシャッドはふたたび魔道師たちと旅に出ることに。だが旅の途上、港町レルシャズで身に覚えのない窃盗を疑われ奴隷市場で競売にかけられてしまう。離れ離れになった彼らの運命は。
大華三国の一角、デルフィニア、かの地に二人の若者がいた。ひとりは王国を代表する大貴族であり、国王の縁戚でもある筆頭公爵家の才気煥発な十二歳の嫡子。一方、身分では比べものにならぬ地方貴族の子息ながらも、天才的な腕を持つ十七歳の剣士。国王崩御の混乱の陰で彼らは戦うー未来を掴むそのために。
三女神との誓約を破って魔術を行使し、女王アスリンの切り札・白の魔術師を撃破したジェセックス。制裁を覚悟し臨んだ三女神との会見で、自分こそが預言の魔術師イーロンであることを知る。一方、部下を殺され危機感を強めたドリューデンの指揮下、女王軍の攻撃は日に日に激しさを増していった。戦況が逼迫する折、なぜか女王は王位交代のため赤の王キリス=キリンを首都に招致した。疑問を抱えながらも、危険を押し、南に向かう決意をする王たちだったが-。
ハワイ州の日系人部隊が派遣先のイラクで待ち伏せ攻撃に遭遇、生存者が捕虜になった。犯人グループからの身代金要求に対し、米政府は「テロ支援になる」と支払いを拒否、交渉は暗礁に乗り上げる。そんな中、ハワイ島で米副大統領令嬢が拉致され、ほぼ同時にオアフ島では観光客で賑わう「戦艦ミズーリ」が占拠された!その頃、ハワイには陸自の特殊部隊が研修に来ていた。誘拐犯が逃げ込んだジャングルでは隊長自ら率いる本隊がトレッキング訓練を、ミズーリでは女性一名を含む一三名の分隊が艦内見学をしている最中で…。観光気分から一転、戦場の真っただ中へ放り込まれた彼らの運命やいかに。
1942年春、第二次大戦参戦前夜のの米国。米軍は来るべき対独参戦に備え、初の特殊部隊OSSの創設に踏み切った。選抜された優秀な学生の中には、フィリップ・グランロワの姿もあった。彼らOSS隊員たちは、北アフリカなどで二つの作戦をこなし、苛烈な戦闘でまさしく精鋭として鍛えられていった。そして今、グランロワ中尉たちに新たな出撃命令が下る。戦場は、歴史上「バルジ大作戦」として名高い、ドイツ軍大反攻作戦が展開されるアルデンヌの森。米軍きっての猛将パットン中将の第3軍とともに、敵に包囲された第101空挺師団の救出に向かうのだ。世界的大ヒットゲーム、待望のノベライズ第二弾。
「僕はこの世界の力だ」僕は囁いた。「許してください。三女神よ。でも、服従することで全てが滅びるという時に、どうして従えるものでしょう。許してください。母神イーよ。もしも、僕のすることが間違っているというならば。イーロンが来ないなら、僕が行きます」青の女王に対する北域の民の不満は日に日に高まり、森の王キリス=キリンは、ついに叛乱の狼煙をあげることに!一方、三女神の下で魔術を学ぶ少年ジェセックスは、誓約により魔術を行使することを禁じられ、戦渦が広がる中、無力な自分へのいらだちを抱えていた。残された希望は、王を救うと預言された魔術師イーロンの到来のみ。長い間封じられたアーセンの森を出軍する王に、女王は切り札である白の魔術師を投入し、攻撃を仕掛けてきた-。
1941年春、米国アリゾナ州。大学生フィリップ・グランロワは、ある男の訪問を受けた。男の名はドノヴァン准将-名誉勲章を持つ歴戦の勇士。彼は、来るべき対独参戦に備えて、名高い英空軍特殊部隊を超える、最強の米軍特殊部隊創設を準備していた。准将は、頑健な身体と明晰な頭脳を併せ持つ、グランロワに入隊を薦める。「戦争は避けられない」と判断した彼はCOIに入隊、厳しい訓練の日々を送り始めた。そして合衆国参戦前夜の1942年、極秘裏に彼らCOIに、仏沿岸サン=ナゼール、そして北アフリカにある独軍秘密施設襲撃作戦の指令が下った!世界的大ヒットの戦争アクションゲームを、軍事評論家として名高い著者が待望のノベライズ。
古代トルマリン帝国の秘宝を巡る冒険の旅は、連れ去られたジェリス奪回の追跡行へとかわった!わずかな手掛かりを元に大洋に乗り出し、敵の本拠地に乗り込んだリヴァクたちの前に現れたのは-。
数奇な星の下に生をうけた少年ジェセックス。青の女王の圧政に苦しむエアインの民の希望、森の王キリス=キリン。運命に導かれ少年は王と出会った。神秘の森アーセンの奥深く闇に閉ざされた聖堂に、少年は光を灯し、王と神に仕える日々を送る。やがて湖畔で出会った女神たちから魔術を学び、自らの宿命に目覚めていく…。王のため、エアインの民のため、ジェセックスは青の女王に立ち向かう-。
リヴァクは腕のいい女賭博師。相棒のハリスに待ちぼうけをくわされて、懐が少々寂しくなった。そこへ、トルマリンの骨董品を高値で買い取る商人の話が。ワケありの相手から目当ての品を盗み出すまではよかったが…古代トルマリン帝国の秘宝を巡る夢と冒険の旅が、今、始まる。
ヴァンツァーはレティシアに机の上の写真を見るよう、身振りで示した。大の男が眼を背けるほど凄惨な写真を前にしてもレティシアは顔色一つ変えなかった。「こりゃまた派手にやったもんだ」写真の内容に衝撃は受けないにせよ、それ以上の関心もないらしい。「おまえがやったと思っているらしい」「俺が!?」ヴァンツァーは無言で頷いた。こちらは何やら笑いを噛み殺しているような妙な顔つきだった。レティシアは逆に茫然と立ちつくしている。「…嘘だろう?」(ファロットの美意識)。連続惨殺事件が起きていた。犯人か?と疑われたレティシアは意外な行動に出て…。各界のプロフェッショナルの活躍を描く中・短篇3本を収録。